交通事故で鎖骨骨折。争点となるのは後遺障害逸失利益!

鎖骨は元々骨折しやすい部位ですが、交通事故でも、オートバイで肩から落下した場合や、自動車事故で肩を強打したときに起きることがあります。

この鎖骨骨折でも後遺障害が残ってしまうケースがあり、慰謝料や逸失利益について保険会社などと争いになることがあります。

そこで今回は、鎖骨骨折の治療法や後遺症、慰謝料などについて解説しつつ、逸失利益が争点となる理由について説明します。

1.鎖骨骨折の治療法、後遺症

(1)鎖骨骨折の治療法

鎖骨とは、胸骨(胸の中心にある骨)と肩甲骨をつないでいる骨です。交通事故でここが骨折すると、腫れて激しく痛みます。

そこで、鎖骨骨折には以下のような治療が行われることになります。

保存療法

鎖骨の骨折は、手術によらない「保存療法」によって治癒させることが多いケガとされています。保存療法とは、鎖骨バンドや呼ばれる装具で固定する方法です。

保存療法では、4週間から12週間で治癒するとされています。

手術

鎖骨骨折でも、骨のずれが大きい、骨が砕けている、皮膚から飛び出してしまった、鎖骨の下にある神経や血管を傷つけてしまったなど損傷が大きい場合は、プレートを使用した手術も行われます。

(2)鎖骨骨折の後遺症

しかし、以上のような治療を行っても場合によっては、治癒後も肩こりや肩のしびれ、痛みが残ったり、肩の動きに支障がでる場合があります。

また、治癒せずに、偽関節(ぎかんせつ)となってしまう場合もあります。

偽関節とは、骨折が通常数ヶ月から半年程度で骨がくっつき治癒するはずのところ、くっつかずに、いつまでもブラブラと動いてしまう状態が続く場合です。

さらには、治癒しても、もとどおりの形とはならず、変形してしまうケースもあります。

このような症状が残ってしまった場合は、事故による後遺障害として、損害賠償の対象となります。その前提として、自賠責保険の損害保険料率算出機構によって、後遺障害等級の認定を受けることが必要です。

2.鎖骨骨折の後遺障害等級

鎖骨骨折の後遺障害には、次の3つがあります。

・変形障害(鎖骨の形が変形してしまった)
・機能障害(肩の動きに問題が生じてしまった)
・神経障害(痛みが残ってしまった)

後遺障害等級は、その後遺障害の程度に応じて、1級から14級に分かれています。

それでは、3つの後遺障害について1つずつ説明しましょう。

(1)変形障害

鎖骨の変形障害は、「鎖骨(中略)に著しい変形を残すもの」として、第12級5号に該当する場合があります。

鎖骨骨折が治癒せず偽関節となってしまった場合や、治癒しても変形が残った場合が考えられます。

ここにいう「著しい変形」とは、裸体になったときに、変形や欠損が明らかにわかる程度のものに限定されます。X線写真によって、はじめてその変形が発見しうる程度のものは該当しません(※1)。

※1「労災補償・障害認定必携第15版」237頁

(2)機能障害

上肢の機能障害です。これは三大関節(肩、肘、手首)の動きが制限されたり、動かなくなったりすることを指します。鎖骨骨折との関連性が疑われるのは、肩関節の動きに障害が生じた場合でしょう。

上肢の機能障害は、その程度によって、次の各等級にわかれています。

後遺障害等級後遺障害の内容用語用語の説明
8級6号1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの「関節の用を廃したもの」関節が、全く可動性を失った場合
10級10号1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの「著しい障害」関節の可動域が健康な肩の2分の1以下となってしまったもの
12級6号1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの「機能に障害」関節の可動域が健康な肩の4分の3以下となってしまったもの(※2)

機能障害は、このように関節の動きが制限されるいわゆる可動域制限の問題ですが、その原因が器質的な損傷であることが要求されています。

器質的な損傷とは、身体の組織そのものに損傷が生じていることです。たとえば、関節が変形してしまい関節が動かないといった場合は機能障害に該当しますが、「痛くて動かせない」という場合は機能障害には該当しません。その場合は、次の神経障害に該当するか否かが検討されます(※3)。

※2前出「障害認定必携第15版」248頁
※3「後遺障害等級認定と裁判実務・訴訟上の争点と実務の視点」弁護士高橋真人編著新日本法規発行」395頁

(3)神経障害

痛みが残った場合は、末梢神経障害として、その程度に応じて次の各等級に該当します。

後遺障害等級後遺障害の内容実務上の判断基準
12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの他覚的所見があり、症状を医学的に証明できるもの
14級9号局部に神経症状を残すもの症状が医学的に説明可能なもの

