交通事故で自律神経失調症を発症!どうしたら後遺障害認定されるのか?

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交通事故に遭ってから、しびれ、めまい、頭痛など、色々な体の不調があらわれて、医師から自律神経失調症と診断されるケースがあります。

自律神経失調症とは、交通事故の後遺障害と認定されるものなのでしょうか?

ここでは、そもそも自律神経失調症とは何か?認定された場合の賠償額は?認定される条件とは?実際の裁判例は?といった疑問にお答えします。

自律神経失調症とは

自律神経失調症とは、一般的に、自律神経の調整機能が正常に働かない状態と説明されます。

自律神経は、私たちが意識しなくても、その時々の環境や体調に応じて、身体をベストな状態に保とうとしてくれます。暑いときには発汗して体温を下げようとし、運動時には心臓の鼓動や肺の呼吸が激しくなり多くの血液、酸素を体中に行き渡らせようとします。

ところが、自律神経の調整機能、いわば静と動のバランスが崩れると、例えば静かにしているのに鼓動や呼吸が激しくなるといった症状が現れてしまうのです。

自律神経失調症の様々な症状

自律神経失調症には、次のように実に多くの症状があります。

倦怠感、疲労感、熱っぽい、しびれ、息切れ、動悸、めまい、頭痛、頭が重い、眠れない、寝汗をかく、食欲不振、胃の痛み、悪心、肩こり、背中の痛み、腰痛、腹痛、下痢、便秘、腹部の不快感など

自律神経失調症の原因

自律神経の変調の原因

自律神経失調症は、自律神経の変調が原因で起こります。

自律神経の変調には大きく以下3つの原因が考えられ、「3.自律神経変調の原因がはっきりとは不明なもの」を自律神経失調症と称します。

  1. 神経などの身体の損傷など器質的な原因からくるもの(※)
  2. 精神疾患からくるもの
  3. それ以外のはっきりした原因が不明なもの

器質的な原因からくるもの:物理的、物質的に神経の細胞や組織などが、傷つき破壊されたり、変性してしまったりすることが疾患の原因となるもの

自律神経失調症とは、暫定的な診断名

実は、自律神経失調症という診断名は、自律神経の機能の乱れが関係していそうな症状に、暫定的につけるているに過ぎず、あいまいな部分も多く、使用には大きな問題があると考える医師も多いとされています(※)。

しかし、自律神経の乱れは、往々にして、精神的なストレスに原因があり、より重いうつ病や神経症に進んでしまう可能性があります。

そこで、「自律神経失調症」という診断名で、重い精神疾患ではないと患者を安心させ、ストレスを管理して対処療法を行うことで症状が軽くなることが多いのです。

※「自律神経失調症という病名はありません」東北大学山家智之教授(医学博士)のHP

自律神経失調症の原因は多くの場合精神的ストレス

このことからもお分かりいただける通り、自律神経失調症の原因は多くの場合、精神的ストレスとされています。

人間は、例えば、ひどく緊張した時には、急に尿意をもよおしたり、冷や汗をかいたりします。心に重い悩みを抱えた時には、食が進まず、不眠となります。

精神的なストレスと体の状態には密接な関係があり、ストレスによる過度な負荷が長く続けば、自律神経のバランスが崩れてしまうのです。

特に交通事故の場合には、怪我の負担、通院の負担、仕事を休まなくてはならないことへの不安、十分な損害賠償を受けられるかどうかという不安、自分は何も悪くないのにどうして……という被害者意識など、被害者の心に、たくさんの負荷がかかっています。その重さに耐えきれず、自律神経が悲鳴をあげるのです。

自律神経失調症で後遺障害等級認定される基準

自賠責保険において自律神経失調症で認定される可能性がある後遺障害等級は、末梢神経障害の14級9号局部に神経症状を残すもの」です。

自律神経失調症では12級の認定が受けられない理由

末梢神経障害の後遺障害が認定される等級には12級13号もありますが、その基準である「局部に頑固な神経症状を残すもの」に該当するには、障害の存在を他覚的所見から医学的に証明できることが要求されます。

そのためには、MRI、CT、X線等の画像で神経損傷などの異常が確認でき、それと整合した症状が、反射テスト・筋力テストなどの神経学的検査でも認められる必要があります。

しかし、自律神経失調症は、器質的原因によるものではないので、検査等ではっきりした理由や原因をとらえることができず、通常、12級の認定基準を満たすことはありません。

