保険会社の示談交渉テクニック|「示談すれば治療費払う」と言われたら

損保会社の示談交渉テクニック

加害者の保険会社が交通事故の治療費を支払ってくれなくなった。

担当者は、「示談に応じてくださるなら、支払いをストップしている治療費の分も支払いますけれど……」と言っている。

自分では支払えない。悔しいけれど、示談に応じるほかないのか?

交通事故では、こんな理不尽なケースが跡を絶ちません。果たして、こんなやり方が許されるのでしょうか?

ここでは、保険会社がこのような態度をとる目的はなにか?、それは許されるのか?このような扱いを受けたときの対処法や保険会社の示談交渉のテクニックについて解説します。

被害者が治療費を支払えなくなるときとは?

被害者が治療費を支払えなくなるのは、任意保険会社が、それまでの治療費の「直接払い」を打ち切るときです。

治療費の直接払いの対応とは?

加害者側が任意保険に加入している場合は、最終的に、任意保険会社が自賠責保険の負担部分も含めて損害賠償額の全額を一括して支払う「一括払い」が行われる場合がほとんどです。

最終的な「一括払い」を予定するときは、被害者への対応は、任意保険会社が窓口となります。これを「一括対応」あるいは「一括払い対応」と呼びます。

さらに、この対応がなされるときには、治療期間中の治療費は、被害者が病院に支払ってから加害者側に請求するのではなく、任意保険会社が直接に病院に支払ってくれるという「直接払いの対応」をしてくれる場合がほとんどです(※)。

※「直接払いの対応」を、「治療費の一括払い」という名称で呼ぶ文献もあります(「逐条解説・自動車損害賠償保障法第2版」弁護士北川隆之外著・弘文堂141頁など)。

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直接払い対応の打ち切りとは?|保険会社のテクニック

治療費の直接払いを受けている間、被害者は治療費の負担を心配することなく、十分に治療を受けることができます。

ところが、治療途中にもかかわらず、この治療費の直接払い対応が打ち切られてしまう場合や、打ち切ることを打診されてしまう場合があります。

例えば、治療費が自賠責保険の保険金限度額を超えそうになった場合や、治療が長引いた場合です。

任意保険は自賠責保険の限度額を超える損害額を補てんする保険なので、限度額を超えそうになると、直接払いを打ち切ったり、打ち切ると打診することで、治療をあきらめさせ、任意保険会社からの支払金額を少なくしようとするテクニックを使います。

また、同じ動機から、任意保険会社は治療が長引いた場合(打撲で1ヶ月、むち打ち症で3ヶ月、骨折で6ヶ月程度)に、直接払いを打ち切ろうとするのです。

直接払い対応は、法的な制度ではなく、任意保険会社による事実上のサービスにすぎませんから、任意保険会社がいつでも自由に打ち切ることができるのです(※)。

※東京高裁平成29年7月20日判決など。参考文献:「自動車保険における一括払の法的性質および保険会社の注意義務」東京海洋大学金岡京子教授(損害保険研究79巻4号)

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保険会社が治療費払わない|直接払い対応を打ち切られるとどうなる?

治療中にもかかわらず、直接払い対応を打ち切られると、被害者は以後の治療費を自費で支払わなくてはなりません。最終的に、その後の治療費も損害額と認められて自賠責保険や任意保険から支払われる場合でも、それまでは自分で支払うことを余儀なくされます。

ただでさえ、事故によるケガの痛みや治療のために仕事を休まざるを得ず、休業、休職状態であった場合、収入が減少している被害者にとって、大きな負担です。

そればかりでなく、場合によっては、直接払いの対応を打ち切られたことにより、以後の治療費を回収できない可能性を心配した病院が、これ以上の治療に応じてくれなくなる危険もあります。

損保会社の示談交渉術「示談すれば治療費払う」

直接払い対応を打ち切る任意保険会社の狙いは「兵糧攻め」です

被害者を経済的に困らせることで、保険会社側の提案する賠償額での示談に応じるよう仕向けるのです。

被害者は、収入が減少しているうえに、治療費が払えず、今後の治療に不安を抱えています。

病院が治療を進めてくれなくなる心配もあり、一刻も早く賠償金を受け取りたいと考えるようになります。

しかし、被害者は、任意保険会社との示談が成立しなければ、賠償金を受け取ることはできません。

任意保険会社は、この被害者の弱みにつけこんで、「この金額で示談に応じていただけるなら、すぐに賠償金をお支払い致しますが。」とマニュアル化された示談交渉術を使って提案するのです。

その提案内容は、本来の適正な賠償金額である弁護士基準(裁判所基準)の金額とはかけ離れた低い金額であることがほとんどです。

なかには、最低補償額の基準に過ぎない自賠責保険の支払基準で算定した金額を、素知らぬ顔で提示してくる例もあります。

ところが、経済的にも精神的にも追い詰められた被害者は、藁にもすがる思いで、示談に応じてしまうのです。これが保険会社の巧妙な示談交渉テクニックです。

たしかに、損害賠償金額を決める示談交渉は一種の経済的取引です。自社に有利な条件でウンと言わせるための駆け引きがあるのは当然です。

しかし、交通事故の被害者は、多数の国民が受ける車社会の利便性と引き換えに犠牲となった方です。任意保険会社のやり方は、あまりに卑劣ではないでしょうか?

