交通事故の発生時の対応|救護義務マニュアル
事故後、一番最初にすべきことは「負傷者の救護」です。加害者側が行うべき「事故後に運転者・同乗者がすべき救護方法」を解…[続きを読む]
交通事故を起こすと、多くの場合は相手方が存在するので、事故の「当事者」は複数存在することになります。
交通事故の当事者には、法律上様々な義務が課せられます。義務に違反すると、刑事上や行政法上の罰則対象にもなり得ます。よって、自分自身が当事者に該当するかどうかは、とても大切な概念なのです。
当事者は、その過失割合に応じて「第一当事者」と「第二当事者」に分けられます。複雑な事情の事故になれば、「第三当事者」が存在することもあります。
それでは、当事者の中で、誰が「第一当事者」になり、第一当事者はどのような義務を負うのでしょうか。
この記事では、交通事故の当事者とは何か?第一当事者をはじめ、第二当事者や第一発見者など、一般の生活の上ではあまり馴染みのない交通事故の用語について解説します。
実は、交通事故が起こった場合、交通事故の関係者は全て当事者になります。
道路交通法第72条第1項には、交通事故の当事者が事故直後に行うべき義務が規定されています。
それは、以下の4つです。
これらの義務は、被害者の身体生命の救済のため、社会や公共の安全を確保するため、という意味合いがある重要な義務です。したがって、当事者が義務を果たさない場合、刑事上や免許の加点を含む罰則が課されることもあります。
運転停止義務、救護措置義務、危険防止措置義務、警察への事故報告義務は、加害者、被害者の別を問わず、またそれぞれの過失割合に関わらず課せられます。
たとえば、交通事故をおこして、負傷者を救護せずその場を去ってしまう、いわゆるひき逃げは、法律上の救護措置義務違反または危険防止義務違反として5年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
(また、負傷者に死亡や傷害があった場合、過失運転致死傷罪、危険運転致死傷罪、殺人罪などが付加され、非常に重い罪となります)
事故を起こしてしまった場合、まず、直ちに運転を停止し、相手が負傷しているかどうかを確認します。
もし負傷していた場合、負傷者を道路わきなどに移し、安全を確保します。自分の車も路肩などに寄せて、身の安全を確保して下さい。
道路上で後続の車にはねられるなどの二次災害、三次災害を防ぐためです。
次に、負傷者の意識の有無を確かめましょう。大きな声で呼びかける、肩をたたくなどをして負傷者の反応をみます。そして、負傷者の傷の大小にかかわらず、救急車を要請して救援を待ちます。
もし意識がない場合は、救急隊員の電話口の指示に従いながら、人口呼吸、止血、心臓マッサージなど、とりうる救命措置をしましょう。事故後数分の措置の違いが、その後の生存確率を上げるために重要であると言われています。
警察に通報すべき事項は、道路交通法上以下の5つと定められています。
通報は「直ちに」「必ず」することが求められていますので、仮に相手方が不要だと言った場合や、軽度の事故だと判断した場合でも、すぐに110番通報しましょう。
「第一当事者」とは、交通事故の当事者の中で、最も過失割合が重い人のことを意味します。
道路交通法により、他人の財産、身体、生命を傷つけてしまった当事者は、相手方に対してその損害を賠償する義務を負います。しかし、交通事故の多くの場合、どちらか一方のドライバーだけに過失があるわけではなく、もう片方のドライバーにも過失が見られることがあります。
こういった場合、損害賠償をする側の当事者としては、相手方の過失部分を除いた部分について損害賠償をすればよいことになります。この過失部分の分配を「過失割合」と呼んでいます。
第一当事者は、この過失割合が相手方に比べてより大きい当事者を指します。
では、もし過失割合が同程度である場合、「第一当事者」はどのように判断すればよいでしょうか。
この場合、人身障害の大きさで判断することになります。人身傷害の最も軽い人を「第一当事者」とするのです。
「第二当事者」とは、当事者の中で「第一当事者」の次に過失が重い人を意味します。
例を挙げると、赤信号を無視して交差点を右折した自動車Aが、青信号を直進して来た自動車Bと接触事故を起こしたとします。この場合、Bのドライバーが「第二当事者」となります。
赤信号を無視して右折した自動車Aが一方的に悪いようにもみえますが、運転者には道路交通法上、交差点を交通する際にはできるだけ安全な速度と方法で走行することが求められています。
直進した自動車Bがそれほどスピードを出していなければ接触事故は避けられたという場合、自動車Bのドライバーにも一定の過失割合が認められるのです。
通常、信号無視という明確な過失がある自動車Aのドライバーの方に重い過失割合が認められるので、この場合において自動車Bのドライバーは第二当事者となります。
第二当事者は、事故の被害者であるという意識が強くなりがちです。しかし、見出し1で解説した当事者の義務は、過失の有無を問わず課されます。第二当事者であってもしっかりこれを認識し、対応するようにしましょう。
被害者といえども、この義務を怠ると、任意保険の免責事由に該当します。その結果、第一当事者から受けた損害について支払われる金額が減額になったり、支払われなくなったりすることもあるので、注意しましょう。
なお、第一当事者、第二当事者という言葉は、法律上の言葉ではありません。しかし、内閣府や警察庁などが統計データを発表する際の区分としてよく使用するため、ニュースなどでもよく転用されます。
最後に、交通事故の「第一発見者」とは、事故現場に居合わせて事故を目撃した最初の発見者のことです。
道路交通法上の4つの義務は、当事者または同乗者にのみ課せられ、第一発見者には義務はありません。
しかしながら、当事者が負傷していたり激しく動揺していたりする場合など、当事者自身での通報が難しい場合もあります。その場合は、人命にも関わりますので、目撃者が直ちに110番、119番に通報することが望ましいです。事故現場の住所を落ち着いて正確に伝えることが必要です。
警察が来ると、調書作成のために目撃情報の事情聴取がありますので、協力しましょう。また、負傷者の救命活動は一刻を争う問題ですので、人道上の観点から救命活動に積極的に協力しましょう。
車社会では、いつ自分も第一発見者になるか分かりません。消防署などで心臓マッサージの講習も受けられますので、相互扶助の観点で助け合いたいものです。
交通事故の「第一当事者」は、最も過失が重いか、最も人身傷害が軽い人のことで、「第二当事者」は「第一当事者」に準ずる人のことです。
「第一発見者」の方がすべきことは、事故による被害の拡大を食い止めるために、通報と救命活動に協力することです。
交通事故の当事者、発見者になったら、それぞれの義務を認識したうえで、速やかに行動するように心がけましょう。