バイク事故の被害者の方へ!示談金の相場をわかりやすく解説

周りで事故に遭った人がいるライダーの方は、次のようなことが気になっているのではないでしょうか?

  • バイクで走行中の人身事故では、どのような怪我・後遺障害が多いのか?
  • 怪我・後遺障害に対する示談金の相場や、その計算方法は?

「バイク事故」と言っても、バイクで歩行者や自転車をはねてしまった事故、バイクで転倒した単独事故、四輪車に衝突した事故と、様々なパターンがあります。

そこで今回は、「バイクで走行中の事故では、どのような怪我・後遺障害が多いのか?」、「慰謝料・示談金金額相場や計算方法」などについて解説して参ります。

バイク事故での怪我をしやすい箇所

警察庁が発表している統計資料の数字を見てみましょう。

下表は「自動車に乗車中の事故」と「バイクに乗車中の事故」に分けて、受傷した身体の部位を調査したものです。

死亡事故における受傷部位の割合(2019年)

警察庁が発表している統計資料から、「死亡事故における受傷部位」の割合についてご確認ください。

赤文字になっている部分が、特に多い受傷部位です。

(単位:%) 全損 頭部 顔部 頚部 胸部 腹部 背部 腰部 腕部 脚部 その他
自動車 9.5 25.8 1.2 6.6 33.4 10.9 0.2 2.3 0.2 2.5 7.5
バイク 8.0 38.2 2.2 5.3 30.0 6.5 0.6 4.5 0.2 2.5 2.0

※ 「全損」とは、損傷が多数あり、致命傷が複数ある場合です。

負傷事故における受傷部位の割合(2019年)

次に、下表は「死亡事故以外の事故」で、損傷程度が最も重い部位の割合を示しています。

(単位:%) 頭部 顔部 頚部 胸部 腹部 背部 腰部 腕部 脚部 その他
自動車重症 7.1 3.0 23.0 29.3 5.5 1.4 8.8 10.3 11.7 0.1
自動車軽傷 2.4 1.0 80.1 3.6 0.5 0.9 6.9 2.5 2.1 0.0
バイク重症 8.6 4.4 4.1 16.1 2.4 1.6 6.7 22.6 33.4 0.0
バイク軽傷 4.2 2.9 18.8 5.7 1.2 1.0 9.4 21.7 34.9 0.0

注:「重傷」とは30日以上の治療を要する場合、「軽傷」とは30日未満の治療を要する場合です。

【出典】「令和元年中の交通事故の発生状況」(警察庁交通局)16頁・「表2-4-2・損傷主部位別・状態別死傷者数」

バイク事故で怪我をしやすい箇所

死亡事故では、自動車でもバイクでも、「頭部と胸部のケガが致命傷」となったケースが多く、特にバイクは頭部の致命傷が4割弱を占めています。

他方、負傷事故では、自動車の場合、「頚部と胸部の重傷、頚部の軽傷」が目立ちます。軽傷の8割を占める頚部軽傷は、「むち打ち症」でしょう。

ところが、バイクの場合、胸部の重症と頚部の軽傷が目立ち、さらに負傷の程度を問わず、「腕部と脚部のケガ」が多くなります。

バイクは、事故で身体が投げ出されやすいことが原因であることは容易に想像がつきます。

このように、バイク事故で怪我しやすい箇所は、脚・腕・頚・胸なのです。

バイク事故で多い後遺障害とは

後遺障害とは「怪我の治療をおこなったが、これ以上の症状の悪化はないものの、症状の改善も期待できない状態」を言います。

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残念ながら、バイク乗車中の事故で残った後遺障害を、その内容別にカウントした統計は見つけることができません。

しかし、怪我が脚・腕・頚・胸に顕著である以上、後遺障害も、これらの部位に集中しているであろうことが容易に推測できます。

バイク事故の示談金とは

示談金とは

「示談」とは、被害者と加害者(その任意保険会社を含む)との間で交渉(示談交渉)を行い、当事者の合意によって損害賠償金の金額を決めることであり、決定した金額が「示談金」です。

したがって、「示談金の相場」とは、「損害賠償金の相場」ということです。

損害賠償金の内容とは

損害賠償金の内訳は、大きくわけると「積極損害」「消極損害」「慰謝料」の3種類になります。

積極損害とは、事故によって、被害者が支出・負担を余儀なくされた経済的損失であり、具体的に言うと「治療費、付添費、介護費、通院交通費、義手・義足・車椅子等の装具費」などが代表的です。

消極損害とは、事故によって、被害者が受け取ることができなくなった利益であり「休業損害、後遺障害逸失利益、死亡逸失利益」があります。

慰謝料は、事故による精神的な損害に対する補償であり「入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料」の3種類があります。