自律神経失調症で14級の認定に必要な「医学的説明」

他方、14級は、交通事故によって生じている症状であると医学的に説明がつくことが認定基準です。

医学的に説明がつくとは、症状に一貫性、連続性があり、交通事故を原因として症状が出ているのだと説明することが可能ということです。

交通事故による怪我の症状は、事故後から数時間程度で現われ、治療が進み時間が経てば軽くなってゆきます。医学的に説明がつく交通事故の怪我の回復は、通常、この経過をたどることになります。

対して、事故から長期間経過してから症状が出たり、治療の途中で新たな症状が出てきたりという場合は、症状に一貫性、連続性がないことになります。また、治療を一度中断したのに再開した場合も、いったん治まった症状が再度出てきたと判断され、症状に一貫性、連続性がないことになります。

こうした場合、そこに合理的な説明がない限り、医学の見地からは事故による症状と説明できないとされてしまい、後遺障害14級に認定されないことになります。

自律神経失調症の後遺障害慰謝料

自律神経失調症で14級が認められた際に支払われる後遺障害慰謝料の相場金額は、弁護士基準よると110万円です。

等級自賠責基準任意保険基準(※)弁護士・裁判基準
14級32万円40万円110万円

※任意保険基準については、一般に公開されていないので、旧任意保険の統一支払基準を参考に記載しています。

弁護士基準は、実際の訴訟において裁判所で用いられる基準であり、弁護士に依頼すれば、示談交渉においてもこの基準で交渉を行います。

自賠責基準とは、自賠責保険が人身事故で支払う公的に定められた最低限の賠償額の基準であり、任意保険基準とは、任意保険会社が独自に定めた賠償額の基準です。

ただし、これらの基準はただの相場ですから、事故の態様、被害の程度、加害者の悪質性などの諸事情を総合的に考慮して金額が上下します。

自律神経失調症の逸失利益

逸失利益とは、交通事故の後遺障害で将来得ることができなくなってしまった収入減に対する補償です。

後遺障害等級の労働能力喪失率と被害者の収入、労働能力喪失期間を基に算定します。

労働能力喪失率は、後遺障害等級にごとに定められており、後遺障害14級の労働能力喪失率は、5%です。

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自律神経失調症の逸失利益を以下のモデルケース使って説明しましょう。

逸失利益の計算例

被害者の年齢:40歳
被害者の年収:600万円
後遺障害14級の労働能力喪失率:5%
症状固定時40歳のライプニッツ係数(※): 14.643

600万円 × 0.05 × 14.643(40歳のライプニッツ係数)= 439万2900円

ライプニッツ係数:将来の利息運用益を調整するために用いられる係数。被害者の症状固定時の年齢によるライプニッツ係数は、以下の国土交通省のページで確認が可能。
※参考外部サイト:国土交通省「就労可能年数とライプニッツ係数表

原則として、症状固定から67歳までを労働能力喪失期間として考えますが、末梢神経障害で14級が認められる場合は、労働能力が失われる期間(労働能力喪失期間)を5年程度に制限する裁判例が多いのも事実です(そうでない裁判例も複数あります)。

そこで、上記の例を使って労働能力喪失期間を5年間として計算すると、逸失利益は次の金額となります。

労働能力喪失期間を5年間とした場合の逸失利益

600万円 × 0.05 × 4.329(5年のライプニッツ係数)= 129万8700円

ご自分の損害賠償額が気になる方は、以下でご自分の慰謝料をシミュレーションしてみましょう。

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自律神経失調症と同様な症状を示すバレリュー症候群

自律神経失調症と同様の症状を示す疾病に、バレリュー症候群があります。

バレリュー症候群とは、別名「後部頚交感神経症候群」といい、むち打ち症の一種とされています。

症状には、次のものが挙げられます。

頭が痛い、頭が重い、めまい、耳鳴り、難聴、眼精疲労、視力障害、流涙(涙が勝手に流れて止まらない)、頸部の違和感、疲れ易さ、低血圧など

患者の自覚症状が中心で、検査によって異常が確認できる他覚的所見に乏しい疾患であり、認定される可能性のある後遺障害等級も、末梢神経障害の14級9号「局部に神経症状を残すもの」です。

バレリュー症候群は頚部の自律神経機能障害と理解

バレリュー症候群は、フランスの医師バレ及びリューが提唱したもので、「頚部の疾患・外傷でありながら、むしろ頭部や顔面に頑固な自覚症状を訴える例があり、これらの症状が頚部の交感神経と密接な関係を持つ」とされます。

