交通事故|胸椎・腰椎の圧迫骨折で後遺障害等級認定される?されない?
今回は特に「腰椎圧迫骨折」「胸椎圧迫骨折」などの重症の骨折をされた方のために解説致します。骨折の後に残る、後遺障害に…[続きを読む]
後遺障害11級の後遺障害慰謝料の金額相場は、自賠責基準で136万円、弁護士・裁判基準で420万円程度です。
認定される症状には、腰椎の圧迫骨折、脊髄損傷や内臓障害など重大な症状が含まれ、適正な等級の認定を得るためには専門的な知識が必要です。
では、適正に後遺障害認定を受けるにはどうすればいいのでしょうか?適切な補償を受けるためにできることはあるのでしょうか?
今回は、後遺障害11級の慰謝料相場・逸失利益の計算・示談金の計算と後遺障害認定のためにすべきこと、また示談金・賠償金の事例や慰謝料金額の増額のためにすべきことについて解説します。
なお、腰椎圧迫骨折などで11級7号に該当するような障害が残った方は、下記の記事も併せてご参考ください。
目次
11級に認定される症状と後遺障害慰謝料の相場は、以下の通りです。
等級 | 症状 |
---|---|
11級1号 | 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの |
11級2号 | 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの |
11級3号 | 1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの |
11級4号 | 10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの |
11級5号 | 両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの |
11級6号 | 1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの |
11級7号 | 脊柱に変形を残すもの ※レントゲンなどの画像で圧迫骨折や脱臼が認められるもの。 |
11級8号 | 1手のひとさし指、なか指又はくすり指を失ったもの |
11級9号 | 1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの |
11級10号 | 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの |
後遺障害11級の後遺障慰謝料の金額相場 | ||
---|---|---|
自賠責基準 | 任意保険基準(※) | 弁護士・裁判基準 |
136万円程度 | 150万円程度 | 420万円程度 |
上表のとおり、慰謝料の相場には、自賠責基準、任意保険基準、弁護士・裁判基準の3つの基準があります。
自賠責基準は、人身事故での最低限の補償を定めた自賠責保険の基準であり、この3つの中でも金額的には最低の基準となっています。
任意保険基準は、任意保険会社が賠償金を提示する際の基準で、任意保険会社が独自に定めているものです。
※任意保険基準については、一般に公開されていないので、旧任意保険の統一支払基準を参考に記載しています。
弁護士・裁判基準は、裁判例を基にしており、実際に裁判でも用いられる基準で、唯一法的に妥当な基準でもあります。
11級の場合、弁護士・裁判基準の金額は、自賠責基準の3倍以上になります。
そのため、弁護士・裁判基準で慰謝料の交渉をすべきですが、被害者自身が交渉しても保険会社が耳を貸すとは限らず、弁護士に依頼して交渉を代理してもらうことが重要です。
弁護士・裁判基準で交渉することで、慰謝料・示談金の大幅な増額が期待できることになります。
後遺障害11級の裁判事例を2つご紹介させてください。11級の慰謝料がどこまで増額できるのかを確認しましょう。
裁判例1
大阪地裁平成23年7月13日判決
被害者は男性・競輪選手(症状固定時34歳)。
脊柱の変形障害で11級7号の後遺障害となりました。
裁判所の指摘した事実は、次のとおりです。
裁判所は、これらの事情から、入通院慰謝料250万円に加えて、後遺障害慰謝料500万円を認めました。
参考文献:交通事故民事裁判例集44巻4号908頁
裁判例2
大阪地裁平成27年7月31日判決
被害者はイラストレーターの男性(症状固定時34歳)。
事故で、右大腿骨の骨折、会陰部や尿道などに外傷を受けました。
