被害者請求で後遺障害申請をするメリット・デメリット
交通事故の後遺障害等級認定は、事前認定より被害者請求がなぜよいのかご存知ですか? 今回は後遺障害等級認定申請の「被害…[続きを読む]
そんな悩みをお持ちの方がいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は特に「腰椎圧迫骨折」「胸椎圧迫骨折」などの重症の骨折をされた方のために解説致します。
骨折の後に残る、後遺障害について、第12胸椎圧迫骨折の裁判例や慰謝料、保険金、また後遺障害慰謝料を請求する為に必要な等級認定の基準について、また認定されない原因について、後遺障害等級11級を軸に説明します。
目次
腰椎圧迫骨折や胸椎圧迫骨折は、具体的に身体のどの部位の骨折を意味するのでしょうか?
腰椎(ようつい)や胸椎(きょうつい)とは、脊柱(脊椎)つまり「背骨」の一部をなすものです。
腰椎圧迫骨折・胸椎圧迫骨折の「圧迫骨折」とは、背骨のある部分が、上下方向に過度に圧迫されたことにより生じる骨折を意味するものです。
主に自動車の横転、バイク、自転車の転倒など尻もちをついたとき等に発症することが多いです。
治療としては、下記のようなものが多いです。
多くの場合はこのような治療で回復しますが、まれに脊柱に後遺症が残ってしまうことがあります。
腰椎圧迫骨折や胸椎圧迫骨折などをした場合の等級認定についてです。
脊柱の運動障害と変形障害等の程度に着目し、次のとおりの等級認定基準が示されています
脊柱の変形障害とは、脊柱が変形したことに関する後遺障害です。
下記のように3段階の序列で格付けされています。
6級と8級は、脊柱の後彎の程度とコブ法という測定法による側彎の程度により認定されます。
これらに達しない変形の場合は11級に認定されることとなります。実際に、最も症例が多いのが11級となっています。
*注意点としては「椎体が少しへこんで変形したもの」も医学的には圧迫骨折ですが、等級認定はされないこととなります。
次に、「脊柱の運動障害」のケースを見てみましょう。
具体的には「背骨を曲げにくくなる」「また脊柱が動かしにくくなる」のが運動障害です。
下記の序列で2段階に格付けされています。
*なお脊柱の「荷重障害」(脊柱が身体を支えることができなくなった後遺障害)に関しては、運動障害の等級が「準用」されることになっています。
上記のような後遺障害等級認定の獲得が厳しいときには、「神経障害」の後遺障害等級認定の獲得を目指すことが考えられます。
具体的には、下記のとおりです。
単に疼痛のために運動障害を残すもので、X線写真等で脊椎圧迫骨折等又は脊椎固定術が確認できず、また、首、背中と腰の軟部組織に、器質的な変化が認められないものとされています。
しばしば争われるのが「圧迫骨折の有無」です。
具体的には、画像が明白でない場合、あるいは、腰椎・胸椎の圧迫骨折であるとしても、事故によるものなのかそうでないのか(もともとあった骨折あるいは事故後の受傷によるもの)疑わしい場合に生じる争いです。
レントゲン画像では、事故前からあった古い骨折なのか、事故後に生じた新しい骨折なのかがよく分かりません。
元からあったいわゆる陳旧性骨折か、新鮮骨折かの判断は「受傷直後のMRI」で判断する必要があります。
逆に言えば、圧迫骨折の際には、新鮮骨折を証明する必要があり、そうしなければ後遺障害認定されない状況に追い込まれる場合があるので注意してください。
後遺障害等級は、第1級から第14級までの区分で定められており、該当する等級に応じて後遺障害慰謝料および逸失利益の限度が定められています。
したがって、この認定がされてはじめて慰謝料を獲得できます。
申請手続きには、事前認定、被害者請求という2つの方法があります。
申請手続きの簡単さだけでいえば、後遺障害診断書の作成を主治医に依頼してこれを受け取り、加害者側の保険会社に送付するだけで済む「事前認定」に軍配が上がるのは明らかです。
しかし、加害者側の保険会社は、あくまで後遺障害等級認定がなされて損害賠償額が増えればその支払いを行わねばならない立場にあり、被害者の味方に立つものではありません。
上述のとおり、後遺障害等級認定が具体的にどうなるかは、カルテや意見書や不利な事情を補うための説明文書などを用意して自ら申請手続き、つまり「被害者請求」をすべきといえます。
後遺障害等級認定の審査は、客観的な医学的所見によって立つ徹底的な書面審査を基本としています。
例えば、下記の3つの書類・画像は特に重要です。
「腰椎圧迫骨折で後遺症が残ったのに11級に認定されず非該当になった!」という事態が起きる原因は、主に上記の書類の一部に問題のある記載があって、後遺障害が認定されないというケースをまずは考えるべきでしょう。
適切な後遺障害等級認定を得るための備え、つまり、これに備えた的確な資料収集のために、下記の観点が重要になってきます。
詳しくは後遺障害診断書に関するページをご確認ください。
また、これらすべての資料収集や確認は個人では難しく、後遺障害に強い弁護士に相談したほうが無難でしょう。