12級の「他覚的所見」とは、医師がX線やMRIなどの画像や各種の神経学的検査から、医学的知識に基づき、症状の存在を確認できている場合を指します。

14級の「医学的に説明可能」なものとは、患者しか症状を認識できない(自覚症状)だけの場合であっても、治療経過から推測される症状に一貫性、連続性が認められる場合を指します。

交通事故の神経障害は、事故直後か数時間してから発症し、その時が最も症状が重く、治療とともに症状が軽くなってゆくのが通常です。

これと異なり、事故から長期間経ってからはじめて痛みが出たとか、治療途中から新たな症状が発生したとか、途中から症状が重くなった、いったん治癒した後に治療を再開したなどの場合は、症状の一貫性、連続性が疑われ、事故に基づく症状とは「医学的に説明ができない」と評価されます。

医学的に説明ができないとされる例

・事故から長期間経ってからはじめて痛みが出た
・治療途中から新たな症状が発生した
・いったん治癒した後に治療を再開した

3.後遺障害認定を受けるためにすべきこと

(1)機能障害の場合

機能障害は、器質的損傷の存在と可動範囲がポイントですので、症状固定となり、担当医に後遺障害診断書を作成してもらう段階で、画像撮影がなされているかどうか、適切な可動域測定がされているかどうかをチェックする必要があります。

可動域測定は、一定のマニュアル(※5)にしたがってなされる必要がありますが、全ての医師が自賠責保険のための測定方法に習熟しているわけではありません。できればこの段階から、交通事故事件の経験豊富な弁護士にチェックしてもらえればベストです。

※5「関節の機能障害の評価方法および関節可動域の測定要領」

(3)神経障害の場合

画像や神経学的検査による他覚的所見があれば12級となり問題ありませんが、自覚症状だけの場合は、14級となるためには、治療経過から症状の一貫性、連続性が認められる必要があります。事故直後から医療機関の受診を開始し、定期的な通院を心がけ、途中で間をあけたりしないことが大切です。

4.鎖骨変形の場合に問題となる労働能力の喪失

(1)鎖骨変形と労働能力喪失率が最も争いになる

後遺障害認定の他に、特に鎖骨変形で問題となるのが、逸失利益です。

後遺障害逸失利益は、後遺障害で労働能力が失われなければ将来働いて得られたはずの収入のことです。失われた労働能力の程度(労働能力喪失率)は、政令通達によって、後遺障害等級に応じて基準化されています(※5)。

なぜ逸失利益が問題となるのかと言えば、鎖骨変形が労働能力喪失をもたらすかどうかに争いが生じるからです。

前出のとおり、鎖骨の変形は、裸体になったときに、変形や欠損が明らかにわかる程度に至っていれば、自賠責保険では12級5号に該当することが認められます。

しかし、これに対して、保険会社が、鎖骨が外形上変形していても働く力に影響はないはずであるとして、逸失利益の有無または内容を争ってくるケースが多いのです。

※5「自動車損害賠償保障法施行令」及び「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準(平成13年金融庁・国土交通省告示第1号・平成14年4月1日施行)」

(2)鎖骨変形と労働能力喪失率に対する裁判所の考え方

このようなケースにおいて裁判所の基本的な考え方は次のとおりです。

・自賠責保険における後遺障害等級とその労働能力喪失率は、裁判所が労働能力喪失率を認定する際にも、第一次的に参考にする。

・しかし、裁判所は、もともと自賠責保険の判断や基準に縛られるものではないから、自賠責保険の喪失率を画一的に用いるのではなく、参考にとどめ、あくまでも事案の具体的事情に応じた判断をする(※7)。

・鎖骨変形においても、現に生じている不便・不都合の内容ごとに、労働能力喪失の有無·程度を検討する(※8)。

そこで、保険会社が争う場合、鎖骨変形で労働能力喪失が認められるためには、自賠責保険によって12級に認定されただけでは足りず、その被害者の仕事に与える具体的な影響を個別に主張、立証することが必要となります。

※7「労働能力喪失率の認定について」東京地裁民事27部片岡武裁判官講演録(前出「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準2004年版」425頁)
※8「労働能力喪失の認定について」東京地裁民事27部瀬戸啓子裁判官講演録(前出「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準2005年版下巻」96頁)