このためもあって、弁護士会の刊行物でも、「バレリュー症候群は自律神経失調症と全く同じというわけではありませんが、我々素人としては、頚部の自立神経機能障害という意味で、理解していればいいかと思います。」とされています(※)。

※「交通賠償に必要な医事知識6バレリュー症候群」交通事故相談ニュース(日弁連交通事故相談センター)

交通事故による自律神経失調症等の裁判例

他覚所見が乏しい症状は事故との因果関係が争いとなりやすい

自律神経失調症やバレリュー症候群のように、自覚症状が中心で他覚的所見に乏しく原因がはっきりしない症状では、保険会社側が単なる心因性の症状で交通事故によるものではないと主張し、裁判で争われるケースが多いのです。

実際、症状と事故との因果関係が否定されてしまい、後遺障害と認めてもらえなかった例もあります。

しかし他方で、他覚的所見がなくても、裁判所によって後遺障害と認定してもらえる例もあるのです。例えば次の裁判例を見てください。

バレリュー症候群等で14級を認定した裁判例

東京地裁平成21年11月12日判決

被害者は症状固定時35歳男性(自営業)で、バレリュー症候群、腰椎椎間板障害、右膝打撲などの傷害を負いましたが、自賠責保険により、いったん後遺障害等級は非該当と判断されてしまい、異議申立てを経て、14級に認定さました。

ところが、保険会社側は、被害者の症状を裏付ける神経系学的な異常所見が認められないから後遺障害は存在しないと主張して争いました。

これに対して裁判所は、たしかに他覚的所見や臨床検査上の異常所見はないけれども、頚部痛、項部痛(項部とは、うなじ部分)があり、「この症状は事故後一貫している」と指摘し、自賠責保険と同じく14級の後遺障害と認めました。

そして、後遺障害慰謝料は110万円(弁護士基準どおり)、労働能力喪失5%、労働能力喪失期間5年間とし、被害者の基礎収入400万8830円を前提に逸失利益86万7811円としました。

(交通事故民事裁判例集42巻6号1516頁)

器質的損傷がなくても裁判で後遺障害が認められる可能性

バレリュー症候群のように難聴や視力障害を生じた場合でも、自賠責保険から耳や目の後遺障害として認定されることは困難です。自賠責保険では、これらの障害は器質的損傷があることを等級認定の前提としているからです。

裁判例でも、同様に耳や目の後遺障害としては評価せず、神経症状の一部として、他の神経症状とひとまとめにして12級や14級とする例が多いとされます。

しかし、次のように独立した後遺障害と認めてくれる裁判例もあります。

バレリュー症候群からの難聴を耳の後遺障害と認めた裁判例

大津地裁平成9年1月31日判決

被害者は、両側高感音難聴(聞くことが出来る音の範囲がせばまってしまう両耳の感音部位の障害)を発症し、事故によるものと主張しましたが、保険会社側はこれを否定して争いとなりました。

裁判所は、事故の態様、負傷部位と程度、難聴を訴えた時期、難聴に対する治療を受けるに至った経過、事故前の状態、既往症などの諸事情を検討したうえで、事故による頚部捻挫等に伴う外傷性頚部症候群から眩暈・耳鳴り・難聴の症状が生じ、それがさらに両側高感音難聴症状の発現へと辿ったものと認められるから、事故により発生した難聴であるとして、後遺障害11級5号を認定し、後遺障害慰謝料等316万円を認めました。

(交通事故民事裁判例集30巻1号164頁)

このほかにも、バレリュー症候群による視力障害をきっかけとして、目の調節機能障害(焦点を調節する機能の障害)が生じた被害者について、事故との因果関係を肯定して、9級を認めた裁判例もあります(旭川地裁平成13年2月22日判決)。

自律神経失調症で後遺障害認定されるためのポイント

自律神経失調症やバレリュー症候群のように、他覚的所見の乏しい症状では、仮に症状が存在していたとしても、単なる精神的な要因(心因的なもの)であって、事故による後遺障害ではないと判断されてしまう危険性が大きいのです。

自賠責保険に非該当と判断されないためには、症状の一貫性・連続性を疑われないように、事故直後から定期的に通院をし、勝手な判断で治療を中断したりしないことが必要です。

また、保険会社側が症状と事故との因果関係を争うケースが多いため、できるだけ早い段階から専門家である弁護士に相談し、アドバイスを受けながら治療や保険会社との交渉を進めていくべきでしょう。

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