バイク事故の被害者の方へ!示談金の相場をわかりやすく解説
「バイク事故」と言っても、バイクで歩行者や自転車をはねてしまった事故、バイクで転倒した単独事故、四輪車に衝突した事故…[続きを読む]
東京都内でのバイクと自動車の事故の中でも特に多いのは、交差点で右折する車両と対向車線を直進するバイクとの衝突事故です(※)。このタイプの事故を右直事故と呼びます。
自動車運転手が、走行する自動車に注意を払っている際に、バイクがその盲点から現れ、衝突してしまう場合が多いのです。
バイクは自動車と比較して機動性が高く、車体がコンパクトであるため、自動車の運転手による見落としによって事故が発生しやすいのです。
このような右直事故の場合、自動車とバイクの過失割合はどのように考えればよいのでしょうか?どっちが悪いと言えるのでしょうか?過失割合は、交通事故による損害賠償額に大きく影響する要素の一つであり、被害者としては非常に気になるところです。
この記事では、バイクと自動車の右直事故において、事故の状況に応じた過失割合の目安について解説します。また、10対0や9対1のようなケースが存在するか、速度超過があった場合の影響、信号の変わり目における責任の判断などについても説明します。
なお、バイク事故の慰謝料や示談金については、下記記事をご参照ください。
また、バイク事故の被害に遭った方は、まずは交通事故の法律問題のバイク事故に強い弁護士に相談されるべきでしよう。
※二輪車の交通死亡事故統計(令和元年中)|警視庁
目次
まず、信号機により交通整理の行われている交差点での右直事故における過失割合の目安をご紹介します。
ポイントになるのは、車両が交差点に進入した際の信号機の色です。また、同じ態様の自動車同士の事故と比較して、過失割合は若干、バイク側に有利に修正されています。
以下は、交差点で直進するバイクと自動車が右折する際に起きた事故の過失割合の目安です。
各車両が交差点に進入した時の信号機の色によって、過失割合が変わります。
双方が青信号で交差点に進入して起きた事故では、15(バイク):85(自動車)が過失割合の目安になります。こういった場合は、100対0(10対0)になるケースは少ないでしょう。
双方が黄信号で交差点に進入して起きた事故では、30(バイク):70(自動車)が過失割合の目安です。こういった場合についても、100対0(10対0)になるケースは少ないでしょう。
双方が赤信号で交差点に進入して起きた事故では、40(バイク):60(自動車)が過失割合の目安です。
直進するバイクが赤信号を無視して交差点に進入し、自動車が青矢印信号で右折しようとして起きた事故では、直進100(バイク):0(自動車)が過失割合の目安です。
動いている車同士の事故で10対0になることはないと言われがちですが、こういった場合は10対0になる可能性があります。
青信号に従って進行した車両と赤信号無視の車両との事故になるため、100%信号無視をしたバイクに過失のある事故となるのです。
バイク直進・ 自動車右折事故の信号機の色 |
過失割合の目安 |
---|---|
双方青信号 | 15(バイク):85(自動車) |
双方黄信号 | 30(バイク):70(自動車) |
双方赤信号 | 40(バイク):60(自動車) |
直進バイク赤信号 右折自動車青矢印信号 |
直進100(バイク):0(自動車) |
次に、交差点で右折するバイクと直進する自動車に起きた事故の過失割合の目安です。
同様に、交差点に進入した時の信号機の色で過失割合が変わります。
双方が青信号で交差点に進入して起きた事故では、70(バイク):30(自動車)が過失割合の目安です。
同じ状況でも自動車右折の場合と比較して、バイク右折の場合には、右折車(バイク)の過失は15%軽くなっています。
双方が黄信号で交差点に進入して起きた事故では、50(バイク):50(自動車)が過失割合の目安になります。
ここでは、自動車右折の場合と比較して右折車のバイクの過失は20%軽くなっています。
双方が赤信号で交差点に進入して起きた事故では、40(バイク):60(自動車)が過失割合の目安です。
双方が赤信号での進入の場合には、自動車が右折と同様の過失割合になっています。
直進する自動車が赤信号を無視して交差点に進入し、バイクが青矢印信号で右折しようとして起きた事故での過失割合の目安は、0(バイク):100(自動車)(10対0)です。
先ほど説明したとおり、このケースは青信号に従った車両と信号無視をした車両との衝突事故ですから、赤信号を無視して交差点に進入した自動車に100%過失のある事故となります。
バイク右折・自動車直進事故の信号機の色 | 過失割合の目安 |
---|---|
双方青信号 | 70(バイク):30(自動車) |
双方黄信号 | 50(バイク):50(自動車) |
双方赤信号 | 40(バイク):60(自動車) |
直進自動車赤信号・右折バイク青矢印信号 | 0(バイク):100(自動車) |
実際によく起こるのは、信号の色の変わり目で交差点に進入する際の事故ですが、その場合の過失割合の目安は、以下のとおりです。
青信号で交差点に進入したものの対向車のため右折できないまま交差点内に待機した後、黄信号になり右折を開始したところ、同じく黄信号で交差点に進入してきた対向直進車と衝突した事故の過失割合の目安です。
黄信号という信号の色の変わり目で直進するバイクと青から黄に変わった時点で右折する自動車に起きた事故では、60(バイク):40(自動車)が過失割合の目安となります。
双方黄信号での進入のケースとは違い、直進するバイクの過失は、かなり大きいものになっています。
これは、実情として、右折待機車は、赤信号に変わる直前の黄信号で右折を開始せざるを得ないことを考慮して、直進車より右折車を有利に扱うためです。このことは、バイク右折・自動車直進のケースでも同様です。