(3)鎖骨変形は労働能力に影響しないのが原則

鎖骨が変形したこと、それ自体が労働能力喪失をもたらすと言える場合は、モデルなどのように、容姿それ自体が職業上重要なケースに限定されます。そうでない場合は、鎖骨の変形それ自体が労働能力喪失率に影響するとは言えません。

鎖骨変形は労働能力喪失率に影響しないとした裁判例
(大阪地裁平成17年12月9日判決)

被害者は、右腕の用を廃した5級6号の後遺障害が認められたうえ、鎖骨変形で12級5号にも該当するとされたので、通常の5級6号よりも、さらに大きく労働能力が喪失していると主張したところ、裁判所は、鎖骨変形は労働能力喪失率に影響を与えないとしました。

(4)鎖骨変形によって労働能力喪失を認めた例

鎖骨変形によって、肩関節の動きに支障が生じている場合、その程度が12級6号に達している場合は「機能障害」となるので問題ありません。しかし、運動障害がその程度に達していない場合であっても、スポーツ選手、職人など肉体労働的側面が強い職業では、労働能力喪失が認められる場合があります

鎖骨変形(12級5号)による労働能力喪失を認めた裁判例
(東京地裁平成13年10月26日判決)

・被害者(女性)の職業は学校給食担当職員という力仕事も必要な職業でした。
・左鎖骨変形のために左肩の痛みや動きの制約が生じただけでなく、それを補うことにより右腕、右肩にも負担が生じていました。
・被害者は、事故前と同様に仕事をこなすために早朝出勤したり、(給食調理作業のために重い物を持つ必要があるが、一度に重い物は持てないので)運搬の回数を増やしたりする努力をしていました。
・このような実際に生じている不便、不都合等を考慮して、労働能力喪失率14%を認めました。

この裁判例からもわかるように、保険会社が鎖骨変形での労働能力喪失を争ってきた場合は、被害者の仕事上、どのような支障が生じているのかを丁寧に具体的に主張、立証してゆく作業が必要となります。

では次に、具体的な後遺障害慰謝料と逸失利益について考えてみます。

5.鎖骨骨折の後遺障害慰謝料と逸失利益

(1)後遺障害慰謝料

鎖骨骨折で後遺障害が残った場合、その等級に応じて後遺障害慰謝料を請求できます。後遺障害慰謝料の目安となる金額は、次のとおりです。

後遺障害等級後遺障害慰謝料の相場(弁護士基準)
8級830万円
10級550万円
12級290万円
14級110万円

以上の数字は、裁判で用いられる弁護士基準(裁判基準)です(※4)。弁護士基準は、過去の裁判例と裁判所の意見を整理して書籍として公表したものです。

弁護士基準による賠償額は、保険会社が示談交渉で提示する金額よりも高額ですので、慰謝料に限らず、損害賠償を請求する際は弁護士基準によって計算することが重要です。

※4「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準(財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編集発行)による。

(2)後遺障害逸失利益の計算方法

鎖骨骨折にかかわる後遺障害等級の労働能力喪失率は次のとおりです。

後遺障害等級労働能力喪失率
8級45%
10級27%
12級14%
14級5%

ただし、鎖骨変形の場合、前述のとおり、それが労働能力を喪失させる障害といえるかどうかをめぐって、訴訟で争われるケースが多いとされています。

後遺障害逸失利益の計算式は次のとおりです。

逸失利益=
年収額×労働能力喪失率×被害者の年齢に応じたライプニッツ係数

被害者の年齢に応じたライプニッツ係数」とは、国土交通省の下記サイトでダウンロードできる一覧表で調べることができます。

(3)10級の後遺障害慰謝料と逸失利益の計算例

上記の計算式、労働能力喪失率、後遺障害慰謝料の弁護士基準から、10級の後遺障害の賠償額を計算してみましょう。

被害者:年齢31歳 年収450万円 後遺障害等級10級(喪失率27%)の場合

逸失利益=450万円×27%×16.547(ライプニッツ係数)=2010万4605円(A)

後遺障害慰謝料550万円(B)

(A)+(B)=2560万4605円

これが後遺障害の賠償額です。

もっとも、損害賠償はこれにとどまらず、治療費、入通院慰謝料、入通院交通費、休業損害なども請求できます。

まとめ

お分かりいただけましたように、鎖骨骨折で適切な後遺障害認定や逸失利益を認めさせることが難しいケースが想定されます。

事前に交通事故を得意とする弁護士に相談し、そのアドバイスを受けることがお勧めです。

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