「自転車」対「バイク」の交通事故の過失割合の考え方
交通事故が発生する際には、「自転車」と「バイク」が関与することもあります。
これらはどちらも二輪の車両ですが、異なるタイプの車両であり、過失割合の考え方も自動車同士やバイク同士の事故とは異なる要素が絡んできます。
自転車の方がダメージを受けやすい場合がある点は考慮されます。ただ、自転車が悪いケースももちろんありますし、どっちが悪いか分からないこともあります。
過失割合の計算は事故の状況や法的規定に基づいて行われ、警察の報告書や目撃者の証言、物的証拠などが考慮されます。
この記事では、自転車とバイクの交通事故における過失割合の計算方法について解説します。異なる車両同士の事故であるために考慮すべき要因や、公平な判断が行われるプロセスについてご説明します。
自転車 対 バイクの交通事故で自転車が保護される理由
自転車とバイクの交通事故の場合、基本的に自転車が優先され、保護されます。具体的には、交差点上の直進車同士の事故などであっても、自転車側の過失割合が低く設定されます。
自転車の方が死傷するリスクが高い
これは、自転車側は事故を避けにくいだけでなく、自転車は車体が細くバイクに比べて事故に遭ったときに運転者が死傷するリスクが高いからです。
自転車は運転者によっては危険な方法で運転する人も多いですが、そのような自転車と衝突してもバイクの過失割合が高くなってしまうおそれがあるので、近くに自転車がいる場合には特に注意して運転をする必要があります。
自転車は高齢者・児童が運転するケースもある
自転車とバイクには、運転免許制度があるかどうかという違いもあります。
バイクには免許制度があるので、基本的に18歳以上の人しか運転していません。そこで、当然にそれなりの注意義務を課すことができます。
これに対し、自転車の場合には免許制度はありません。高齢者や児童なども運転できますし、身体障害者でも運転しているケースが多いです。
こうした人が運転者の場合、高度な注意義務を課すことは難しいので、過失割合が減らされます。すると、やはりその分バイク側の過失割合が上がってしまうのです。
このように、自転車が相手の場合には、どのような人が運転しているかも過失割合に大きく影響を及ぼします。
バイクを運転する際、近くを走っている自転車の運転者が高齢者や児童などの場合、特に注意して走行する必要があるでしょう。
自転車とバイクの事故の過失割合
自転車とバイクの過失割合は、基本的には自転車側に有利になりますが、必ずしもそうならないケースもあります。
自転車側が信号無視をしているケースでは、自転車にも大きく過失割合が割り振られます。自転車が一旦停止義務違反や一方通行違反などをしていれば、やはり過失割合が上がります。
さらに、過失割合には「基本の過失割合」と「修正要素」があります。
原則的には基本の過失割合によって過失割合を算定しますが、当事者の一方に著しい過失や重過失があるなど、ケースごとの特殊事情がある場合にはそれらを考慮して過失割合を修正します。
自転車とバイクの交通事故であっても、自転車側に加算の修正要素が適用されるケースでは、自転車側の過失割合が上がります。
以上を前提に、自転車とバイクの事故の過失割合を見てみましょう。
信号機のある交差点での事故(直進車同士、出合い頭)
信号機の色と過失割合 |
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自転車側が青、バイク側が赤 自転車:バイク=0:100 |
自転車側が赤、バイク側が青 自転車:バイク=80:20 |
自転車側が黄、バイク側が赤 自転車:バイク=10:90 |
自転車側が黄で侵入し衝突時は赤、バイク側が青 自転車:バイク=40:60 |
自転車側が赤、バイク側が黄 自転車:バイク=60:40 |
双方とも赤 自転車:バイク=30:70 |
修正要素は、以下のとおりです。
自転車側の加算要素
夜間:+5%
自転車の著しい過失:+5%
自転車の重過失:+10%
自転車側の減算要素
運転者が児童等・高齢者:-5%
自転車の明らかな先入(双方赤の場合):-15%
自転車が自転車横断帯通行:-5~-10%
バイクの著しい過失:自転車に-5~-20%
バイクの重過失:自転車に-10~-30%
信号機がない交差点(直進車同士、出合い頭)
道路幅・標識など | 過失割合 |
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幅が同程度 | 自転車:バイク=20:80 |
一方の道路が明らかに広い | 自転車側が広路、バイク側が狭路 自転車:バイク=10:90 |
自転車側が狭路、バイク側が広路 自転車:バイク=30:70 |
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一方が優先道路 | 自転車側が優先道路 自転車:バイク=10:90 |
バイク側が優先道路 自転車:バイク=40:60 |
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一時停止の標識がある | バイク側に一時停止規制 自転車:バイク=10:90 |
自転車側に一時停止規制 自転車:バイク=40:60 |
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一方通行違反 | バイクが一方通行違反 自転車:バイク=10:90 |
自転車が一方通行違反 自転車:バイク=50:50 |
修正要素(同幅での出合い頭事故のケース)は以下の通りです。
バイク側の加算要素
高速度で進入:+5%
夜間:+5%
右側通行なのに左方進入:+5%
著しい過失:+10%
重過失:+15%
自転車側の減算要素
児童、老人など:-5%
自転車横断帯や横断歩道を走行:-10%
