自賠責保険に自分で被害者請求する!手続きの流れ、必要書類等を解説
任意保険会社の支払い拒否や示談交渉の長期化で、交通事故の賠償金の支払いが遅れることがあります。その場合には、自賠責保…[続きを読む]
この記事では、無保険事故の被害に遭った場合に取るべき対処法をご説明していきます。また無保険で事故してしまった加害者の方もご参考ください。
最近のデータを確認すると、74.6%の自動車が自動車保険、いわゆる任意保険に加入しています(※)。
裏を返せば、自賠責保険にしか加入していない無保険車の割合が最大で25%もある可能性があります。
もしも交通事故にまきこまれて、相手が自賠責保険にしか入ってなければ、自身で直接加害者と示談交渉を行わなければならない負担を強いられたり、相手側に支払い能力がないといった問題を抱えたうえで、対応していかねばなりません。
※ 自動車保険の概況2018年度(2017年度統計)P.139|損害保険料率算出機構
目次
無保険車とは、任意保険に未加入などの理由で対人補償内容が不十分な車のことです。
主に「自賠責保険は加入しているが任意保険は未加入」と「自賠責保険・任意保険ともに未加入」の場合があります。
それぞれの場合について、被害者にどんな不利益があるのか、まとめておきしょう。
自賠責保険しか加入していない場合
自賠責保険・任意保険ともに未加入の場合
いずれの場合も、加害者と直接交渉しなければならず、十分な賠償が保証されないことがわかります。
では、加害者が保険未加入であった場合の対処法を「自賠責保険しか入ってない場合」と「任意保険・自賠責保険ともに未加入の場合」に分けてみていきます。
最初に、加害者が自賠責保険しか入ってない、いわゆる「任意保険未加入の事故」の場合には以下の対処法が考えられます。
相手が任意保険に未加入の場合、被害者は自賠責保険に「直接請求」する必要があります。
手順としては、加害者が加入している自賠責保険会社に連絡を入れて、必要な書類を取り寄せ、自身のケースに応じて請求します。
自賠責保険は支払いに「限度額」があります。
これを超える賠償金の支払いについては、直接加害者に請求して、示談交渉を進めるしかありません。
内容証明郵便で請求通知をし、示談交渉し成立したら、示談書の内容に従って加害者から支払いを受けることになります。
支払いは、通常は銀行振込にしてもらうことが多いですが、一括払い出来ない場合には「分割払い」にするしかないでしょう。
それでも支払ってもらえない場合の対処法については、後述します。
素人が加害者から「取り立てる」ことは、非常に難しい作業です。
よって、相手が支払をしない場合のリスクに備えるには、示談書を「公正証書」の形にしておくのがよいでしょう。
公正証書とは、公務員である公証人が作成する公文書のことです。
特に「強制執行認諾条項付き公正証書」にしておくと、裁判手続きを経なくても、いきなり相手の財産を強制執行(差し押さえ)することが可能になるメリットがあります。
公正証書化は「任意保険・自賠責保険ともに未加入」の場合など、相手が任意保険だけ未加入の場合以外にも有効な手段です。
被害者側が加入している保険に、「無保険車傷害特約」や「人身傷害特約」、「搭乗者傷害特約」といった特約が付いていれば、被害者側の保険会社から支払いを受けられる可能性があります。
また、ご自身やご家族などの保険に「弁護士費用特約」が付いている場合には、300万円程度までの弁護士費用等を自身の保険会社に負担してもらえます。
弁護士に依頼すれば、加害者との交渉が有利に進み、支払いを受けられる可能性が高まります。
なお、次節で解説する「加害者が任意保険・自賠責保険ともに未加入」の場合も「保険の特約」は利用可能です。
自賠責保険に未加入の車に追突された場合、損害賠償は、加害者に直接請求するしかなく、保険の補償を受けることができません。
しかし、以下のような対処法があります。
「示談書の公正証書化」と「保険の特約の利用」については前述したので、ここでは「政府保障事業」の利用について説明します。
加害者が自賠責保険にすら未加入であれば、国が加害者に代わって損害を補償する「政府保障事業」が利用できます。
保険未加入の場合以外に、加害者がひき逃げなどによって逃げてしまい、特定できず補償がまったく受けられないケースでも利用が可能です。
支払い限度額は自賠責保険と同様で、被害回復に十分とは言えませんが、泣き寝入りするよりははるかにましと言えます。
政府保障事業は、損害保険会社が窓口となって対応してくれます。加害者の踏み倒し、逃げ得を許さないためにも制度の利用を検討してみましょう。
詳しくは国土交通省のホームページをご覧ください。
【参考外部サイト】:国土交通省:「政府保障事業について(ひき逃げ・無保険事故の被害者の救済)」
相手と直接交渉をして示談書を作成しても、相手が約束通り支払いをしないことがあります。
また、それ以前に、相手と示談をしても合意ができないことや、そもそも相手が示談交渉に応じないこともあります。
こういったケースではどのような対処法があるのでしょうか?