「示談すれば治療費払う」への対処法とは?

では、直接払いの対応を打ち切られそうになったとき、打ち切られたときには、どのように対処すれば良いのでしょうか?

治療費が打ち切られそうになったとき

「もう症状固定時期でしょう。」、「これ以上は過剰診療ですよ。」、「そろそろ治療を終わらせて最終的なお話をさせてください。」、「示談するならお支払いできます」任意保険会社は、こんな台詞で直接払いの打ち切予告をしてきます。

治療を終わらせるかどうかは、主治医と被害者が判断することで、任意保険会社の言うとおりにする必要はありませんが、直接払いをやめられてしまうと大きな負担を強いられますから、直接払いを継続するよう、粘り強く交渉するべきです。

主治医と話し合い、あとどれくらいの期間、治療を継続するべきなのか、どの程度の期間で症状固定が見込まれるのかを判断してもらい、その内容を診断書なり意見書なりに記載してもらい、任意保険会社に提出します。

大切なのは、決して無期限に治療を続けるつもりではなく、見込み期間が経過した後は、症状固定として示談交渉開始に応じる姿勢を伝え、理解を得ることです。

保険会社がもっとも警戒するのは、賠償金目当てに、不必要な治療を継続する患者です。自分は決してそうではないことをわかってもらう必要があるのです。

多くの場合、医師の意見があれば、1~2ヶ月程度、打ち切りを延長してもらえるはずです。

治療費が打ち切られたとき

それでも現実に打ち切られてしまったときは、次の対応をとりましょう。

自費で治療を続ける

主治医と相談したうえで、まだ必要性があるなら、自費で治療を継続しましょう。以後の治療費は、最終的な示談の際に損害額として賠償金に加えて請求します。

健康保険を活用する

交通事故でも健康保険を利用できます。

直接払い対応の場合、健康保険を利用せず、高額な自由診療で治療が行われてきた場合も多いので、保険診療に切り替えて本人の負担額を少なくしましょう。

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仮渡金制度を活用する

自賠責保険には、仮渡金(かりわたしきん)という制度があり、至急に治療費などが必要になる事態に対処するため、治療費などの損害額がはっきりしない段階から、一定額の金銭を支払ってくれます(自賠法17条)。その金額は症状別に下記のとおりです。

 仮渡金の金額・被害者1名あたり(自動車損害賠償保障法施行令第5条)
死亡290万円
傷害・脊せき柱の骨折で脊せき髄を損傷したと認められる症状を有するもの
・上腕又は前腕の骨折で合併症を有するもの
・大腿たい又は下腿たいの骨折
・内臓の破裂で腹膜炎を併発したもの
・14日以上病院に入院することを要する傷害で、医師の治療を要する期間が30日以上のもの
40万円
・脊せき柱の骨折
・上腕又は前腕の骨折
・内臓の破裂
・病院に入院することを要する傷害で、医師の治療を要する期間が30日以上のもの
・14日以上病院に入院することを要する傷害
20万円
・11日以上医師の治療を要する傷害を受けた者5万円

被害者請求を活用する

被害者は、自賠責保険会社に対して、任意保険会社を介さずに、直接に賠償金を請求することが認められています。これを被害者請求と言います(自賠責法16条)。

請求を行う必要書類が多く、治療費の明細(診療報酬明細書)や診断書などを病院から入手し、請求書や事故発生状況報告書などを自分で記載しなくてはならないという手間はかかりますが、自賠責保険の限度額の範囲内の金額であれば、示談の成立を待たずに受け取ることができます。

しかも、被害者請求は損害が発生する毎に請求することが可能です。

つまり、自費で治療費を支払う毎に、その金額を自賠責保険会社に請求することができるのです。手続の手間はかかりますが、これにより負担した治療費を早期に回収することが期待できます。

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弁護士を活用する

直接払いの対応を打ち切られそうになったときの主治医や任意保険会社とのやりとり、被害者請求ための書類の収集と作成、請求手続、そして任意保険会社との示談交渉。

これらの作業を、交通事故問題に対する示談交渉術やテクニックを使えない被害者の方が、ケガの痛みと治療の負担に耐えながら続けることは実際上、大変な苦労です。

まさに、その負担に音をあげて、「もう保険会社の言うとおりに示談に応じてしまおう」となってしまえば、保険会社の思う壺です。

是非、弁護士に相談され、代理人としてサポートを受けることをお勧めします。

特に、被害者の方も、自動車保険に加入されているケースでは、ご自分の保険に、「弁護士費用特約」が含まれているかどうかを、ご自分の保険会社に電話して確認してください。

弁護士費用特約がある場合、法律相談費用10万円、示談交渉や訴訟の代理人としての着手金費用など300万円まで、あなたの保険会社が支払ってくれますから、自己負担0円で弁護士に依頼ができるのです。是非、活用してください。

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