交通事故で法テラス利用は有効か?弁護士費用と注意点を解説

交通事故で法テラス利用は有効か?
  • 交通事故でも法テラスを相談できるの?弁護士費用が心配

被害者であろうと加害者であろうと、交通事故の際に弁護士費用に不安を感じる場合、法テラスの活用をおすすめします。

法テラスを利用することで、弁護士費用を前払いできるため、資金的な制約があっても弁護士に依頼できます。

ただし、交通事故に関する法テラスの活用には、利点がないケースもあるため、慎重な判断が必要です。

この記事では、交通事故における法テラスの利用の有用性、示談交渉における法テラスの相談方法と留意点、弁護士費用に関する重要な情報などを詳しく紹介します。

交通事故で法テラス利用は有効か?メリットを解説

法テラスを利用すると、弁護士費用など以下のようなメリットがあります。

お金がなくても弁護士に相談・依頼できる

法テラスの一番のメリットは、手元にお金がなくても弁護士に相談したり示談交渉などを依頼したりできることです。法律相談料も払えない、着手金のお金がないというケースでは非常に助かります。

分割償還の負担が小さい

法テラスの場合、立替金の分割償還は経済状況に応じて、月々5,000円から1万円程度でも認めてもらえる場合があります。利息は一切かかりません。毎月の分割金額が低いので、楽に支払える方が多くなるでしょう。

弁護士費用が安くなる可能性がある

弁護士費用は、オープン価格であり、その弁護士が自由に設定することができます。費用の高い弁護士もいれば、安く設定している弁護士もいます。

しかし、法テラスを利用すると、弁護士費用が「法テラス基準」で計算されます。

一律に同じ基準で計算しますので、弁護士による値段の違いは生じません。

例えば、交通事故で請求する損害賠償額が50万円未満の場合、法テラス基準の費用は次のとおりです。

実費分 2万5000円
着手金 6万4800円(税込)
報酬金 得た賠償金の10%(税別)(※)

賠償金50万円を得られた場合の費用
2万5000円+6万4800円+5万4000円=14万3800円

50万円―14万3800円=35万6200円(差し引き手元に残る賠償額)

※但し、保険会社への簡易な請求手続だけで保険金(賠償金)の給付を受けた場合は、次の金額が報酬金となります(民事法律扶助業務運営細則第16条)

  • 自賠責保険 給付金の2%(税別)
  • 任意保険 給付金の3%(税別)

弁護士は、これ以外の基準で費用を請求することはできません。仮にその弁護士が、通常はこの基準よりも高い金額を設定していたとしても、法テラスを利用した案件については、法テラス基準に違反することはできません。

したがって、その場合は、利用者にとって弁護士費用、料金を安くすることができたことになります。

※正式には、「代理援助立替基準」と言います。その内容は、次のサイトで見ることができます。

参考サイト:法テラス立替基準表

ただし以下の項目でも説明しますが、必ずしも法テラスの方が安くなるわけではないので注意が必要です

交通事故で法テラスに相談する際の注意点

交通事故に強い弁護士に当たるとは限らない

法テラスを利用するとき、自分で弁護士を探すのではなく法テラスの支部で相談を受けてそのままその弁護士に依頼するパターンがあります。

この場合、たまたま法律相談を担当した弁護士にそのまま依頼することになるため、交通事故に強い先生に当たるとは限りません。その先生が受けられない場合には別の先生を紹介されますが、その弁護士もやはり交通事故に強いとは限りません。

法テラスで相談して、そのまま相談担当の弁護士に依頼するときには、自分で弁護士を指定できないことが大きな問題となります。

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弁護士費用が必ずしも安くなるとは限らない

法テラスを利用すると法テラス基準が適用されると説明しましたが、必ずしも法テラス基準が一般の弁護士事務所の基準より安いとは限らず、弁護士費用が高くなるケースもあります。

たとえば法テラスでは必ず着手金がかかりますが、一般の法律事務所では着手金無料のケースもあります。

審査に時間がかかる

法テラスで民事法律扶助を利用するためには審査を受けなければなりません。そのためには自分や配偶者の給与明細書を提出して2~3週間待たねばなりません。また審査が終わっても必ず通るとは限らないことも問題です。

