免許証不携帯の「罰金・点数・罰則」で絶対知っておくべきこと
今回は、免許不携帯の基礎知識と、「点数」「反則金」「罰則」、またコピーはダメか、見逃しはないかなどについて説明します…[続きを読む]
無免許運転は悪質な運転違反とされており、無免許運転をすると免許停止や免許取り消しなどの行政処分の対象となるだけでなく、逮捕されたり懲役刑の対象となることもあります。
この記事では、無免許運転で捕まってしまった方を対象に、無免許運転をしてしまったときの行政処分と刑事処分の内容や、無免許運転の事故の相手への損害賠償について解説いたします。
目次
無免許運転にはいくつかの種類があります。
無免許運転は大きく分類すると「準無免」、「取消無免」、「停止中無免」、「免許外運転」の4種類に分けられます。
・「純無免」・・・それまで一度も免許取得の交付を受けた経験のない人が車を運転をすること。
・「取り消し無免」・・・交通事故や交通違反をして免許を取り消しされた後、再度免許の交付を受ける前に車を運転すること。
・「停止中無免」・・・免許の停止期間中(免停中)、または免許の有効期限切れ中に運転をすること。(参考:停止中に運転した方の処分警視庁)
・「免許外運転」・・・自分の免許対象外の車種を運転することをいいます。たとえば、普通自動車運転免許しか受けていない人が中型自動車や普通自動二輪車を運転すること。
その他に、他人名義の免許証を携帯して運転する行為、日本国内で無効な外国の免許証で運転する行為、免許試験に合格して免許証を交付される前に運転する行為も無免許運転として罰則の対象となります。
無免許運転はしばしば運転者の「うっかり」によって引き起こされます。たとえば、運転免許の有効期限が切れているにも関わらず更新忘れで運転してしまうようなケースです。
免許があると勘違いして運転した「うっかり失効」でも、免許がないことを認識して無免許運転をした場合でも、無免許運転に該当することに違いはありません。
有効な運転免許を持っているにもかかわらず免許証を携帯していなかった場合は無免許運転には該当しませんが、免許証の不携帯で3,000円の罰金の対象となります。
「免許条件違反」も無免許運転とは区別されています。免許条件違反とはたとえば、AT限定の免許でマニュアル車を運転したり、免許の条件に「眼鏡等」の記載があるのに眼鏡やコンタクトレンズを着用せずに車を運転することをいいます。
普通車の場合、免許条件違反をすると違反点数2点、罰金7,000円の対象となります。
交通違反をすると刑事処分と行政処分が科されます。
無免許運転は道路交通法違反となり、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されます。
かつては「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」とされていましたが、飲酒運転等の交通違反の厳罰化の流れの中で道路交通法が改正され、2013年12月1日に罰則が強化されました。
なお条文では「50万円以下」とされていますが、初犯で違反行為が無免許運転のみの場合であれば罰金額の相場は「30万円程度」だと言われています。
また刑事罰として懲役刑が科されるか罰金刑が科されるかは、裁判官が違反行為の態様や状況を考慮して判断します。
2回目の再犯だったり人身事故を起こした場合には罰金刑ではなく懲役刑が科される可能性が高くなります。
無免許運転の違反点数は25点で、酒気帯び運転と同じ点数です。
免許取り消しの違反点数は15点ですので、無免許運転をすると一発で免許取り消しの対象となり、さらに免許の取れない期間として「2年間は欠格期間」として免許を取得しなおすことができなくなります。
そして欠格期間が過ぎても再取得するために、取消処分者講習を受けて教習所へ通う必要があります。
また違反点数は累積制ですので、無免許運転が発覚した時点で他の違反をしていた場合は重い行政処分を受ける可能性もあります。
よくある質問のひとつですが、運転免許の有効期限が切れていることに気が付かなかった場合など、うっかり無免許運転をしてしまった場合の罰則はどうなるのでしょうか。
無免許であることを認識していた場合と「うっかり」の場合の罰則が同じでは公平に欠けるようにも思えますが、この場合は過失か故意かは考慮されず一律で上記の罰則が適用されます。
もっとも、実際に罰則が適用される際の量刑の判断に当たっては、違反の態様の悪質さが大いに考慮されることになります。
またこの後説明するように、無免許運転が発覚したときに逮捕されるかどうかも過失か故意かによって異なります。
無免許運転が発覚すると警察に現行犯逮捕や後日逮捕されて身柄を拘束されてしまうのでしょうか?
