膝と後遺障害等級|12級か14級か?正座ができない、違和感、痛みがあるケース

膝が曲がらない

交通事故で足や膝を強く打ったり骨折したりすると、後で膝に問題が残ることがあります。

例えば、膝が曲げ伸ばしにくくなったり、正座ができなくなったり、いつも膝が痛かったり変な感じがしたりすることがあります。

こういう症状が出て治らなかった場合、その後「後遺障害」として認められる可能性があります。認められると、事故を起こした人に対して「慰謝料」や「将来の収入の減少分」を請求できます。

膝の問題がどのくらい重いかによって、「等級」というものが決まります。等級によって、もらえるお金の額が変わってきます。

今から、交通事故で膝を怪我した時、どんな症状だとどのくらいの等級になるのか、そしてどのくらいのお金がもらえるのかについて、分かりやすく説明します。主に12級と14級という等級について話します。

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膝に関する後遺障害は主に2つに分類が可能

交通事故による膝の後遺症は、大まかに以下の2つに分類されます。

①神経障害|違和感と痛み

膝の周辺の神経が損傷を受けたり、圧迫されたりすることによって生じる症状です。

神経の麻痺などが見られ、膝に「違和感を感じる」「痛みがある」「しびれを感じる」など膝から下肢にかけての筋力低下などが神経障害の兆候として現れることがあります。これらの症状が後遺障害として認定される場合もあります。

②関節の可動域制限や機能障害|正座できない・曲げれない

骨折などで膝関節の可動域が制限されたり、曲げ伸ばしの動作が困難になったりする状態です。また、膝の痛みや不安定感も含まれます。

このような症状は、神経障害ではなく、関節や周辺組織の損傷によるものです。この場合も、治療やリハビリテーションによって改善される場合もありますが、完全に回復しない場合は後遺障害として認定される可能性があります。

骨折などで膝が曲がらなくなって「正座ができない」という方の場合は、可動域制限が起こっている可能性があります。

  • (1)機能障害・・・膝が曲がらなくなる、または曲がりにくくなる
  • (2)神経障害・・・膝に痛みや違和感が残る

交通事故で膝に後遺症が残った場合に、認定される後遺障害等級

①神経障害|膝に痛み・違和感がある場合の後遺障害等級

交通事故のケガを治療しても、膝の痛みや違和感が消えずに「神経障害」が残った場合は、以下の後遺障害等級が認定されます。

<膝の神経障害に関する後遺障害等級>

12級 局部に頑固な神経症状を残すもの
14級 局部に神経症状を残すもの

機能障害の認定要件に該当しない痛みや違和感についても、神経障害が認定される可能性があります。たとえば、膝は曲がるけれど痛くて正座ができない、ずっとしびれが残っている感覚があるなどの場合には、神経障害について主治医に相談してみましょう。

なお、神経障害について後遺障害12級の認定を受けるには、原則として、その症状についての画像所見が必要となります。すなわちレントゲン・MRI・CTなどの画像検査の結果、神経障害の原因が画像上に表れていることが必要です。

ただし、痛みが存在するにも関わらず、画像検査では異常が見つからないケースも存在します。

このような場合、後遺障害の等級は14級や非該当とされることがあります。

12級と14級、また非該当との間では、後述する慰謝料の金額に大きな差が生じます。

そのため、後遺障害に詳しい弁護士に相談し、正確な検査と適切な後遺障害診断書を作成することが重要です。

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②機能障害|膝が曲がらない・曲がりにくい場合の後遺障害等級

骨折などで膝が曲がらなくなる、または曲がりにくくなる「機能障害」については、以下の3つの観点から後遺障害等級が認定されます。

  • 両脚か片脚か
  • 他の関節にも障害があるか
  • 全く曲がらないのか、少しは曲がるのか

<膝の機能障害に関する後遺障害等級>

1級 両下肢の用を全廃したもの

※両下肢とも、三大関節すべてが強直したもの

5級 一下肢の用を全廃したもの

※一下肢について、三大関節すべてが強直したもの

6級 一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
8級 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
10級 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
12級 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの

上記の表から明らかなように、神経傷害と比較して、後遺障害の等級が大幅に上昇していることがわかります。

つまり、後遺障害慰謝料や逸失利益などの請求額は、神経傷害の場合と比較して非常に大きな差があります。

③表の用語について

上記の表において用いられる各用語の定義を、以下5つ簡単に解説します。

(1)三大関節

股関節・膝関節・足関節の3つです。

(2)「強直した」

以下の(a)または(b)に該当することをいいます。

  • (a)関節が完全に動かない場合
  • (b)障害のある関節の可動域角度が、健側の10%以下に制限されている場合

(3)「用を廃した」

以下の(a)~(c)いずれかに該当することをいいます。

  • (a)関節が強直した場合
  • (b)関節が完全弛緩性麻痺、またはそれに近い状態になった場合
  • (c)人工関節・人工骨頭が挿入置換された関節の可動域角度が、健側の50%以下に制限されている場合