着手金無料の一般の法律事務所に依頼すれば、当初に一切お金を払わなくても即日対応してくれるので、それと比べると法テラスにはデメリットが大きいと言えるでしょう。

法テラスを利用して交通事故に強い弁護士に依頼する方法

先に「法テラスでは相談する弁護士を選べない」と言いましたが、それは法テラスの地方事務所を通じて、たまたまその日担当した弁護士に相談する場合です。

そうではなく、自分で見つけた弁護士に「法テラスを使って相談する」ことは可能です

法テラスと契約をしている弁護士であれば、その先生の法律事務所で相談を受けるときにも法テラスの援助を受けられますし、依頼するときに民事法律扶助を利用できるからです。

弁護士が了承すれば、民事法律扶助を使って弁護士費用を立て替えてもらい、自分で選んだ弁護士に動いてもらうことが可能となります。

ただし法テラスを通じて依頼できるのは法テラスと契約している弁護士のみです。

法律相談の際にはその弁護士が法テラスと契約をしているのかどうか、確認しておく必要があります。

法テラスか弁護士への直接依頼か迷ったときのベストな対処方法

法テラスか弁護士への直接依頼のどちらが得か?

ずばり弁護士に直接依頼するのと法テラスを使って依頼するのと、どちらが得なのでしょうか?

確かに法テラスを利用すると最初にまとまった着手金を払う必要がなく、法テラスに月々1万円ずつ支払っていけば良いので支払いが楽です。

ただし法テラスの地方事務所では交通事故に強い弁護士を選べませんし、一般の事務所に依頼に行くとしても法テラスと契約している弁護士しか対応してくれない問題があります。

一方HPなどで探した交通事故に強い弁護士に対し、法テラスとは無関係に直接依頼する場合、自分の気に入った「交通事故に強い弁護士」を選べます。

また料金体系について、着手金無料の弁護士を選べば、今現在手元にお金が0円でもすぐに動いてもらうことが可能です。

料金総額についても法テラスの方が必ずしも安いとは限りません。見積もりをもらって比較すれば一般の事務所の方が安くなる可能性もあります。

前述のとおり、法テラス基準(「代理援助立替基準」別名「立替基準表」)はネット上で公開されていますので、必ず費用の比較を行いましょう。

交通事故に遭ってお金がないときのベストな対処方法

以上を踏まえて交通事故で弁護士に頼みたいのにお金がないケースでは、以下のように対応するのがベストです。

  • まずは交通事故に強く、着手金無料の弁護士を探す
  • 電話して法テラスと契約しているか、民事法律扶助を利用できるか聞いてみる
  • 実際に法律相談を受けて、法テラスを使わない事務所の報酬体系で見積もりを出してもらう
  • 法テラス基準と事務所の見積もりを比較して、依頼方法を決定する
    (ご自身で法テラス基準での費用額の計算が難しい場合は、その点も含めて法テラスに相談することがお勧めです)

事務所の報酬体系が法テラスよりも多少高くても、着手金無料であれば手元にお金がなくても依頼できます。すぐに動いてくれるメリットも大きいので、その場で依頼してしまう選択もあり得ます。

よくある質問

法テラスとは?

なぜ「お金がなかったら法テラスに相談すれば良い」と言われるのでしょうか?

法テラスは、経済的に余裕のない人に向けての法律的支援の機関だからです。

法テラスでは、主に以下の2つの活動をしています。

  • 収入の低い人に対する、弁護士や司法書士の無料法律相談
  • 収入と資産が低い人に対する、弁護士や司法書士の費用立替(民事法律扶助)

交通事故に遭ったとき、収入も資産も一定基準より低ければ、弁護士や司法書士による相談を受けられますし、収入も資産も一定基準より低ければ弁護士費用を立て替えてもらい、弁護士に示談交渉や訴訟などに対応してもらうことが可能です。

ただし民事法律扶助は、あくまで費用の「立替」ですので後に返済が必要です。

原則として法テラスと契約をした2ヶ月後から毎月の返済を始めます。

支払額は、立替金を3年間で返済できる金額で設定されることが原則ですが、利用者の経済状況に応じて月額5,000円から1万円程度での返済も可能です。

返済額については、無理のない金額となるよう、法テラスとの契約時に十分に相談してください。

また示談や訴訟で決着がついて相手から賠償金が振り込まれたらそこから一括で弁護士費用を精算します。つまり相手から受けとった金額から法テラスへの償還金を引いた金額が、あなたの手元に戻ってくることとなります。

法テラスを利用する条件とは?