まず裁判を起こして相手に対して損害賠償請求することが可能です。
示談が成立していない場合に利用する裁判手続きは、「損害賠償請求訴訟」です。
裁判においては、こちらが交通事故の存在と内容、損害の内容と評価額について、適切に主張をして立証しないといけません。
これらの主張立証がうまくいかないと、判決で損害が認定されず負けてしまいます。
示談が成立している場合には、示談金にもとづく「支払い請求訴訟」になります。
この場合には、示談書が証拠になるので主張と立証は簡単になり、負けることは少ないでしょう。
このような裁判手続きを利用して勝訴すると、裁判所が相手方に対して必要な損害賠償金(示談金)の支払い命令の判決を出してくれます。
支払い命令の判決が出たら、それに従って支払いを受けることができます。
しかし、裁判で勝訴して相手に支払い命令が出ても、相手がそれに従って支払をするとは限りません。
示談書に「強制執行認諾条項」をつけていても、相手がそれを守らず支払いを怠ることもあります。
このような場合、判決書や前述した公正証書を使って、相手の財産に強制執行(差し押さえ)をすることが可能です。
では、最後に、加害者が自賠責保険のみ未加入、自賠責保険・任意保険いずれも未加入のどちらのケースでも使える対処法を説明します。
交通事故による怪我の治療には、健康保険を使って治療をすることも可能です。
自費による出費を抑えるために、健康保険を出来るだけ利用して治療を行うことも一つの対処法です。
「仕事中の従業員が運転する車」が起こした事故であれば、被害者は、使用者である企業に対して、使用者責任を追及し損害賠償請求をすることができる可能性があります。
また、たとえば、元請け業者や下請け業者が起こした事故、無断運転等の場合には、車を保有する企業や個人に運転供用者責任が生じる可能性があります。
使用者責任・運転供用者責任いずれを追及するにせよ、加害者に支払い能力がない場合は、弁護士に相談したほうがいいでしょう。
交通事故の加害者が、損害賠償を支払えず、自己破産してしまうことがあります。
しかし、たとえ加害者が自己破産を申し立てたとしても、「事故が不法行為」に該当すれば、損害賠償請求は可能です。
物損事故の修理代は、自賠責保険の支払い対象外です。
自分の任意保険に「車両保険」が付いている場合、補償を受けることもできますが、保険の等級が下がってしまう可能性があります。
できるなら加害者に直接連絡をとり示談交渉などを行い、車の修理代の支払いを求めていくのが良いでしょう。
以上のように自賠責保険しか入ってない事故、無保険でぶつけられる事故に巻き込まれるケースがあります。
加害者が保険未加入の場合には、直接加害者と示談交渉を行うことになるので、被害者がうまく交渉できず泣き寝入りすることもあります
また保険未加入の加害者は支払い能力に問題があり、差し押さえがうまくいかず逃げ得・バックレになることもあります。
しかし、ご自身やご家族の弁護士費用特約を利用するなどして、弁護士に依頼すればこういった問題を解決できる可能性が高まります。
弁護士は加害者と直接交渉することができるので、被害者の負担が減り、当事者同士ではなかなかまとまらない交渉が、弁護士が入ることで支払いに結びつくことが多いのです。
また、もし裁判を起こす必要が生じた場合でも、弁護士は専門的見地から対応し有利になるように活動を行うので安心です。
無保険事故に遭った場合には、被害者の負担を少しでも軽くするためにも、弁護士費用特約を利用するなどして弁護士に相談することを検討してみてください。
参考文献:「加害者・保険会社に負けない交通事故示談 小河原泉 著 明日香出版社」