結論からいえば、単に無免許運転が発覚しただけでは現行犯逮捕される可能性は高くありません。
初犯で、無免許運転以外の交通違反を起こしておらず、うっかり失効、あるいは軽はずみに無免許運転をしてしまった場合であれば、逮捕の確率は低いです。
その後起訴されても法廷に出廷せずに書類のやりとりだけで罰金刑が言い渡される「略式起訴」という手続になるケースがほとんどです。
ただ初犯ではなく過去に同種の前科や前歴があって2回目、3回目の場合には、反省がなく悪質なケースとされ、現行犯逮捕されて正式裁判を受けることになる可能性が高まります。
ところが、単に公道を無免許で運転したというだけで無免許運転が発覚するのはどちらかというと稀で、スピード違反や一時停止義務違反や飲酒運転などの他の交通違反が発覚して免許証の提示を求められたときに発覚するのが一般的です。
また、死亡事故など重大な交通事故を起こしてしまったときに発覚することもあります。
このように重大な交通違反や交通事故と無免許運転との「合わせ技」になると、現行犯逮捕されてしまう可能性は格段に高まります。
無免許運転の発覚を恐れて検問や職務質問を突破したような場合には高い可能性で逮捕されるでしょう。
このように無免許運転で検挙されても初犯で悪質でない場合には逮捕される可能性は低いですが、他に重大な違反や事故を起こした場合や前科や前歴があった場合などには逮捕され裁判にかけられる可能性が高くなります。
逮捕されてしまった場合であっても、なるべく早い段階で弁護士を付けることによって早期の釈放を実現したり、実行ではなく執行猶予付きの判決を得られる可能性は十分にあります。
少しでも不利益を小さくするためには弁護士に相談することをお勧めします。
高校生などの未成年が無免許運転をした場合には少年法で処罰されるため、基本的には罰金の支払いを命じられることはありません。
ただし死亡事故のような重大な事故の場合は重罪とみなされて事件送検をされる場合がありますが、初犯で無免許運転以外の違反をしていない状況であれば、不処分か保護観察処分になる可能性が高いでしょう。
少年法で定められている処分は下記の4種類です。
不処分とは、処罰を与えなくても更正が期待できると判断できる場合に調査のみで手続を終える処分です。
保護観察処分とは、保護観察官の指導・監督があれば更正できると判断される場合に保護観察官から日常の指導を受ける処分です。
少年院送検とは、再犯の可能性が高く社会内での公正が難しいと判断された場合に少年院で矯正教育が行われる処分です。
事件送検とは、未成年が罪を犯したとき保護処分より刑事罰を科すべきと判断される場合、事件を検察官に送検される処分です。
無免許運転は30万円程度の高額な罰金が科されます。誰でも簡単に支払える金額ではありません。
無免許運転で検挙されて検察庁で略式裁判を受けると、裁判所から「決定通知書」が届き、罰金の額が通知されます。
決定通知書が届いてから2週間は不服申し立て期間とされており、それが経過すると処分が決定します。処分が決定すると払い込み用紙が届きます。払い込み用紙の支払い期限は2週間以内とされているのが一般的です。
多少の誤差はありますが、無免許運転で検挙されてからおよそ2か月後くらいに最初の納付期限がやってきます。
納付期限に払わないと1ヶ月後くらいに督促状が届きます。そこで改めて支払い期限が設定され、支払わない場合は労役に処すという通知がされます。
労役とは刑務所内の工場で軽作業の労働をして、1日5,000円の日当を罰金の支払いに充てることをいいます。30万円の罰金なら60日間の労役を提供することになります。
納付期限を過ぎるとすぐに労役に処されるわけではありませんが、滞納の期間が長引けば長引くほど、身柄を拘束されて強制的に労役に処される可能性が高くなります。
労役をするためには会社を辞めざるをえなく、肉体的にも精神的にも負担が大きいため、できれば避けたい事態です。
違反をしてから最終的な支払い期限まではある程度の期間がありますので、その間に働いて罰金の支払いをしたり、親族からお金を借りて支払いをする方が現実的で賢明な手段だと言えるでしょう。
罰金を分割・分納で支払うことは原則としてできません。
しかし、罰金の徴収などについて定めた法務省の「徴収事務規定」には下記の通り記載があります。
「納付義務者から納付すべき金額の一部につき納付の申出があった場合において、徴収主任は、事情を調査し、その事由があると認めるときは、一部納付願を徴して検察官の許可を受けるとともに、検察システムによりその旨を管理する。」
これを解釈すると、事情を説明し、とりあえず罰金の一部だけ納付して残金は後日納付したいという申し出をすれば、罰金を一部だけ納付することが認められる場合もあります。
人身事故を起こした場合は刑事処分、行政処分の他に問題となることがあります。
それは事故の相手方への賠償です。事故を起こすと、過失の割合に応じて相手に生じた損害を賠償する義務が生じます。
事故の損害は物損(車の修理費など)と人身傷害(怪我の治療費、後遺症に対する慰謝料など)に分かれます。
重大な後遺障害が残った場合や死亡事故の場合には、賠償金は数千万円から数億円になることもあります。
通常、相手方への賠償は自分が加入している保険会社から支払われます。では、無免許運転の場合はどうなるのでしょうか。
無免許であっても、相手方が事故により怪我をした場合には「自賠責保険」や「対人賠償保険」が適用されます。
ただし運転者自身の損害については保険の適用の対象となりません。
また、相手方の車が損傷したときは、「対物賠償保険」も適用されることになります。
同乗者が怪我をした場合には同乗者に対しても賠償義務が生じますが、自賠責保険を含む対人賠償保険、人身傷害補償保険、搭乗者傷害保険、自損事故保険などに加入していれば原則として補償の対象となります。
なお、事故の相手方にも過失がある場合には、相手方の保険からも過失の割合に応じて賠償金を支払ってもらえます。
無免許と知っていながら、「自動車を貸したり」、「運転を要求、依頼して同乗する」といった無免許運転を補助する人に対しても、罰則が与えられます。
刑罰 | 3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が適用されます。 |
行政処分 | 免許取り消し及び2年間の欠格期間 |
無免許運転は重大な事故に繋がりかねない悪質な交通違反とされており、運転者には行政・刑事の両面において多くの不利益が科されます。
無免許運転で事故を起こしてしまったときには、事故の相手方に対しても多大な迷惑をかけることになります。
免許がないことがわかっているときはもちろん「うっかり」であっても無免許運転は絶対にしないようにし、万が一無免許運転をしてしまったときには行政上、刑事上の処分に冷静に対処するようにしましょう。