損害賠償をめぐる3つの基準とは

また、交通事故の損害賠償金の相場には、3つの基準があります。

  1. 自賠責保険基準
    損害賠償金のうち、自賠責保険から支払われる部分の金額を決める基準
  2. 任意保険基準
    加害者側の任意保険会社と示談交渉をする際、任意保険会社側が提示してくる基準
  3. 弁護士基準(裁判基準)
    弁護士が示談交渉を担当したり、訴訟となったときに裁判所で用いられる基準

なお、任意保険基準は、その保険会社独自の内部基準に過ぎず、何の根拠もない数字ですから、無視してかまいません。

したがって、この記事でも、1.自賠責基準、3.弁護士基準(裁判所基準)についてだけ説明します。

以下、具体的に自賠責基準と弁護士基準を利用して、バイク事故の慰謝料の相場を計算して参ります。

バイク事故の慰謝料の相場とは

バイクと車の事故などによる怪我による痛みや、治療のために入院・通院をしなければならない肉体的、精神的な苦痛に対して支払われる賠償金が「傷害慰謝料」です。

入通院慰謝料とも呼ばれますが、これは入通院の期間に応じて金額が決まるからです。

また後遺障害が残った場合は、別途後遺障害慰謝料、逸失利益を請求することが可能です。

*なお、入通院の期間に応じて金額が決まるということは、被害者がバイクに乗車中の事故でも、四輪車に乗車中の事故でも、あるいは歩行者、自転車でも、みな同じということであり、バイク事故に特有の入通院慰謝料相場があるわけではありません。

①入通院慰謝料の金額(自賠責基準)

入通院慰謝料のうち自賠責保険から支払われる金額は、1日4300円で計算します。

対象となる日数は、被害者の傷害の態様、実治療日数その他を勘案して、治療期間の範囲内とするとされています(※)。

※「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」平成13年金融庁・国土交通省告示第1号・令和2(2020)年4月1日施行|国土交通省

実務の運用は、次の1.と2.を比較して、短い方の日数に4300円を乗じます。

  1. 総治療期間:事故日から治癒または「症状固定」までの日数
  2. 実治療日数の2倍:実際に入院していた日数及び実際に通院した日数

次の事例を使い、入通院慰謝料を計算してみましょう。

事例1. 事故日1月1日入院、3月31日退院。その後、5月31日まで週2回の通院した場合

  1. 総治療期間:1月1日~5月31日(151日)
  2. 実治療日数:入院期間90日間 + 通院回数18回(9週間 × 週2回)= 108日


したがって、自賠責保険から支払われる入通院慰謝料は、2.の
108日で計算されます。

108日 × 4300円 = 46万4400円 

なお、自賠責保険には支払い限度額があり、傷害の場合は入通院慰謝料も含めて総額120万円が限度です(自動車損害賠償保障法施行令第2条1項)。

②入通院慰謝料の金額(弁護士基準)

弁護士基準は、各種の弁護士団体が刊行物で公表しています。

その中でも、通称「赤い本」と呼ばれる「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準」(財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部編集発行)が、東京地裁民事第27部(民事交通部)の意見を反映し、実務でもっとも用いられているものです。

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そこで、ここでも「赤い本」の弁護士基準について説明します。

弁護士基準の入通院慰謝料は、縦軸を通院期間、横軸を入院期間とした「入通院慰謝料・別表」を用いて示されています。

この別表には、「別表Ⅰ」と「別表Ⅱ」があり、傷害の程度に応じて適用されます。

別表Ⅰは、傷害一般に適用される原則基準です。

別表Ⅰ(抜粋)

入院 1月 2月 3月 4月
通院 53万円 101万円 145万円 184万円
1月 28万円 77万円 122万円 162万円 199万円
2月 52万円 98万円 139万円 177万円 210万円
3月 73万円 115万円 154万円 188万円 218万円
4月 90万円 130万円 165万円 196万円 226万円

「入院」は横軸の期間に応じた金額、「通院」は縦軸の期間に応じた金額を見ます。

通院だけ2ヶ月の場合は52万円。入院1ヶ月、通院3ヶ月の場合は115万円となります。

また、別表Ⅱは、とくに他覚所見のないむち打ち症、軽い打撲、軽い挫創(挫傷)に適用される基準です。

別表Ⅱ(抜粋)

入院 1月 2月 3月 4月
通院 35万円 66万円 92万円 116万円
1月 19万円 52万円 83万円 106万円 128万円
2月 36万円 69万円 97万円 118万円 138万円
3月 53万円 83万円 109万円 128万円 146万円
4月 67万円 95万円 119万円 136万円 153万円

③後遺障害慰謝料の相場

後遺障害慰謝料の金額は、自賠責保険でも、弁護士基準でも、後遺障害等級に応じて決まりますから、バイク事故に特有の基準はありません。

詳しくは、下記記事をあわせてご参照ください。

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④後遺障害逸失利益の相場

後遺障害が残ったときには、失われた労働能力に応じて「逸失利益」も補償されます。

逸失利益の算定方法は、自賠責保険でも、弁護士基準でも同じであり、後遺障害等級に応じた「労働能力喪失率」を「基礎収入(年収)」と「ライプニッツ係数」に乗じます。

後遺障害逸失利益 = 基礎収入(年収) × 労働能力喪失率 × 就労可能年数に応じたライプニッツ係数

※参考外部サイト:国土交通省「就労可能年数とライプニッツ係数表

後遺障害等級と労働能力喪失率の関係は、下記のとおりです。

等級 1~3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
労働能力喪失率 100% 92% 79% 67% 56% 45% 35% 27% 20% 14% 9% 5%

次の事例を使って後遺障害逸失利益を計算してみましょう。

事例2.

