交通事故の示談交渉で保険会社が低額な慰謝料を提示する理由

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交通事故で加害者側の任意保険会社と示談交渉を始めると、保険会社は相場よりも非常に低い金額の賠償額を提案してきます。慰謝料も例外ではありません。

その提案が適正な金額だと信用して示談に応じてしまえば、本来受け取ることができる賠償額よりも非常に安い金額しか受け取ることができなくなります。

なぜ、このようなことが起こるのでしょうか?

この記事では、次の点を説明しています。

  • 交通事故の示談交渉で保険会社が低額な慰謝料を提示してくる理由は何か?
  • 本来の適正な金額とは何か?
  • 保険会社が低額な金額を提示してきたときの対応策とは?

交通事故の示談交渉で保険会社が低額な慰謝料を提示する理由

交通事故の示談交渉は賠償金額を決めるための話し合いです。

交通事故に限らず、お金の話合いでは、支払う側はできるだけ安い金額から交渉をスタートさせます。

任意保険会社は営利企業なので、支払う額をできるだけ安くおさえることも仕事のひとつです。

本来支払うべき適正な金額よりも低い金額を提案して、もしも被害者が納得してくれれば、適正な金額との差額が保険会社の利益となるわけです。

保険会社は被害者の無知に乗じて利益を確保しているとも言えるわけです。

保険会社が提示してきた金額だから、まさか間違いはないだろうと信用してしまえば、相手の思う壺です。

保険会社の提示額は、あくまで支払う側の希望金額に過ぎません。

ここでは、次の2つのポイントを押さえておきましょう。

  • 保険会社の提示額は、本来の適正な金額ではない
  • 保険会社の提示額は、保険会社の希望額に過ぎない

本来の適正な慰謝料額(賠償額)とは何か?

では本来の適正な賠償額とは一体どのような金額でしょうか。

示談交渉という当事者の話し合いで金額の決着がつかないときに、それを最終的に決める権限を持つのは裁判所だけです。

したがって裁判所が認める賠償額だけが、本来の適正な賠償額ということになります。

では、裁判所の適正な賠償額はどのようにして知ることができるのでしょうか。

実は、過去の裁判例を集めて分析し、基準化された金額が書籍で公表されています。

裁判所が使う基準なので「裁判基準」とか「裁判所基準」と呼ばれます。

また、裁判や示談交渉において弁護士が使う基準でもあるので「弁護士基準」とも呼ばれています。

この弁護士基準を公表している書籍はひとつではありません。

同じく裁判所で使う基準なのに、複数の書籍があるというのは不思議に思われるかもしれませんが、地域の特性や利用者の違いに応じて工夫がこらされているのです。

次のふたつが代表的なものです。

・通称「青本」正式名「交通事故損害額算定基準」(日弁連交通事故相談センター本部編集発行)

この「青本」は、全国で利用されることを前提に、あえて幅のある基準金額を掲載しており、弁護士以外にも利用しやすいように基準の考え方、使い方も比較的詳しく説明してくれています。

・「赤い本」正式名「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準」(日弁連交通事故相談センター東京支部編集発行)

この「赤い本」は、東京地裁民事第27部(民事交通部)の裁判官の意見を反映して作成されており、事実上、東京地裁の考え方を示すものとして実務のスタンダードとなっています。ただし、弁護士など専門家のハンドブックとしての性格が強いため、詳しい説明は省略されており、一般の方が読んですぐに理解できる内容ではありません。

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ここで、押さえておいていただきたいポイントは次の2つです。

  • 本来の適正な金額は、弁護士基準(裁判所基準)だけである
  • 弁護士基準(裁判所基準)は公開されており、誰でも知ることができる

任意保険基準とは何か?

示談交渉で保険会社が提示する金額は、「任意保険基準」とか「保険会社基準」などと呼ばれる基準に基づく数字です。

保険会社は言うまでもなく大企業ですので、担当者が勝手な数字をバラバラに提案するはずがありません。必ず、その保険会社の内部の査定基準にしたがって計算した数字を提案してきます。

当然ですが、利益を確保するため、その基準は弁護士基準よりも低い金額で設定されています

保険会社基準は、あくまでその会社の内部基準に過ぎませんから、公表されているわけではありませんし、被害者がその内容を知る必要は一切ありません。

なぜなら、示談交渉で保険会社が提示する金額は、必ず弁護士基準よりも低いので、検討にも値しないからです。

示談交渉においては、保険会社の提示額は、頭から無視してかまわない数字と言って過言ではありません。

ここでのポイントは2つを押さえておいてください。

  • 保険会社基準は、保険会社の内部の基準に過ぎない
  • 保険会社が提示してくる金額は検討にも値せず、無視してよい

自賠責基準とは何か?

