ひき逃げ事故の示談交渉と加害者が見つからない時の対処法

ひき逃げ事故の被害者に。初期対応と加害者が見つからない時の対処法

交通事故現場から何の措置もとらず逃げるひき逃げは、社会では絶対に許されない行為です。

では、ひき逃げは、どんな罪でどのような罰則が与えられ、またひき逃げされた被害者はどのような補償を受けることができるのでしょうか?

今回は、加害者が逮捕された場合と逮捕されない場合に分けて、ひき逃げ被害にあったときに被害者ができる対処法を解説します。

ひき逃げはどんな罪に問われるのか

まず、ひき逃げの加害者がどんな罪に問われどのような刑罰に課されるのかについて知っておきましょう。後述する、ひき逃げの加害者との示談交渉とも関わりがあるからです。

ひき逃げの刑罰・罰金

法律上、「ひき逃げ罪」という罪はありません。道路交通法違反し、次の刑罰が課せられます。

罪状・違反名刑罰の内容
救護義務違反10年以下の懲役または、100万円以下の罰金
危険防止措置義務違反
事故報告義務等違反3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金
現場に留まる義務違反5万円以下の罰金

人身事故になれば、過失運転致死傷罪が成立します。

人が死傷するひき逃げは、基本的にこの二つが同時に起こる併合罪となります。

また、事故が起きた原因が、飲酒運転や酒気帯び運転、過剰なスピード違反などの危険走行によるものであった場合には、危険運転致死傷罪が成立し、より重い処罰を受けることとなります。

過失運転致死傷罪7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金
危険運転致死傷罪死亡:1年以上最大20年以下の懲役
負傷:15年以下の懲役

加害者に、救護がなければ被害者が死んでしまうという認識があったが放置した場合には、殺人罪・殺人未遂罪に問われる可能性もあります。

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ひき逃げの時効

危険運転致傷罪の時効は、10年です。
危険運転致死罪の時効は、20年です。
自動車運転過失致死の時効は、10年です。

ひき逃げに対する厳罰化の声は強くなっており、社会的な風潮として、「ひき逃げの時効」は撤廃すべきという声もあがっています。

ひき逃げの検挙率

交通死亡事故に限定した場合、ひき逃げ事件の検挙率は97%と、実に9割以上は被疑者が捕まっています。

これに対し、重傷事故になると検挙率は62.4%と一気に落ち込むことになります。
理由は、ひき逃げ捜査に動員する人員や労力が格段に変わってくるからです。

さらに、軽傷事故のひき逃げともなると、検挙率は49%程度まで下がり、ひき逃げ全体では、約50%となります。ただ、検挙率は毎年改善しています。

ひき逃げ事件の発生・検挙状況

区分平成26年平成27年平成28年平成29年平成30年
死亡発生153150147119132
検挙156146148116128
検挙率102.097.3100.797.597.0
重症発生1,1971,1931,1331,2031,177
検挙675618664747734
検挙率56.451.858.662.162.4
軽傷発生16,71415,6531,4858144,1413,748
検挙73277012667668676750
検挙率43.844.844.947.649.1
合計発生18,06416,99616,13815,73615,057
検挙8,1587,7767,4887,7307,612
検挙率45.245.846.449.150.6

【出典】令和元年版交通安全白書 交通事故の状況及び交通安全施策の現況/第1編陸上交通/第1部道路交通/第2章道路交通安全施策の現況/第5節道路交通秩序の維持P.143 第1‒16表より

ひき逃げされた!被疑者が捕まったときの示談交渉

ひき逃げされた後、被疑者が逮捕されれば、被害者は示談交渉により損害賠償を請求できることになります。

また、刑事裁判では、被害者との示談が成立していれば執行猶予が付くことも多くなります。

ひき逃げ事件の交渉相手

一般の交通事故と同様にひき逃げの場合も「加害者側の任意保険会社」が示談交渉の相手となります。

ただ、任意保険会社は、被害者の怪我の完治か症状固定の時期まで示談交渉をすることはできず、刑事裁判に間に合わなくなってしまうケースもあります。

また、加害者が任意保険会社に加入していない場合は、被害者は加害者と直接交渉しなければなりません。

しかし、ひき逃げの被害者は、直接加害者と交渉したくはないでしょう。

こういった場合には、弁護士が介入することも多いようです。

ひき逃げの加害者が任意保険に加入していない場合

ひき逃げの加害者が自賠責保険にしか加入していなければ、自賠責保険に直接損害賠償を請求することができます。

この手続きを「被害者請求」といいます。被害者請求の方法や必要書類については、以下の関連記事をご参照ください。

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ひき逃げ事件の示談金・慰謝料相場

被害者の処罰感情もあり、同程度の怪我をした事故と比べても、示談金の額は増額される傾向にあります。

また、ひき逃げや酒飲み運転、無免許運転の場合、慰謝料の増額事由となります。

ひき逃げの示談金の相場は、同程度の被害の事故と比べて高めになると考えてよいでしょう。

一般的な慰謝料・示談金相場は下記ページで併せてご確認ください。

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交通事故の示談交渉は弁護士に依頼

示談交渉の相手が加害者側の保険会社や弁護士の場合、一般の被害者が交通事故の手続きや法律についての知識で敵う相手ではありません。

一方で、加害者と直接交渉しなければならなくなった場合も、お互いが感情的になり、交渉がうまくいかない可能性があります。

いずれのケースでも、被害者が交通事故に強い弁護士に依頼すれば、法律や交通事故の手続きについての知識を駆使して、第三者として冷静にしかもこちらの主張すべきポイントを的確に主張してくれます。