法テラスを利用するには、収入や資産が一定以下でなければなりません。

これを資力基準と言います。

資力基準には、①収入要件と②資産要件の2つがあります。

無料法律相談を受ける場合も、民事法律扶助を受ける場合も、どちらの場合も資力基準を充たしている必要があります。

具体的にはどのくらいの条件になっているのか、ご紹介します。

収入要件

無料法律相談を受ける場合も、民事法律扶助を受ける場合も、利用者の収入が一定額以下である必要があります。これを収入要件と言います。

大都市基準とそれ以外の基準があり、大都市基準の金額の方が高くなっています。また家賃や住宅ローンの支払いがある場合、そちらを加算することも可能です。(但し加算限度額があります)。

【収入基準】
家族
の人数
手取りの月収額 家賃や住宅ローン
を支払っている
場合の加算限度額
1人 18万2,000円以下
(20万200円以下)
4万1,000円以下
(5万3,000円以下)
2人 25万1,000円以下
(27万6,100円以下)
5万3,000円以下
(6万8,000円以下)
3人 27万2,000円以下
(29万9,200円以下)
6万6,000円以下
(8万5,000円以下)
4人 29万9,000円以下
(32万8,900円以下)
7万1,000円以下
(9万2,000円以下)

なお、収入は利用者だけでなく、その配偶者の収入も合算します。また配偶者以外に利用者と同居している家族に収入がある場合は、家計に貢献している範囲で(具体的には家に入れている生活費)合算します*。

*但し、離婚事件のように、配偶者が相手方となる事件の場合、配偶者の収入は合算しません。

上表を鑑みると、4人家族であれば40万円以上手取りがあっても法テラスを利用できる可能性さえありますが、条件に合わない人もいらっしゃるかと思います。

その場合は、法テラス契約弁護士以外の、着手金無料の交通事故に強い弁護士などを探して相談してみるのも良いでしょう。

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資産要件

無料法律相談を受ける場合も、民事法律扶助を受ける場合も、利用者の資産も一定額以下である必要があります。これを資産要件と言います。

資産とは、無料法律相談を受ける場合は、預貯金と現金だけが対象です。

民事法律扶助を受ける場合は、預貯金と現金だけでなく、不動産(自宅は除きます)、有価証券も対象となります。

【資産基準】
  • 家族の人数が1人 180万以下
  • 2人       250万以下
  • 3人       270万以下
  • 4人       300万以下
  • 資産は配偶者の資産も合算されること、離婚事件など配偶者が相手方の事件の場合は合算しないことは収入要件と同じです。
  • 不動産を所有していても、その物件をめぐる権利自体が法的争いの対象となっている事件の場合は資産に含めません。

他の要件について

資力基準の他にも、2つの条件があります。「勝訴の見込みがないとはいえない」こと、「民事法律扶助制度の趣旨に違反しない」ことです。

「勝訴の見込みがないとはいえない」とは、敗訴に決まっている場合以外を言いますので、交通事故事件に限らず、ほとんどの場合、この条件は問題となりません。

民事法律扶助制度の目的は経済的弱者に対する援助ですので、単に仕返ししたい感情を充たすだけの目的による訴訟や権利の濫用といえる場合には、援助を受けることはできません。

参考サイト:日本司法支援センター・法テラス「3 誰でも利用できるの?

審査について

法テラスの無料法律相談では資力基準をクリアーすることが必要ですが、こちらは自己申告となるので審査は不要です。一方「民事法律扶助」を利用するには審査を受けなければなりません。

収入要件を満たすことを証明するため、給与明細書や源泉徴収票、自営業者の場合の確定申告書などを提出しなければなりません。配偶者の収入も考慮されるので、配偶者の給与明細などの提出も求められます。本人の収入が限度を超えていなくても、配偶者と合算して資力オーバーとなってしまうケースもあります。

資力要件については、基本的に自己申告のみです。ただし、事案によっては預金通帳や不動産登記簿などの提出を求められるケースもあります。

法テラスで審査決定が出るまでは2週間くらいかかります。

交通事故被害者に弁護士は必須

交通事故で示談交渉をするとき、被害者が自分で対応すると低い「任意保険基準」を適用されるので、慰謝料などの賠償金を大きく減額されます。また被害者側の過失割合を高くされて賠償金をさらに減額されるケースも多々あります。被害者が自分で示談を進めると、多大なストレスもかかります。交通事故被害者が自分の権利を守るには、弁護士に対応を依頼することが必須です。

法テラスを使っても直接依頼でもかまわないので、できるだけ早めに交通事故に強い弁護士を探し、依頼して対応してもらうべきです。大きく賠償金がアップする上ストレスもなくなるので、後にきっと「依頼して良かった!」と思えることでしょう。

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監修
弁護士相談Cafe編集部
本記事は交通事故弁護士カフェを運営するエファタ株式会社の編集部が執筆・監修を行いました。
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