もう一つ「自賠責保険基準」というものがあります。

これは賠償額全体のうち、自賠責保険から支払われる金額を計算する基準です。

自賠責保険は、被害者を救済するため、自動車の保有者に加入が義務づけられた保険です。そのため補償される金額は法令(※)によって定められた最低額となっています。

※「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」(平成13年金融庁・国土交通省告示第1号・平成14年4月1日施行)

被害額が自賠責保険の限度額を超えるときには、その超過部分は任意保険によってカバーされます。いわゆる二階建て方式です。

自賠責基準の金額は最低保障なので、当然に弁護士基準よりも低い金額で設定されています。自賠責基準の金額は、弁護士基準で計算された適正な賠償額の一部に過ぎないのです。

他方、保険会社基準は自賠責保険の基準よりは高いと言われています。

ところが実際には、保険会社が被害者の無知に乗じて、この自賠責基準の金額があたかも適正な数字であるかのように提案してくるケースや自賠責保険の金額に毛が生えた程度の数字を提案してくるケースがあるのです。

つまり、その会社の内部基準よりも、さらに低い金額を提示するわけです。

自賠責基準の金額は、当然に自賠責保険から支払われることが予定されている金額ですから、その金額で示談をまとめてしまえば、保険会社は全く懐が痛まないことになるからです。

ここで弁護士基準と自賠責基準の慰謝料の金額がどのように違っているか、主な数字をご紹介します。

入通院慰謝料(※)

通院1ヶ月通院2ヶ月通院3ヶ月入院1ヶ月、通院1ヶ月
弁護士基準28万円52万円73万円77万円
自賠責基準10万0800円20万1600円30万2400円22万6800円
入院2ヶ月、通院3ヶ月入院3ヶ月、通院6ヶ月
弁護士基準154万円267万円
自賠責基準55万4400円98万2800円

※通院は週3回(月12回)とし、他覚所見のないむち打ち症や軽度の打撲等を除く傷害の数字です。

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料の相場】(単位:万円)

等級自賠責基準裁判基準
第1級1100万円2800万円
第2級958万円2370万円
第3級829万円1990万円
第4級712万円1670万円
第5級599万円1400万円
第6級498万円1180万円
第7級409万円1000万円
第8級324万円830万円
第9級245万円690万円
第10級187万円550万円
第11級135万円420万円
第12級93万円290万円
第13級57万円180万円
第14級32万円110万円

弁護士基準と自賠責基準の慰謝料の金額が、驚くほど違うことが、ご理解いただけたと思います。

ここでは次の3つのポイントを覚えてください。

  • 自賠責基準は、最低限の保障金額に過ぎない
  • 自賠責基準は、適正な賠償額の一部に過ぎない
  • 保険会社は、あたかも自賠責基準が正しい金額のように提示してくる場合がある

弁護士基準の慰謝料を計算してみる

では示談交渉で弁護士基準による適正な賠償額を認めさせるには、どのようにすれば良いのでしょうか。

ポイントは2つです。

第1に、被害者側が弁護士基準に基づいた損害額を計算して保険会社に要求することが必要です。保険会社は決して、進んで弁護士基準による計算をしてはくれないからです。

そのためには、自分の被害に関する弁護士基準の内容と計算方法を知らなければなりません。

現在では、ネットの情報を含め、被害者向けの書籍や、新人弁護士向けの書籍が充実しており、一般の方でも、弁護士基準の数字や考え方の概要を知ることは困難ではなくなりました。

第2に、弁護士基準での賠償額が受け入れられないのであれば、調停や訴訟という法的手続を必ずとる姿勢を示すことです。

訴訟になれば、必ず弁護士基準での賠償額が認められます。また調停は話合いですが、仲介をする調停委員会は弁護士を含む調停委員と裁判官で構成されますので、弁護士基準を前提に話し合いを進めてくれます。

もちろん調停には強制力はないので、保険会社が調停の段階で弁護士基準の金額まで譲歩するかどうかは事案次第ですが、裁判所外で交渉をしていたレベルよりは増額に応じることが通常です。

被害者に、これらの手続に訴えられてしまうと、保険会社は、結局は増額しなければならないので、そうならない段階で折れることも考えざるを得ません。

話がまとまらなければ法的手段に訴えるという姿勢が真剣であることを、担当者に理解させる必要があるのです。

ポイントをまとめましょう。

  • 自分で賠償額を弁護士基準で計算し、保険会社に請求する
  • 弁護士基準を受け入れないなら、訴訟や調停に訴える姿勢を強く示す

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ご自分の交通事故で「弁護士基準の慰謝料相場」を調べたい方は、慰謝料相場シミュレータをご利用ください。

