自転車事故の加害者が中学生、未成年だった場合に気をつけるべきこと
自転車事故の加害者が未成年であった場合に、未成年に責任を問うことができるのか、できるとしたら誰に損害賠償請求を行うべ…[続きを読む]
学校や、スクールゾーン、住宅街、公園の近くを運転するときは、ドライバーは細心の注意を払って運転すべきです。
ただ、「道路に飛び出した子供の事故は親の責任」と考えたり、「子供が道路から飛び出してくるほうが理不尽・おかしい・ムカつく」など、被害者の神経を逆なでするような発言を繰り返す加害者もいますが、事故の解決のためにも一旦心に留めておいた方が良いでしょう。
子供が小学生以下の場合は、子供や親に責任を負わせようとするドライバーも少なくありませんが、解決は法的なルールに沿ってなされるべきです。
そういった場面に巻き込まれた場合、加害者や子どもの親はどのように対応していけばよいのでしょうか?この記事では、Yahoo!知恵袋やXなどでも話題の子供の飛び出し事故の「過失割合」の考え方を解説いたします。
目次
政府広報のサイトによれば、小学1年生の歩行中の死者・重傷者数は、小学6年生の3.6倍にもなるそうです。
また、同サイトによれば、2014年~2018年での歩行中の小学生の死者・重傷者数は、3,276人に上るとのことです。
そして、歩行中の交通事故死傷者のなかで、小学生1年生(7歳)が突出して多いという結果が、公益財団法人「交通事故総合分析センター」より公表されています。
【参考外部サイト】【出典】暮らしに役立つ情報|政府広報 「子供の歩行中の事故」|交通事故分析レポートNo.116
小学生が事故の第1・第2当事者となる歩行中の事故原因として、挙げられるものの筆頭が飛び出しです。
小学生歩行中の法令違反別死亡・重傷者の割合(2014年~2018年合計)
飛び出し | 38.9% |
---|---|
横断違反 | 17.6% |
信号無視 | 3.7% |
路上遊戯 | 3.6% |
その他 | 2.4% |
違反なし | 33.7% |
【出典】子どもの交通事故が春先に増加する。最多の「魔の7歳」、その理由とは?|くるから
子供の飛び出しがムカつく・理不尽と感じる運転者多いです。このイラつきを感じる根本は簡単です。
事故を起こしたくないという必死の思いがあるからこそ、その緊張感を乱される状況に強い怒りを感じてしまうのです。
さらに、もし事故が起きれば、たとえ子どもの飛び出しが原因でも、運転者が責められかねないという不公平感も感じる人もいます。法的にも社会的にも、常に運転者側に重い責任が課せられる現実に対する憤りが、その怒りを増幅させていると言えるでしょう。
また、「子どもだから仕方ない」「大人が我慢すべき」という周囲の反応に対しても反発を感じます。運転者の命も危険にさらされているにもかかわらず、その恐怖や不安が軽視されているように感じられるからです。
つまり、正しく運転しているのに突然危険な目に遭わされる理不尽さ、事故の際の責任の重さへの不安、そして自身の恐怖や不安が理解されないフラストレーションが、強いイラつきとなって表れると言えるでしょう。
「過失」とは簡単に言うと、当人の「不注意」の事を指します。
その不注意の度合いに応じて「過失割合」を決めています。つまり、被害者に何らかの不注意がなければ、過失も責任も認められません。
ただし、子供の飛び出し事故を考えるうえで重要な視点があります。
不注意があったと言えるためには、大前提として注意をしなければならないという事を「認識する能力」が備わっている必要がある点です。
これを法的には「事理弁識能力」と言います。
裁判所の見解では、事理弁識能力は、概ね5〜6歳の間に備わると判断しています。
ですから、子供と言っても5・6歳児以上であれば道路に飛び出してはいけない事が認識出来るだろうとして、子供でも飛び出し事故には5〜20%程度の過失割合を認めています。
ちなみに、「道路交通法でも、6歳未満の者を「幼児」、6歳以上、13歳未満の者を「児童」としています(道路交通法14上項)。
では、事理弁識能力のない子供の過失や責任は、どのように判断されるのでしょうか?
