友人の車・借りた車で交通事故!被害者の賠償請求先はどこ?
交通事故の加害者が、友人・知人や親戚が所有する車を借りて運転していたら、被害者は誰に責任を追及すれば良いのでしょう?…[続きを読む]
人身事故が起こると、運転者だけでなく同乗者にも責任が生じる可能性があります。
同乗者が怪我をした場合、運転者に対して賠償金を請求できる可能性もあります。
この記事では、同乗者がいる場合の交通事故に関するさまざまな疑問や、助手席の友人が急ブレーキでむちうちになった場合や、むちうちの慰謝料相場についてはどうなるか、帰る・逃げた場合の可能性など、事故後の対応について解説します。
目次
交通事故を起こしたときに急ブレーキで助手席や後部座席に乗っていた家族や友人などがむちうち症状などのけがをしたら、同乗者のけがについて運転手に責任が及ぶのでしょうか?
運転手の過失によって交通事故が発生したのであれば、運転手に責任が発生します。
運転手の「不法行為」によって同乗者をけがさせたことになるからです。運転者は同乗者へ損害賠償金を払わねばなりません。
刑事的にも運転者には「過失運転致傷罪」や「危険運転致傷罪」が成立する可能性があります。
さらに急ブレーキを原因とした人身事故として届け出を出せば、同乗者のけがの程度に応じて運転手の免許の点数が加算されます。
今度は逆に助手席側に問われる責任を解説します。
同乗者は運転をしていなくても、相手被害者に対する損害賠償責任が発生するケースがあります。
それは同乗者が事故発生に寄与している場合です。たとえば以下のような場合、同乗者にも損害賠償責任が発生する可能性が高くなります。
同乗者に損害賠償責任が発生する場合、運転者と同乗者の責任の関係は「連帯債務」となります。もちろん、逃げても警察にバレてしまいます。
同乗者も運転者も同じだけの賠償義務を負うので、両方とも被害者へ全額の賠償金を払う必要があります。「同乗者だから半額しか支払いません」などと主張することはできません。
同乗者は運転していないので、過失運転致死傷罪や危険運転致死傷罪の刑事責任は発生しません。
ただし飲酒運転を知りつつ同乗していた場合、道路交通法によって3年以下の懲役または50万円以下の罰金刑が適用される可能性があります。
また、同乗者の運転免許の点数が加算(行政処分)される可能性もあります。
人身事故で、同乗者が車の所有者の場合、同乗者が危険な運転や飲酒運転を助長していなくても責任が発生する可能性があります。
一般に車の所有者には自賠法にもとづいて「運行供用者責任」という責任が発生するからです。運行供用者責任とは「車の運転を支配し、利益を受けている人」に発生する責任です。通常、所有者は運行供用者に該当すると考えられています。
そこで同乗者の車を借りて他の人が運転していて事故を発生させた場合、所有者である同乗者は被害者へ損害賠償金を払わねばなりません。
助手席側がドアを開けたために後ろから来た自転車やバイク、歩行者などに当たって交通事故が発生したら、誰の責任になるのでしょうか?
この場合には、直接の行為者である同乗者だけではなく、運転者にも責任が発生する可能性が高くなります。
確かに運転者が自分でドアを開けたわけではありませんが、道路交通法上「運転者は同乗者のドアの開閉についても安全に配慮しなければならない」とされているからです(道路交通法71条4の3)。運転を行い車の運行を支配している以上、運転者は同乗者によるドアの開け閉めにも配慮する必要があります。
そこで運転者が被害者に損害賠償金を払わねばなりません。
人身事故で、同乗していた家族が助手席で急ブレーキなどでむちうちなどのけがをした場合に、誰の保険が適用されるのか、慰謝料は誰からどのくらい支払われるのか、減額されないのかなど、みていきましょう。
むちうちの怪我をした同乗者も「自賠責保険」は通常通りに適用されます。
自賠責保険は被害者を救済するためにもうけられている強制加入の保険であり、交通事故でけがをした以上「被害者」として救済される必要があるためです。
交通事故で被害者が同乗していた家族の場合、運転者が加入している「対人賠償責任保険」は適用されません。
対人賠償責任保険では「被保険者やその家族」に対する損害賠償金は補償されない契約になっています。
被保険者本人と被害者が家族の場合、生計を同一なので賠償金を払い合う意味がないからです。
ただし親族とは言っても兄弟姉妹や甥姪、叔父叔母、いとこなどの関係であれば対人賠償責任保険が適用されます。
同乗者が家族だった場合に使える保険として「人身傷害補償保険」「搭乗者傷害保険」があります。
これらの保険は、被保険者や同乗者、家族が交通事故に遭ったときに適用されるものです。
人身傷害補償保険では、被害者に実際に発生した損害を計算して保険金が支給されます。搭乗者傷害保険の場合には、入院1日〇〇円、通院1日〇〇円、骨折したら〇〇円などの「定額計算」によって保険金が支払われます。
家族を車に乗せていて事故を起こした場合には、これらの保険に入っていないか確認して忘れずに請求しましょう。
車に同乗していた子どもや妻など家族が事故でむちうちになった場合、慰謝料や損害賠償金はどのくらい相場として払われるのでしょうか?