被害者の年収:400万円
被害者の年齢:45歳
傷害の内容:バイク事故の右脚複雑骨折で「一下肢の用を全廃したもの」として「後遺障害第5級」

400万円 × 79% × 15.937(※)=5036万0920円

※年齢45歳、就労可能年数22年のライプニッツ係数(利率3%)で計算。

【参考外部サイト】就労可能年数とライプニッツ係数表|国土交通省

身体部位ごとの、バイク事故の後遺障害

冒頭に述べたとおり、バイク事故で多く見られるのは、脚・腕・頚・胸の後遺障害です。

脚の後遺障害

脚部の後遺障害には、下記のようなものがあります。

  • 欠損(喪失した)
  • 機能障害(可動域が制限される)
  • 変形障害
  • 短縮障害
  • 醜状障害

程度に応じて、第1級(例:両下肢をひざ関節以上で失ったもの)から14級(例:下肢の露出面に手のひらの大きさの醜い跡を残すもの)まで等級認定されます。

後遺障害慰謝料については、弁護士基準をベースとしつつ、被害の程度、生活に生じている不便の深刻さ、事故の態様、加害者の悪質性、事故後の謝罪の有無など、様々な事情を勘案して、金額が加算されます。

また、障害のために自宅をバリアフリーとしたり、エレベーターを設置したり、車を改造したりする必要があれば、慰謝料や逸失利益とは別の積極損害として、その費用が認められるケースもあります。

その詳細については、例えば、バイク事故で足を切断してしまった被害に対する賠償について、下記記事を御参照ください。

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腕の後遺障害

腕部の後遺障害も、同じく下記のようなものがあります。

  • 欠損
  • 機能障害
  • 変形障害
  • 短縮障害
  • 醜状障害

程度に応じて、第1級(例:両下肢の用を全廃したもの)から14級(例:一指の親指以外の手指の指骨の一部を失ったもの)まで等級認定されます。

例えば、手指は「可動域が制限される機能障害」や「震え・痺れなどの抹消神経障害」が補償対象となることが目立ちます。

この点についての詳細は、下記記事を御参照ください。

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頚の後遺障害

頚部に顕著なのは、バイク乗車中の軽傷事故の約19%を占めるであろう、むち打ち症です。

むち打ち症は、抹消神経障害として、その程度に応じて、12級または14級が認定されます。

ただし、レントゲンやMRIなどの画像で明確に異常が認められず、自覚症状しかない場合は、14級すら認められず、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益が補償されないケースもあります。

万全を期すためには、後遺障害等級認定の申請の段階から、弁護士に相談、依頼するべきでしょう。

むち打ち症に対する損害賠償の詳細は、次の各記事をご覧ください。

胸の後遺障害

胸部は、次のように分けることができます。

  1. 胸内部の臓器に障害が残る場合:1級~13級
  2. 肋骨など胸部の骨に変形障害が残る場合:12級
  3. 胸郭出口症候群などの抹消神経障害:12級、14級

胸部の後遺障害については、下記記事を御参照ください。

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バイク事故と過失割合

これまで説明したとおり、損害賠償を受けることのできる内容、その計算方法や相場には、バイク事故に特有のものはなく、四輪車対四輪車の事故と変わりありません。

ただし、バイク事故の「過失割合」だけは、四輪車対四輪車の事故とは異なる基準が用いられます。

鉄の箱に守られた四輪車に比べて、身体がむきだしのバイクは被害を受けやすいので、より保護の必要が高いからです。

「過失相殺」は、受け取ることのできる損害賠償額に大きな影響を与えます。

例えば、過失割合が、バイク40:四輪車60と認定され、バイク側にもある程度責任が大きいと判断されれば、賠償額の40%を減額されてしまうからです。

バイク事故の過失割合についての詳細は、下記記事を御参照ください。

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まとめ

今回はバイク事故で怪我をしやすい箇所や後遺症が残りやすい箇所、慰謝料の相場等について解説して参りました。

バイク事故の損害賠償問題は、過失割合の問題を除き、四輪車の事故と変わりはありません。

しかし、それは、四輪車の事故で争いとなりやすい法律問題は、すべて同じく、バイク事故でも問題となる可能性があるということです。

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監修
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本記事は交通事故弁護士カフェを運営するエファタ株式会社の編集部が執筆・監修を行いました。
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