後遺障害等級認定されない場合はもちろん支払われませんが、後遺症が等級認定された場合は以下の後遺障害慰謝料の金額が支払われます。
この額については、基本的には後遺障害の自賠責等級に応じて決められており,多くの裁判所では赤い本に記載されている下記表が基準として用いられています。つまり細かい計算は不要です。
後遺障害等級 | 自賠責保険 (要介護以外) |
任意保険基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|---|
後遺障害1級 | 1,150万円 (1100万円) |
1300万円 | 2800万円 |
後遺障害2級 | 998万円 (958万円) |
1120万円 | 2370万円 |
後遺障害3級 | 861万円 (829万円) |
950万円 | 1990万円 |
後遺障害4級 | 737万円 (712万円) |
800万円 | 1670万円 |
後遺障害5級 | 618万円 (599万円) |
700万円 | 1400万円 |
後遺障害6級 | 512万円 (498万円) |
600万円 | 1180万円 |
後遺障害7級 | 419万円 (409万円) |
500万円 | 1000万円 |
後遺障害8級 | 331万円 (324万円) |
400万円 | 830万円 |
後遺障害9級 | 249万円 (245万円) |
300万円 | 690万円 |
後遺障害10級 | 190万円 (187万円) |
200万円 | 550万円 |
後遺障害11級 | 136万円 (135万円) |
150万円 | 420万円 |
後遺障害12級 | 94万円 (93万円) |
100万円 | 290万円 |
後遺障害13級 | 57万円 (57万円) |
60万円 | 180万円 |
後遺障害14級 | 32万円 (32万円) |
40万円 | 110万円 |
※自賠責基準の()内の金額は、2020年31日以前に発生した事故について適用される金額
※被扶養者がいる場合や要介護の場合には金額が異なるケースがあり
なお、後遺障害の認定を受けた場合は、慰謝料以外に逸失利益も請求することが出来ます。それぞれ、自動慰謝料計算機で計算してみましょう。
また、後ほど詳述する「脊柱の変形障害」は、保険会社が逸失利益(労働能力喪失率や労働能力喪失期間)について争ってくることが多い典型的な事例といえます。
参考になる裁判例として、国税調査官の後遺障害(11級7号)の例があります(名古屋地裁 平成22年7月2日判決)。
後遺障害が残ったことによる収入の減少が認められなくても、将来の昇給や昇格に影響が出る可能性があることを考慮して「逸失利益が認定」されたものです。
交通事故により、第12胸椎圧迫骨折の傷害を負って入通院により治療を受けましたが、残念ながら被害者には、後遺障害等級11級7号に該当する「脊柱の奇形障害」が残りました。
ここで大きな問題が起こります。被害者が比較的早期に元の職場に復帰し、従前の税務署員として稼働していることから、保険会社が「逸失利益」について強く争いはじめたのです。
しかし、裁判所は、後遺障害の具体的内容(脊柱の変形)やその派生的症状(腰痛による集中力の低下)、これによって同僚と比べてかなり長い残業時間が発生していることを認定。
現時点において、特段の減収が認められないのは、原告自身の努力によるところも大きく、将来の昇給や昇格に影響が出る可能性は否定できないとして、結論としては、67歳までの平均して「14%の逸失利益」を認定したものです。
ただし、後遺障害等級が11級であり、本来の労働能力喪失率は20%とされています。
それにもかかわらず、本件では14%とされたのは、被害者の仕事の能率の落ちる原因が障害ではなく、腰痛が理由で現時点においては減収が発生していないことが考慮されていると思われます。
このように、現時点において特段の「減収が認められない場合」にも、後遺障害の具体的内容やその派生的症状の影響を具体的に考慮し、将来の減収の可能性が認められるときには、逸失利益を認定するのが近時の裁判例の傾向となっています。
以上が腰椎圧迫骨折・胸椎圧迫骨折などによる、後遺障害等級認定と、認定されるかされないかについてでした。
最近では、無料相談を行っている弁護士事務所も多いです。被害者の方の自動車保険に弁護士費用特約がついていれば、保険から弁護士費用が支給されます。
賠償金や保険金について困っていたり、後遺障害等級認定されないか、されるか不明な場合など何か困っているならまず後遺障害に強い弁護士に相談しましょう。
弁護士に依頼できれば、後遺障害に基づく逸失利益・慰謝料の請求するにあたって、保険会社との示談や裁判に向けたあらゆる手間から解放され治療に専念できるメリットがあります。
そして金額において相対的に最も高額であるいわゆる弁護士会基準で請求できるという点、妥当な後遺障害等級認定を得るために能動的な方法である被害者請求を選択した上でこれに備えて的確な資料を収集するにあたって助けとなるという点、などといった多くの大きなメリットが存在します。ぜひ一度弁護士に相談してみることをおすすめ致します。