通院期間や後遺障害等級を入れるだけで、自分の慰謝料相場を弁護士基準で計算することができます。

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適正な慰謝料を認めさせる最も有効な方法

さて、上記2つのポイントを押さえたとしても、被害者だけによる示談交渉で弁護士基準での賠償金を保険会社に認めさせることは、簡単なことではありません。

理由は3つあります。

1つめには、一般の方が書籍やネット情報でどんなに熱心に勉強しても、弁護士基準の計算方法などを、きちんと理解するのはなかなか難しいからです。

これは仕方のないことであって、ベースとなっている損害賠償の法律論を理解していないと本当にはわからない部分が多いからです。

2つめは、被害者側が弁護士基準について勉強しても、頭に入れた知識と、その知識を使って相手と交渉をすることは別だからです。

素人がいくら医学書やネット情報で盲腸の手術方法を勉強したからといって、実際の盲腸の手術ができないのと同じであり、付け焼き刃の知識には、どうしても限界があるのです。

しかも、交渉相手は交通事故の示談交渉を毎日行っているプロです。知識量、経験量に天地の違いがあります。

3つめは、被害者が調停や訴訟の手続きをとる姿勢を示しても、保険会社から、実際には手続を取らないだろう、ただのブラフだろうと見透かされたり、本当に訴訟や調停となってから弁護士基準で検討すれば良いと高をくくられてしまうことがあるからです。

このように考えると、示談で適正な賠償額を認めさせるには、保険会社との話し合いの段階から弁護士に交渉を任せることが最も効果的であることがわかります。

弁護士であれば弁護士基準に基づいた金額で請求をすることは当然ですし、保険会社側が譲歩しなければ、すぐに訴訟を起こすことができますから、保険会社としても真剣に対応せざるを得ないからです。

ここのポイントは4つです。

  • 弁護士基準の内容について、一般の方が、きちんと理解することには限界がある
  • 付け焼き刃の知識で、示談交渉のプロと渡り合うのは困難
  • 法的手続をとる姿勢を示しても通用しないときがある
  • 弁護士基準の賠償額を認めさせるには、弁護士に交渉を任せることが最も効果的

慰謝料大幅アップした裁判例

弁護士の仕事は、たんに弁護士基準で計算した数字を要求するだけではありません。弁護士基準よりも賠償額を増額させることが重要な仕事です。

例えば、次の裁判例をご覧ください。

裁判例

頸椎と膝関節の神経症状(首、肩、両膝の痛み)で併合14級を認定された会社員(男性・32歳)の後遺障害慰謝料につき、裁判所は14級の弁護士基準110万円の2倍以上となる250万円を認めました。

後遺障害慰謝料を増額した理由は次のとおりです。

  • 障害のために会社は勤務体系を変更してくれたが、他の社員の負担が増え、人件費も増えるという問題を生じてしまっただけでなく、障害を理由として休暇を希望したときに不満や反発を招いてしまったため、退職せざるを得なくなった
  • 退職は事故を直接の原因とするものではないが、退職に事故が原因を与えた事実は否定できないので慰謝料算定に考慮するべき
  • 症状固定後も、施術費を自己負担してでも疼痛を軽くしたいと通院しており、症状が重い
  • 被害者には落ち度がないうえ、加害者側であるタクシー会社は誠実でない対応をしていた
    (東京地裁平成16年2月27日判決・交通事故民事裁判例集37巻1号239頁)

後遺障害慰謝料の弁護士基準は、あくまで相場金額、目安でしかありません。裁判では、弁護士基準をたたき台として、諸般の事情が総合考慮されます。

上の裁判例では、慰謝料増額の理由として、被害者の退職をめぐる経緯が指摘されています。

裁判所に、このような事実を認定してもらうためには、被害者側が退職に至る詳細な経過を丹念に主張し、それを証拠で裏付けることが必要です。

交通事故をめぐる様々な事実の中から、賠償額を増額させる要因となる事実を拾い出し、証拠を集めて裁判所に提出する、このような判断と作業は、法律と裁判の専門家である弁護士でなくては適確に行うことはできません。

弁護士に依頼すると、慰謝料を含む賠償額が増額すると言われるのは、このような理由からです。

最後のポイントはひとつです。

  • 賠償額を弁護士基準よりもさらにアップさせることが弁護士の役割

まとめ

示談交渉で保険会社から賠償額の計算書を受け取ったら、まずは、その計算書を持参して弁護士に相談してみることです。

交通事故に強い弁護士であれば、その計算書がどれだけ不当な内容なのか、たちまち明らかにしてくれることでしょう。

交通事故に強い弁護士に無料相談できます

  1. 保険会社が提示した示談金・慰謝料に不満だ
  2. 事故の加害者・保険会社との示談交渉が進まない
  3. 適正な後遺障害等級認定を受けたい

弁護士に相談することで、これらの問題の解決が望めます。
保険会社任せの示談で後悔しないためにも、1人で悩まず、今すぐ弁護士に相談しましょう。

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