実況見分調書が加害者の言い分どおり!後日、現場検証をやり直したい
人身事故の場合には、警察が実況見分を行い、実況見分調書を作成します。交通事故の実況見分調書が加害者主体で作成されてい…[続きを読む]
交通事故の現場での警察官との対応は、事故の後始末において極めて重要です。正確な情報提供や適切な行動が、事故処理の円滑な進行や法的な問題の解決に大きく影響します。
交通事故直後は、外傷や症状がなく物損事故として届出をしたが、その後、痛みや痺れなどの症状が現れ、人身事故に切り替える際にも、警察の現場検証が必要となります。
この記事では、交通事故の現場で警察官との対応で必ず知っておくべき事項と注意点について詳しく説明します。
目次
通常、交通事故が起きると事故の当事者には、警察への報告義務が発生し、警察が現場に到着すると、当事者双方の立会いのもとで「実況見分という名の現場検証」が行われることになります。
ただ、緊急搬送などで被害者が立ち会えないときは「加害者のみでの現場検証」が行われ、退院後「被害者のみの現場検証」が行われることもあります。
また、物損事故から人身事故への切り替えの場合は、警察に診断書など必要書類を持参して、その旨を届け出た後、警察が「被害者・加害者双方に」連絡のうえ日程を調整して行われることになります。
現場検証では、主に次のようなことが検証されることになります。
具体的な実況見分についての流れや内容については、次の関連記事をお読みください。
実況見分調書が「民事訴訟の証拠」として用いられる場合があります。
実況見分調書には、「ハンドルを切った位置、そのときの相手車両の位置」や「ブレーキを踏んだ位置、そのときの相手車両の位置」などの事故態様を明らかにする内容が記録されているため、事故態様に争いがあるケースで用いられやすいのです。
また、実況見分調書は、当事者などの「立会人」による「指示説明」に基づいて特定されたものであることも、併せて記録されています。
*実況見分に立ち会って説明を行う者を「立会人」と呼び、目撃者らが行う説明を「指示説明」と呼びます(犯罪捜査規範104条2項、105条1項)。
つまり実況見分調書は、多くの場合、当事者が警察官に説明した事故状況が記録されていることになるのです。
このため、交通事故の民事訴訟において実況見分調書が重視されるのは当然なのです。
事故態様に関する実況見分調書の記録が、立会人の指示説明に基づくものである以上、そこには「記憶違い」「嘘などの虚偽」「記録の間違い」のような事実と異なる内容が入り込む危険は少なくありません。
交通事故の民事訴訟において、正しい事故態様を認めてもらうためにも「実況見分に立ち会う際に」、次の諸点に注意する必要があります。
大切なことは、体験した事実を正確に記録させることです。加害者や警察官を説得する必要も議論をする必要もありません。
言い分が違う場合、加害者は「それはおかしい」と攻撃してくることがありますが、取り合う必要はありません。
「あなたはあなたの言い分を伝えてください。こちらはこちらの言い分を伝えるだけです。」と対応しましょう。
また、警察官からも「違うんじゃないの?」と暗に言い分を変えるよう促される場合もあります。当事者の主張が一致すれば、実況見分調書の作成が簡単で楽になるからです。
しかし、これも取り合う必要はありません。「いいえ。私の記憶どおりです。」と言い続けましょう。警察官の仕事は、被害者の言い分を記録することであり、言い分を一致させることではないからです。
言い分が食い違っていると「これじゃ、実況見分調書が作れない。」と話を合わせるように求める警察官がいます。
しかし、これは嘘です。主張が大きく食い違うときに、個別に実況見分を実施して、複数の実況見分調書を作成しておくことは、別段、珍しくはないからです。面倒な仕事をしたくない警察官にだまされてはいけません。
物損事故から人身事故への切り替えで双方立会いの実況見分が行われたにもかかわらず、被害者の納得がいかない実況見分調書が出来上がってしまったらどうすればいいのでしょうか?
実況見分調書は、あくまでも警察・検察の内部書類であり、被害者の要望に応じて実況見分をやり直さなければならない法的義務も責任も警察にはありません。
したがって、警察からすれば、被害者が気に入らないからといって実況見分をやり直すことはまずないでしょう。
残念ながら、一度作成された実況見分調書を後から修正・訂正することはできません。
この場合、上申書などを警察に提出し、新たな実況見分調書の作成を依頼することになります。
詳しくは、交通事故に強い弁護士に相談することをおすすめします。
現場検証に要する時間は、事故の状況によって異なりますが、20分から1時間程度、長くても2時間程度でしょう。特に、何らかの理由で、後日、現場検証に立ち会わなければならなくなった被害者が、仕事の都合をつけ、自分の時間を削られるのが不満な気持ちは理解できます。
しかし、もし、立ち会わずにいれば、ここまで説明してきたような不利益を被る可能性があります。現場検証に立ち会って、しっかりと自分の主張を調書に記載してもらいましょう。
ただ、事故現場では無理に相手と議論をする必要はありません。大切なことは事実を正確に記録してもらうことです。
たとえ加害者と主張が食い違ったとしても、あなたが事実だと認識していることについては必ず記録してもらい、絶対に折れたりしないよう注意しましょう。