被害者は、怪我の治療に専念することができます。

 

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ひき逃げ事件における被害者補償

一方で、ひき逃げの場合は、加害者が捕まらないこともあり得ます。このような場合、被害者はどのような補償を受けられるのでしょうか?

人身傷害補償保険による補償

交通事故の被害にあった場合、任意保険の内容によっては「人身傷害補償」が使える可能性があります。

人身傷害補償保険とは、人身事故の被害に遭った場合、被害者の加入する保険会社から、被害者や同乗者の怪我や死亡などの人身損害について補償を受けられる保険のことです。

また、被保険者の家族であれば、契約車両以外の車に乗車して事故に遭った場合でも補償を受けることができます。

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死亡・後遺障害が残った場合は無保険車傷害保険による補償

「無保険車傷害保険」とは、無保険車との事故で被害者に死亡または後遺障害が生じ十分な補償が受けられない場合に、補償を受けられる保険です。

加害者が補償すべき賠償額をもとに保険金額が算定され、補償額は、上限1人につき2億円になります。この保険が加害者不明の場合も使えるのです。

ただし、後述する政府保障事業制度を利用した場合、その金額は補償から差し引かれることになります。

なお、人身傷害保険にも加入している場合は、人身傷害保険から優先して補償されることになります。

また、保険金が支払われないケースもあるので、詳しくは、加入する保険会社に問い合わせてみてください。

政府保障事業制度

任意保険以外の選択肢としては、自動車損害賠償法による政府保障事業制度があります。

ひき逃げや加害者の無保険などがある場合に、被害者に給付金を支払うことを自賠法72条で規定しています。

これを請求することより、治療費などを自費で負担する必要はなくなります。

この制度は、ひき逃げ事故に遭い、ひき逃げの加害者が逃げ切ってしまい、わからない場合か、加害者は分かっているが無保険である場合に利用できます。

請求は、損害保険会社(組合)の全国各支店等の窓口にて行います。基本的には、事故発生から3年以内の申請であれば受け付けてもらえます(※死亡事故の場合は、死亡日から3年)。

実際に請求できる限度額は、それぞれ以下の通りです。

傷害の場合限度額:120万円
後遺障害の場合障害の程度に応じて75万円~4,000万円
死亡の場合限度額:3,000万円

ただし、政府保障事業制度は、あくまで被害者に対する救済手段がない場合の最終手段として設けられている制度です。自賠責や任意保険での不足分のみを補償します。

また、被害者の重大な過失がある場合のみ自賠責保険では過失相殺が行われますが、政府保障事業制度では、軽過失でも過失相殺が行われ、過失の分だけ給付額は差し引かれることになります。

なお、給付が行われない例外規定もあるので、受付窓口などで確認するようにしてください。

ひき逃げで泣き寝入りしない|警察の捜査と弁護士への依頼の関係

警察にひき逃げ事件の捜査に少しでも本腰を入れてもらうためにも、弁護士に相談することをお勧めします。

事故の重大性をアピールするために、弁護士に同行してもらいながら、警察に被害届や告訴状を提出しましょう。特に告訴状は、受理すると捜査に本腰を入れざるを得ません。

これを熟知している弁護士は、予め告訴状を作成して被害者と一緒に警察署まで告訴状を持参して同行してくれます。弁護士が作成し持参した告訴状は、素人が持参した告訴状とは違い、かなりの確率で受理してもらえます。

また、警察が被疑者を捜査している間も、被害者としてやっておくべきことがあります。

被疑者が見つかった場合、スムーズに賠償金を請求できるよう、被害者は次の事に注意しましょう。

  1. 必要な治療は必ず病院で医師の診察のもと行い、診断記録にも必ず「交通事故によるもの」とする記載を残してもらいましょう。
  2. 治療費の明細や領収書はなくさずに必ずとっておきましょう。
  3. 治療には必ず「健康保険」を使いましょう。交通事故病院だと、「交通事故に健康保険は使えません」と言ってくることもありますが、ひき逃げでは、犯人が見つからなければ政府補償や人身傷害補償に保険金を請求することになり、その場合健康保険を利用する必要があります。
  4. 怪我によって仕事に支障が出ていたり、休んだりした場合はその旨をしっかりと記録に残すとともに、会社員の場合は勤務先に休業損害証明書の発行を依頼しておきましょう。

万が一ひき逃げの被害にあったら、早めに交通事故に強い弁護士にも連絡しましょう。



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