信号の変わり目で、バイクが青から黄に変わって右折、自動車が黄信号で交差点に進入して起きた事故では、25(バイク):75(自動車)が過失割合の目安です。
右折車が青信号で交差点に進入後、なかなか右折できずにいたところ赤信号になってやっと右折を開始したところに、赤信号で交差点に進入した直進車と衝突した事故の過失割合の目安です。
信号無視で直進するバイクと自動車が青信号で交差点に進入し赤信号で右折する際の事故は、80(バイク):20(自動車)、つまり8対2の過失割合が目安となります。
直進車黄信号進入の場合と比較して、更に直進車の過失割合は重く設定されています。
その理由は、実情として、右折待機車は直進車の信号が赤信号にならないと右折できないことから、赤信号同士の事故でも、直進車より右折車を有利に扱っているためです。このことは、交差点で右折するバイクと直進する自動車の事故でも同様です。
青信号で交差点に進入し赤信号で右折するバイクと信号無視で直進する自動車の事故では、90(自動車):10(バイク)、つまり9対1が過失割合の目安となります。
右折車が黄信号で交差点に進入し一旦待機後、赤信号になり右折を開始した際に、赤信号で交差点に進入した対向直進車と衝突した事故の過失割合の目安です。
信号無視で直進するバイクと黄信号で交差点に進入し赤信号で右折する自動車との事故では、60(バイク):40(自動車)が過失割合の目安となります。
青信号での交差点進入右折車より、黄信号での交差点進入右折車の優先度は下がるため、右折車の過失は、かなり重く設定されています。これはバイク右折・自動車右折のケースでも同様です。
黄信号で交差点に進入し赤信号で右折するバイクと信号無視で直進する自動車の事故では、20(バイク):80(自動車)が過失割合の目安となります。
それでは、次に、信号機による交通整理の行われていない交差点での右直事故の過失割合について、見ていきましょう。
直進するバイク直進と右折する自動車の事故では、15(バイク):85(自動車)が過失割合の目安となります。
信号機のある交差点で双方青信号で進入した事故と同じ過失割合です。
右折するバイクと直進する自動車の事故では、70(バイク):30(自動車)が過失割合の目安となります。
信号機のある交差点でのバイク直進・自動車右折時の事故と同じ過失割合です。
信号機のない交差点での状況 | 過失割合の目安 |
---|---|
バイク直進・自動車右折 | 15(バイク):85(自動車) |
バイク右折・自動車直進 | 70(バイク):30(自動車) |
これまで示してきた過失割合は、あくまでも事故の類型ごとの過失割合の目安に過ぎません。
実際に過失割合を決めるときには、この過失割合の目安をベースとして、速度超過など個別の事故における特殊事情を加味して過失割合を修正することが必要になります。以下は、右直事故における過失割合の修正要素の典型例です。
右折車に不利に働く修正要素としては、
などです。こうした事情のあるときは、右折車に対して、概ね5%~10%の範囲で不利に過失割合を修正します。
直近右折とは、直進車の至近距離での右折をいいます。
また、早回り右折とは交差点の中心の内側を進行しない右折であり、大回り右折とは、逆に、あらかじめ道路の中央に寄らないで右折することを意味します。
その他の著しい過失・重過失の典型例は、時速15㎞以上のスピード違反(速度超過)、スマホ・カーナビ画面注視、酒気帯び・酒酔い運転などです。
直進車に不利となる修正要素の典型は、
です。修正割合は概ね10%~20%です。
既右折とは、直進車が交差点に進入する時点において、右折車が右折を完了している場合、あるいは、右折を完了しているのに等しい場合をいいます。
道路交通法50条違反の交差点進入とは、渋滞などの混雑のため前方が詰まっており、交差点に入ると交差点内で停止することになり他の車両の通行を妨害するおそれがあるのに、それに反して交差点に進入することです。
このような状況では、通常、右折車としては、直進車の交差点内の進入を予測しないため、直進車の不利に修正されます。
自動車が渋滞中の交差点で、自動車の左側をすり抜けて直進するバイクが右折する自動車からは対向車に隠れて見えずらく、事故が誘発されることがあります。
この場合の「バイク:自動車」の過失割合の目安は「30:70」です。
すり抜て、直進するバイクに不利になる修正要素としては、次のものがあります。
わき見運転などの著しい前方不注視については、10~20%、その他の著しい過失・重過失については、20%の修正となります。
修正要素として右折する自動車に不利に働くものは、特にありません。
しかし、これが交差点でない場所で起きた事故であれば、過失割合が5~10%程度自動車に不利に修正されることになります。
右折車と対向直進車との事故を右直事故といいます。
バイクは、自動車の運転手の死角になりやすいため、自動車とバイクの右直事故は比較的多いです。自動車とバイクの右直事故やすり抜け事故の過失割合の目安は、事故の類型ごとに決められており、基本的には、信号機による交通整理の有無、交差点進入時・右折時の信号機の色により過失割合は異なります。
また、最終的に過失割合を決める際には、過失割合の目安をベースとして個別の修正要素の有無・内容を加味して、修正を施します。
過失割合は、必ずしも10対0にならず、9対1や8対2になり、被害者の損害賠償額に大きく影響するものであり、保険会社と揉めることも多いです。速度超過や信号の変わり目の事故なども、よくある事案です。それぞれ納得できないことも多いでしょう。
右直事故の過失割合について不安や困ったことがあれば、すぐに交通事故に精通した弁護士に相談するようにしましょう。
なお、過失割合に納得できない!という方は下記の記事も併せてご参照ください。