交通事故の慰謝料相場とは|いくらもらった?計算と増額方法【ブログ知恵袋で話題】
交通事故における慰謝料の相場、いくらもらえたのか、計算方法と増額方法をわかりやすく解説致します。交通事故で保険会社か…[続きを読む]
交通事故で人身被害を受けた場合、被害者側は加害者の任意保険会社と賠償金額の示談交渉を行う必要があります。
本稿では、全損事故、人身事故、後遺障害が残る事故、死亡事故、物損事故など、事故の種類に応じて、いつ頃から示談交渉を始めるべきか、また、示談が成立するまでにおよその期間がどの程度かかるのかを解説していきます。
示談交渉の開始時期や成立までの所要期間は、事案によって変わってくるものです。事故の内容や被害の程度に応じて、適切なタイミングと期間を想定することが重要となります。
起きてしまった事故の種類に合わせて、示談交渉に着手すべき時期を知り、また成立に向けた期間を事前に見積もることで、被害者側としてスムーズな請求交渉を行うことができるでしょう。
示談開始と成立に向けた適正な期間を理解しておくことが、被害者側にとって有益な情報となります。
目次
事故でケガをした場合は、ケガが治って治療が終了すれば、治療費、通院交通費、付添費、休業損害などの金額がはっきりします。
また、通院の終了により入通院慰謝料を算定する基礎となる入通院期間も確定します。
したがって、治療が終了した時点以降が、示談交渉をスタートさせる時期となります。
なお、保険会社が送付してくる計算書の金額は、正当な賠償額である弁護士基準(裁判所基準)で算定した金額よりも必ず低い金額です。
この提案に対して、弁護士基準の金額を示して反論することが、実質的な示談交渉のスタートであることも念頭においておきましょう。
人身事故(傷害)に関する示談交渉の開始から実際の示談成立までの時間、その質問に対しては「ケースバイケース」としか答えようがありません。
保険会社と被害者、両者の希望金額に差が少なければ、早く妥結できるでしょうし、差が大きければ、妥結できないか、妥結できても時間がかかるでしょう。
また、差が大きくても、早く現金が欲しい被害者が、保険会社の提案を争わなければ、すぐに示談は成立し、1~2週間で賠償金が振り込まれます。
金額的な差がわずかでも、被害者が1%でも過失割合を認めたくないと主張すれば、示談まで長くかかるかも知れません。
ただし、どのような争いの場合でも、人身事故(傷害)の損害賠償の消滅時効は、事故から3年です(自賠法19条、民法724条)。
したがって、どんなに長引いても、この期間内に示談が成立しないならば、調停申立てや訴訟提起によって時効を止めて解決を図るしかありません。
10対0の人身事故の場合、解決までの時間が短縮されることがあります。
その理由は、過失の割合が争点になることが少なく、要するに示談交渉の際に論点が少なくなるためです。
ただし、慰謝料や後遺障害慰謝料、逸失利益などで論争が生じることもあるため、解決までの期間が必ずしも短くなるとは限りません。こうした点も考慮に入れておくべきです。
それ以外の部分に関しては、通常の人身事故と同じく、解決期間が同様にかかると考えるべきです。
後遺障害の申請をする場合は、後遺障害等級認定の結果が判明し、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益の金額を算定できるようになった時点が、示談交渉をスタートさせるときとなります。
もっとも、自賠責保険の審査結果に対し、「こんなに低い等級のはずがない」、「非該当とされてしまった」など、納得がゆかないときは、異議申し立てなどを行うため、その後に示談交渉を開始することになるでしょう。
また、後遺障害による損害賠償請求権の消滅時効期間は、症状固定の時から3年間です。
したがって、等級認定を争うなどの場合は時効期間に注意をし、消滅時効期間が近づいてきたら、たとえ等級認定の結論が出ていなくとも、加害者を提訴するなどして時効を中断させる必要があります。