(4)「著しい障害を残すもの」

以下の(a)または(b)に該当することをいいます。

  • (a)障害のある関節の可動域角度が、健側の50%以下に制限されている場合
  • ※人口関節・人工骨頭が挿入置換されている場合は「用を廃した」に該当
  • (b)人工関節・人工骨頭が挿入置換された関節の可動域角度が、健側に比べて制限されているが、50%以下には制限されていない場合

(5)「障害を残すもの」

障害のある関節の可動域角度が、健側の75%以下に制限されていることをいいます。

※人口関節・人工骨頭が挿入置換されている場合は「著しい障害」に該当

膝の後遺障害慰謝料の金額目安

交通事故のケガ・骨折が完治せずに、正座ができない、違和感や痛みがあるなど後遺症が残った場合、被害者は後遺症に伴う精神的苦痛について、加害者に後遺障害慰謝料を請求できます。

後遺障害慰謝料の金額については、認定される後遺障害等級に応じて、以下のとおり目安が決まっています。

後遺障害等級 後遺障害慰謝料
1級 2,800万円
2級 2,370万円
3級 1,990万円
4級 1,670万円
5級 1,400万円
6級 1,180万円
7級 1,000万円
8級 830万円
9級 690万円
10級 550万円
11級 420万円
12級 290万円
13級 180万円
14級 110万円

1つでも後遺障害等級が変わると、請求できる後遺障害慰謝料の額が大きく変動します。

そのため、後遺症の部位や症状などに応じて、適正な後遺障害等級の認定を受けることが非常に重要となります。

後遺障害等級は逸失利益にも影響|逸失利益の計算方法

交通事故で膝の骨折などで後遺症が残った場合、被害者は加害者に対して「逸失利益」を請求できます。逸失利益とは、後遺症によって労働能力を失ったことにより、将来得られなくなった収入です。

膝の後遺症について認定される後遺障害等級は、加害者に請求できる「逸失利益」の金額にも大きく影響します。

逸失利益の計算式は、以下のとおりです。

  • 逸失利益=1年当たりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

参考:就労可能年数とライプニッツ係数表|国土交通省|https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/04relief/resourse/data/syuro.pdf

「労働能力喪失率」は、認定される後遺障害等級に応じて、おおむね以下の割合となります。

後遺障害等級 労働能力喪失率
1級 100%
2級 100%
3級 100%
4級 92%
5級 79%
6級 67%
7級 56%
8級 45%
9級 33%
10級 27%
11級 20%
12級 14%
13級 9%
14級 5%

たとえば、片脚の膝関節の機能に「障害」が残った場合、後遺障害12級が認定されます。

この場合の労働能力喪失率は、14%が目安です。

これに対して、片脚の膝関節の機能に「著しい障害」が残った場合は、後遺障害10級が認定されます。

この場合の労働能力喪失率は27%で、12級と比べると、逸失利益の金額は2倍近くになります。

後遺障害慰謝料と同じく、逸失利益についても、後遺障害等級が変われば金額が大きく異なる点にご留意ください。

まとめ

膝が曲がらない時に、適正な後遺障害等級の認定を受けることが大切な理由は?

上表の通り、認定される後遺障害等級が1つでも違えば、請求できる後遺障害慰謝料・逸失利益の金額が大きく変わります

そのため、適正な後遺障害等級の認定を受けることが非常に重要です。

膝の後遺障害を弁護士に依頼するメリットは?

弁護士に相談すれば、後遺障害等級の認定基準などを踏まえて、加害者側に請求できる損害賠償の項目・金額などをアドバイスが可能です。

実際の損害賠償請求(示談交渉など)の手続きについても、弁護士にご依頼いただければ全面的に代行できます。

交通事故の損害賠償請求や、後遺障害等級認定についてのお悩み・疑問点は、お早めに弁護士までご相談ください。

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阿部由羅
監修・執筆
阿部由羅(あべ ゆら) 弁護士
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。一般民事から企業法務まで、各種の法律相談を幅広く取り扱う。webメディアにおける法律関連記事の執筆・監修も多数手がけている。
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