この場合、むちうちになった同乗者が「家族だから」という理由で相場から減額されることはありません。
また妻と子どもなど家族が複数同乗していた場合、全員に対してそれぞれ慰謝料などの賠償金が支払われます。
さらに交通事故の相手と過失が大きい運転者の自賠責保険が両方適用される場合、自賠責保険の限度額は2倍になります。
具体的なむちうちになった場合、骨折した場合などの慰謝料の計算や相場は、当サイトの慰謝料計算機をおすすめします。
特に同乗していた子どもが交通事故でけがやむちうちになって、学校や習い事、予定していた旅行に行けなくなるなどさまざまな損害が発生する可能性があります。
そのような被害についても相手に賠償を求めることができるのでしょうか?
交通事故によって賠償される損害の範囲は「事故と相当な因果関係のある損害」です。「事故と相当な因果関係」を法律的には「相当因果関係」と言います。
裁判例では「交通事故によって旅行をキャンセルした場合、キャンセル代と事故には相当因果関係が認められ損害賠償の範囲に含まれる」という判断が定着しています。
また仕事をしている人が交通事故で仕事を休んだら休業損害を請求できることからしても、子どもが学校や習い事に行けなくなって発生した損失分も賠償範囲に入ると考えられます。
同乗者が旅行に行けなくなった場合のキャンセル代、習い事や学校に行けずに無駄になった費用、学費については、相手に請求できると考えましょう。
急ブレーキなどをして交通事故発生し、その後、同乗者はどのような対応をすれば良いのでしょうか?
たとえば同乗者も被害者に謝罪したりお見舞いに行ったりする必要があるのか、事故現場で同乗者も実況見分に立ち会うべきかなど、ご説明します。
同乗者も被害者にお見舞いをすべきか、謝罪すべきか考えてみてください。
そもそも、お見舞いは法的な義務ではなく「気持ち」として行うものです。そして運転者と同乗者が家族の場合、被害者側としては運転者と家族を同一視するものです。それであれば、同乗者もお見舞いに行くべきですし謝罪すべきと考えられます。
ただお見舞いのお品を渡す場合などには、家族全体で1つのお品にまとめてもかまわないでしょう。
連名などで贈りましょう。現実にご自宅や病室を訪ねる際にも、時間が合えばできれば一緒に伺うのが良いですが、どうしても同乗者の都合がつきにくければ運転者に任せてもかまいません。
ただし同乗者がドアを開けたことによって事故が発生したケースなどでは、同乗者の責任が大きいので自ら積極的にお見舞いに行き、謝罪しお詫びの言葉をかけるべきです。
道路交通法上、事故の当事者にはすぐに警察を呼ぶ義務があり、警察がやってきたら実況見分に立ち会います。
同乗者は実況見分に立ち会わずに先に帰ることを選んでも良いものでしょうか?
道路交通法上の規定を見ると、被害者への救護義務や警察への通報義務は、運転者だけではなく「同乗者」にも課されています(道路交通法72条1項)。そして実況見分の際には交通事故に関する正確な状況を伝えなければならないので、同乗して様子を見ていた同乗者もその場で警察官に話をすべきです。
「同乗者だから先に帰るのは良い」というものではなく、きちんと警察への通報を行い実況見分に立ち会って、手続きが終了してから帰宅すべきです。
交通事故が起こったとき、同乗者の関係で対応に迷うことがあるものです。
同乗者とトラブルが起こったら、一度弁護士に相談してみてください。