自転車の明らかな先入:-10%
バイクの時速15㎞以上の速度違反:-10%
バイクの時速30㎞以上の速度違反:-20%
バイクの著しい過失:-10%
バイクの重過失:-20%
信号機がある交差点(直進車と右折車の事故)
事故態様 | 信号機の色と過失割合 |
---|---|
自転車が右折、バイクが直進 |
双方とも青 自転車:バイク=50:50 |
バイクが黄、自転車が青で侵入して黄で右折 自転車:バイク=20:80 |
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双方とも黄で侵入 自転車:バイク=40:60 |
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双方とも赤で侵入 自転車:バイク=30:70 |
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自転車が直進、バイクが右折 |
双方とも青で侵入 自転車:バイク=10:90 |
自転車が黄、バイクが青で侵入して黄で右折 自転車:バイク=40:60 |
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双方とも黄で侵入 自転車:バイク=20:80 |
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自転車が赤 バイクが青矢印の右折可の信号によって右折 自転車:バイク=80:20 |
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双方とも赤 自転車:バイク=30:70 |
この場合にも、自転車側に著しい過失や重過失があれば加算修正され、5%~10%自転車の過失割合が上がります。
一方、自転車の運転者が高齢者や児童であったり、バイク側に徐行なし・合図なし、著しい過失や重過失などがあったりすると、5%~10%自転車側の過失割合が減算されます。
信号機がない交差点(直進車と右折車の事故)
事故態様と過失割合 |
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自転車が直進、バイクが右折 自転車:バイク=10:90 |
自転車が右折、バイクが直進 自転車:バイク=30:70 |
信号機のある交差点で、同一方向から同一道路に進入(自転車直進、バイク右折予定)
信号機の色と過失割合 |
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直進車・右折車ともに青信号 自転車:バイク=15:85 |
直進車が黄信号で進入し、右折車が青信号で進入した後、黄信号で右折 自転車:バイク=45:55 |
直進車・右折車ともに黄信号で進入 自転車:バイク=35:65 |
直進車・右折車ともに赤信号で進入 自転車:バイク=35:65 |
直進車が赤信号で進入し、右折車が青又は黄信号で進入した後、赤信号で右折 自転車:バイク=75:25 |
直進車が赤信号で進入し、右折車が青矢印による右折可の信号で進入 自転車:バイク=85:15 |
信号機のない交差点で、同一方向から同一道路に進入(自転車直進、バイク右折予定)
自転車:バイク=15:85
以上の各ケースでも、やはり自転車側の著しい過失、重過失などがあれば自転車側に5%~10%程度の加算が行われます。
バイクが既に右折準備に入っていたら、自転車側の過失割合が10%加算されます。
「自転車」対「バイク」の過失割合で悩んだら弁護士に相談
以上のように、自転車とバイクの事故では、自転車に有利に過失割合が計算されます。
バイクを運転している場合は、自転車と事故を起こしたら、基本的に自分の側に大きく過失割合を割り当てられると考えなければなりません。
一方、自転車に乗っていてバイクと事故に遭うと、重大な後遺障害が残ったり死亡事故につながったりするおそれが高いです。過失割合により受け取ることができる示談金の額も大きく左右されるため、過失割合がどのように算定されるかは重大な問題です。
過失割合で悩んだらどうする?
被害者が自分自身で相手方(バイク運転手)の保険会社と交渉をしていると、納得できないことも多いでしょう。
バイク側の立場としても、相手が自転車の場合、修正要素が適用されることも多く、どのように過失割合を計算するのかが分かりにくいことがあります。
そこで、自転車とバイクの事故で過失割合がわからない場合、弁護士に相談してみることをおすすめします。
相手の言い分に納得できない場合には、弁護士に対応を依頼して過失割合について交渉をしてもらうこともできます。
交通事故問題で泣き寝入りする必要はないので、早めに交通事故問題に強い弁護士に相談をしてアドバイスをもらいましょう。
交通事故の示談金に納得がいかない時はどうすればよい?
ご自分の交通事故の示談金・慰謝料の額が気になる方は、交通事故に強い弁護士に相談すれば、慰謝料が大きく増額することがあります。
まず、弁護士基準の慰謝料がいくらになるか?交通事故に強い弁護士に相談することをお勧めします。
まとめ
今回は、自転車とバイクの事故の過失割合、どっちが悪いか、自転車が悪い場合などについて解説しました。
自転車とバイクが交通事故の当事者になると、基本的に自転車に有利に過失割合が算定されます。これは、自転車の方が立場が弱く、事故によるダメージも大きい上、事故を避けられる可能性も低いからです。
ただし、自転車が当事者であっても、著しい過失や重過失があれば過失割合は上がりますし、信号無視があればやはり過失割合があがります。
ただ、過失割合の計算方法は、基準によって一律に決められるものばかりではありません。
自転車とバイクの交通事故で、相手の主張内容に納得できず、対応に困っているなら、まずは一度弁護士に相談することをおすすめします。