交通事故においては、車の過失が高くなりますが、かといってドライバーにすべての責任を持たせるのは酷な場合もあります。
例えば、子供がいそうもない広い幹線道路で、親が目を離した隙に、急に幼児が車の前に飛び出したような場合、車はいくら注意していても回避しきれない可能性があります。
危険が予期できる場所で、親がしっかりと幼児を監視をし、手をつなぐなどの注意を払っていなかった場合には、責任がありますし、不注意があるとして一定の過失を認めることは可能とされています。
ただし、幼児であっても、児童であっても、過失割合は減算修正されることになります。
それでは、子供の飛び出し事故の過失割合を具体的に検討してみることにしましょう。
なお、ここでの過失割合は、「別冊判例タイムズ38 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」を基にしています。
信号のある横断歩道(交差点も含む)における直進車と子供の飛び出し事故の過失割合は次の通りです。
信号の色 | 幼児の飛び出し事故の過失割合 | 児童の飛び出し事故の過失割合 | |||
---|---|---|---|---|---|
歩行者 | 直進車 | 幼児 | 直進車 | 児童 | 直進車 |
青 | 赤 | 0 | 100 | 0 | 100 |
黄 | 赤 | 10 | 90 | 10 | 90 |
赤 | 赤 | 15 | 85 | 20 | 80 |
赤 | 黄 | 35 | 65 | 45 | 55 |
赤 | 青 | 50 | 50 | 60 | 40 |
青→赤 | 赤 | 0 | 100 | 0 | 100 |
赤→青 | 赤 | 5 | 95 | 10 | 90 |
青→赤 | 青 | 15 | 85 | 20 | 80 |
黄→赤 | 青 | 15 | 85 | 25 | 75 |
安全地帯付近で信号が変わったことを想定しています。
信号の色 | 幼児の飛び出し事故の過失割合 | 児童の飛び出し事故の過失割合 | |||
---|---|---|---|---|---|
歩行者 | 直進車 | 幼児 | 直進車 | 児童 | 直進車 |
青→赤 | 青 | 15 | 85 | 25 | 75 |
黄→赤 | 赤 | 25 | 75 | 35 | 65 |
信号のある横断歩道における右折車との飛び出し事故の過失割合は次の通りです。
信号の色 | 幼児の飛び出し事故の過失割合 | 児童の飛び出し事故の過失割合 | |||
---|---|---|---|---|---|
歩行者 | 右折車 | 幼児 | 右折車 | 児童 | 右折車 |
青 | 青 | 0 | 100 | 0 | 100 |
黄 | 青 | 15 | 85 | 25 | 75 |
赤 | 青 | 35 | 65 | 45 | 55 |
黄 | 黄 | 15 | 85 | 20 | 80 |
赤 | 黄 | 15 | 85 | 25 | 75 |
赤 | 赤 | 15 | 85 | 20 | 80 |
青→赤 | 赤 | 0 | 100 | 0 | 100 |
赤→青 | 赤 | 5 | 95 | 10 | 90 |
チャートの上2つの歩行者・自動車の信号とも青のケースと、歩行者の信号が黄、自動車の信号が青のケースでは、自動車が、歩行者の進行と反対方向から左折してき場合に、歩行者に10加算修正するケースがあります。
歩行者から見て、同方向からの左折車は認識し難く、反対方向からの左折車は認識し易いからです。
信号のない横断歩道における飛び出し事故の過失割合は、次の通りです。
幼児の飛び出し事故の過失割合 | 児童の飛び出し事故の過失割合 | ||
---|---|---|---|
幼児 | 自動車 | 児童 | 自動車 |
0 | 100 | 0 | 100 |
飛び出し事故の基本の過失割合は、歩行中対自動車で、0:100 ですが、飛び出しなどがあった場合は、5%程度歩行者に加算修正されます。
しかし、歩行者が幼児・児童の場合は、それぞれ5%、10%程度減算修正されることになります。
ただし、車からは歩行者の発見が簡単ではなく、歩行者が安全を確認すれば事故を回避できた場合は、歩行者に15%程度加算修正されるケースがあります。
交差点ではなく、横断歩道のない道路で起きた子供の飛び出し事故の過失割合は、以下の通りです。
幼児の飛び出し事故の過失割合 | 児童の飛び出し事故の過失割合 | ||
---|---|---|---|
幼児 | 自動車 | 児童 | 自動車 |
20 | 80 | 25 | 75 |
基本の過失割合は、歩行者対自動車で、20:80ですが、歩行者に飛び出しがあると、10%程度換算修正されます。
しかし、幼児は10%程度、児童は5%程度減算修正されるため、上記の数字となります。
事理弁識能力が備わる前の子供の場合、事故についての証言がドライバーの証言と食い違うことが良く起こります。
例えば、ドライバーは「ぶつかる前に停止して静止しているのに、自転車がぶつかってきて、自分で倒れた」と主張し、一方、わが子は、「ものすごいスピードでクルマが走ってきて、よけきれずに跳ね飛ばされた」とまったく証言が食い違うのです。
この場合、子供に一つ一つ、具体的に質問を繰り返し、真実を親として導く必要があります。
大事なことは、「真実」を明らかにすることで、お互いによく話していけば、交通事故のトラブルも解決に向かいますが、難しい場合は「交通事故に強い弁護士」に相談する方が良いでしょう。
子供の飛び出し事故で、車側に有利な過失割合の認定がされた場合は、保険会社と再度協議する事をお勧め致します。
そして、保険会社の主張が強い場合は、個人で主張するには限界があるため、多くの場合、交通事故に強い弁護士に相談することになります。
納得のいかない過失割合だとしても、素人では、交渉に限界があり、そういうものかなと説得される可能性があるからです。
子どもの飛び出し事故は理不尽と感じたりムカつくと感じたりしますし、また避けられないですが法的な解決はできます。
車の運転手側はより安全運転を徹底しましょう。
また、子供が事故にあった場合、相手側の保険会社の言いなりになることなく、後悔しないためにも経験豊富な弁護士に相談するのが良いでしょう。
事故に遭った上、うけるべきの保証、損害賠償を獲得できずに、保険会社の言いなりになる必要はありません。わが子を守るために専門家の意見を聞きいてみましょう。