なお、自賠責保険については、「時効中断申請書」を提出することで時効を中断させることが可能ですが、自賠責保険に対する請求権の時効を中断させても、その効力は、加害者や任意保険会社に対する請求権には及ばないことに注意しましょう(民法148条)。
示談成立までの期間がわからないことは人身事故(傷害)と同じです。
後遺障害事故の場合は、次のような争点で交渉が長引くケースが多いです。
いずれも後遺障害に関する専門的知識なしには保険会社と交渉することは困難です。適正な金額の示談を成立させるには、弁護士に依頼するべきでしょう。
また、後遺障害事故による損害賠償請求権の消滅時効は、症状固定から3年間です。特に後遺障害が重い場合、症状固定後も通院やリハビリを続けるケースも多く、あっという間に3年を経過してしまう危険があるので、格別の注意を要します。
死亡事故は、法律の理屈の上では、被害者が亡くなった時点で、死亡慰謝料、逸失利益などのすべての損害が発生したと評価されます。
しかし、実際には遺体の搬送費用や葬儀代など、死亡後に発生する損害もありますし、死亡の時点で損害の金額が算定できているはずもありません。
また遺族の感情なども考慮すれば、49日の法要などを済ませて、気持ちが落ち着いてから交渉をスタートすることが一般的です。
死亡事故の示談交渉を始めるにあたり、大切なことは、相続人の代表者を決めることと、慰謝料を請求する近親者の範囲を決めておくことです。
死亡事故の場合、慰謝料や逸失利益の額が通常高額となり、1億円を超える賠償金が珍しくありません。
この高額な金額故に、保険会社は激しく抵抗を見せることが一般的です。過失割合が1%違うだけで100万円、10%の差で1000万円もの違いが生じるため、事故の詳細を巡る論争は極めて激しいものとなります。
結果として、示談が成立するまで時間がかかることがあります。
さらに、死亡事故に特有の問題として、相続争いが発生し、保険会社が賠償金の支払い先が確定しないまま時間が経過するケースも注意が必要です。
物損事故では、修理前に、修理費用の見積書を入手したときが事実上の交渉スタートです。
ただし、物損事故では、多くの場合、保険会社が委託したアジャスターが修理工場を訪れ、事故車両の損壊箇所を確認し、事故によって生じた損壊か否か、合理的な修理方法と相当な修理金額について調査します。
保険会社は、その調査報告に基づいて賠償内容を検討しますので、急いで修理を進めてしまい、アジャスターによる調査の機会を奪ってしまうと、保険会社から支払を拒絶されるなどして、示談交渉が難航する危険があります。
したがって、アジャスターによる調査を実施させたうえで示談交渉を開始することが賢明です。
また車両が全損となり買替え差額を請求する場合や評価損を請求する場合は、事故時点の当該車両の価格などを調べて、請求する金額を特定してから示談交渉を始める必要があります。
これらの価格は、「オートガイド自動車価格月報」(オートガイド社)や「シルバーブック」(一般財団法人日本自動車査定協会)などで調べることができます。
物損事故では、次のような争いで示談交渉が長引く場合があります。
保険会社が委託したアジャスターが被害車両を調査し、妥当と認める修理範囲・方法・費用について、修理工場と協議し、合意する場合があり、これを「修理費協定」と呼びます。
このような協定がなされても、被害者がそれに従わなくてはならない理由はありませんが、少なくとも修理費については、協定が結ばれた場合は問題とならないことが多いと言われており(※)、示談交渉の期間を短くすることに役立つと言えるでしょう。
※「交通関係訴訟の実務」(森富義明裁判官他編著・商事法務)430頁
示談交渉の期間がどれくらいかかるかは、事案によって異なるとしか言えませんが、被害者本人が示談交渉を行うよりも、弁護士に依頼して代理人として示談交渉を担当してもらった方が、示談交渉にかかる期間は短くできることは確実です。
示談交渉の期間は、その事案における争いの有無、その争い内容によって異なります。
ご自分の示談交渉の期間がどの程度となるのか、おおよその目安が知りたいときは、是非、交通事故に強い弁護士に御相談されることをお勧めします。