自賠責保険からは、会陰部や男性器の疼痛(12級13号)、右股関節の可動域制限による機能障害(12級7号)で併合11級を認定されました。
裁判所は、以上のことから、入通院慰謝料240万円に加え、後遺障害慰謝料600万円を認めました。
参考文献:交通事故民事裁判例集48巻4号933頁
上記の裁判例を見て分かる通り、11級の弁護士・裁判基準の後遺障害慰謝料の相場の420万円の金額よりも、裁判例の方が高額であることが分かります。
特筆すべきは、裁判例2で認められた慰謝料600万円についてですが、10級の弁護士・裁判基準の相場550万円をも超えています。
慰謝料は、個別の事故態様などによって判断されるので、支払われる額は事故ごとに異なります。
特に裁判では、被害者のあらゆる事情を斟酌して判断するので、慰謝料も相場金額より高額になることがあります。
慰謝料・示談金を増額するには、増額理由に該当するすべての事実を洗い出し、主張できるかどうかが重要になります。
後遺障害逸失利益は、後遺障害が認定された場合に請求ができる損害賠償のもう一つの項目です。
後遺障害逸失利益は、後遺障害がなければ得られたであろう将来の収入です。
逸失利益は、次の計算式によって求めることができます。
後遺障害11級の労働能力喪失率は、20%です。そこで次の事例で実際に逸失利益の計算をしてみましょう。
*ライプニッツ係数については、参考外部サイト:国土交通省「就労可能年数とライプニッツ係数表」で調べることが可能です。
事例
被害者の年齢・性別:42歳男性
被害者の年収:580万円
被害者の後遺障害等級:11級7号580万円(年収) × 20%(労働能力喪失率) × 17.413(年齢42歳のライプニッツ係数※) = 20,199,080円
この11級7号のケースで被害者は、約2000万円の逸失利益を受け取ることができます。
※ 2020年3月31日以前に発生した事故については、ライプニッツ係数14.094で計算
上記の11級7号のような事例はもちろん、すべての後遺障害11級の認定は「被害者請求」ですることがお勧めです。
被害者請求のメリットは、手続きすべてを自分でコントロールすることで手続きの透明性が担保され、適正で納得しうる等級認定を受けられる可能性が高くなるということです。
ただし、相手側の保険会社に手続きを任せてしまう事前認定に比べ、手続きが面倒なのがデメリットと言えるでしょう。
請求手続きの提出書類の中でも後遺障害診断書は、審査に大きな影響を与える重要な書類です。認定の審査は、書面で行われるからです。
後遺障害診断書の作成を医師に依頼する際のアドバイス、作成後のチェックまで、等級認定についてのポイントを押さえたアドバイスをもらいたい場合は、交通事故に詳しい弁護士への依頼を検討してみましょう。
弁護士に依頼するメリットは、後遺障害等級認定のことばかりではありません。
弁護士に依頼すれば「異議申し立て」の申立、「裁判」の提起についても任せることが可能です。
なお、気をつけるべきは、依頼する弁護士です。
くれぐれも、交通事故の医学的知識が豊富で後遺障害等級認定などの手続きに詳しい弁護士を選ぶ必要があります。
自分の事故のケースで、後遺障害11級の慰謝料、逸失利益や賠償金の相場を調べたい方は、入通院慰謝料の自動計算ツールをご利用ください。
通院期間や後遺障害等級を入れるだけで、より詳しく自分の慰謝料相場を弁護士基準で計算することができます。
後遺障害11級の場合、後遺障害慰謝料の相場も自賠責基準で136万円程度、弁護士・裁判基準で420万円程度です。ただあくまで相場のため、個々のケースにおいては個人で計算するのではなく、弁護士に依頼をしましょう。
後遺障害等級11級が認定されたら、「後遺症部分の損害」を相手方に請求できます。
後遺障害等級11級の自賠責基準で計算した場合136万円程度であり、被害者請求により先取りできます。 そして、不足している損害額を相手方に請求することになります。
今回は、後遺障害11級が認定されるケースと、認定を受けるための方法、認定された場合の損害賠償の金額事例、11級7号の事例、逸失利益の計算などについて解説しました。
11級の認定をより確実にし、より適切な慰謝料・示談金のための交渉をするには、交通事故に強い弁護士に力を借りることが大切です。
交通事故で後遺障害が残った場合に金額、正当な補償を受けるには、交通事故に詳しい弁護士に是非ご相談ください。