一括対応とは|打ち切り・拒否問題と任意保険一括払い制度を解説
今回は、交通事故の任意一括制度の仕組み、メリットとデメリット、またこの制度の正しい利用法について考えてみましょう。[続きを読む]
交通事故で示談交渉がまとまると、通常、保険会社から「示談書」が送付されます。ところが、なかなか届かない、遅いことがあり、示談書が届くまでの期間について知りたい方もいるでしょう。
東京海上日動火災保険、損保ジャパン日本興亜といった大手の損害保険会社であっても、中小の損害保険会社であっても、なかなか届かないといった事態は起こり得ます。
示談書に署名・押印をしなければ、示談金が振り込まれることはないため、被害者としては、ストレスが溜まる一方でしょう。
この記事では、いつ交通事故の示談書が届くか、届くまでの期間相場や、保険会社が示談書を送ってこない、遅いとお悩みの方への対処法、届いたけれどサインしていいものか迷っている方にチェックポイントを解説します。
目次
交通事故の被害者は通常、下記のような流れで、加害者側の保険会社と示談交渉することになります。
つまり届くまでの期間として、この事務作業に通常は短くても1ヶ月程度はかかってしまうでしょう。
しかし、交通事故の示談書が届くまでの期間相場を超えても、保険会社が示談書を送ってこない、遅いのには、下記のような理由があります。
いずれにせよ、示談書がなかなか届かないと思ったら、どこでどのような理由で滞っているのか、いつ頃届く見込みなのかを保険会社に確認してみましょう。
では、その後示談書が届いたらどうすればいいのでしょうか?
示談書のチェックポイントを解説するためにも、示談書とはどのようなものなのか、まずはその役割を簡単におさらいしておきます。
そもそも示談書とは、人身事故・物損事故の示談交渉によって当事者がお互いに合意した内容を書き入れた契約書のことです。
契約書なので、示談による支払い内容などが詳しく書かれており、被害者・加害者双方の署名捺印がなされている必要があります。
示談書に支払い内容の合意について明記してあれば、「そんな約束はしていない」と相手に支払いを拒絶されることも、約束通りの支払いをしたのに「まだ足りない」などとさらに請求されることもありません。
このように、示談書は、当事者の合意内容を明らかにして、後々のトラブルを防止する役割を持っています。
保険会社から送付された示談書は必ずしもそのままサインして返送しなければならないものではありません。少しでも納得できなければ、保険会社に質問し、修正してもらうように交渉します。
そのことを前提に、以下の示談書を例にどのようにチェックすればいいのかを解説します。
示談書が送付されてきたら、今一度示談金額の確認をしましょう。保険会社が提示する示談金とくに慰謝料などについては、不当に低い金額が提示される可能性があります。
保険会社も営利企業です。できるだけ自社に利益が残るように計算します。
自身の正当な慰謝料がいくらくらいなのか、下記の自動計算機などで算出して比較してみてください。
そのうえで、支払期日、支払方法などを確認します。
清算条項は、必須の条項です。
示談書に記載する内容以外に当事者間に一切の債権債務関係がないことを確定させる条項で、事件を蒸し返されるのを防ぐ効果があります。
支払う側は清算条項があるからこそ示談に応じるわけで、清算条項の記載がない示談書に合意する者はいません。
被害者側からすると、示談書にこの条項が入ることにより、その後の一切の請求ができなくなります。
ちなみに、被害者としては「示談後に後遺障害が出た場合は、別途請求可能」との文言をプラスしておくことを勧めているサイトもありますが、このような記載があれば、当然に加害者側は調印を拒否しますから、示談は成立しません。
また、示談当時、予期できなかった後遺障害が発生した場合は別途、損害賠償請求を認めることが裁判例ですので、わざわざ示談成立を阻害するような記載をする意味はありません。
加害者が交通事故で刑事処分を受ける可能性がある場合、宥恕条項というものが記載されていることがあります。
宥恕とは許すという意味です。この条項があると、加害者が不起訴処分なったり、刑事処分が軽くなったりする理由の一つになります。
もちろん、被害者が「許せない」と考えるなら、宥恕する必要はありません。
但し、加害者側は宥恕条項を入れてくれないなら、示談には応じないという姿勢に転じることがあります。
加害者としては示談しなくとも損害賠償責任があることには変わりありません。
しかも実際に支払うのは保険会社ですから、示談を拒否しても金銭的には実質的な損害がないからです。
加害者は、重い刑事処分が予想されない場合は、あえて示談にこだわる必要もないわけです。
示談を拒否された場合、被害者側は訴訟を提起しなければ賠償金を受け取ることができず、最終的な賠償を受けるまでに長期間かかってしまいます。
このように、宥恕条項の記載を断るかどうかは、被害者の利害にも直結します。熟慮のうえ決めるべきであり、感情的に即決してはいけません。
示談書の内容に納得できたなら、サインと日付の記入、押印をしてください。印鑑は認め印でも大丈夫です。
公正証書とは、公証人が作成する公文書のことです。
相手に示談書通りの支払いを確実にしてもらうためには、示談書の内容を公正証書化しておくことも効果的です。
示談書を公正証書にして強制執行認諾条項という条項を入れておくと、相手方が不払いを起こしたときに、裁判をせず、いきなり相手の財産を差し押さえることができるので、取り立てが容易になります。
そのうえ、文面を公証人が作ってくれるので、内容的に無効な示談書になるおそれが低くなり、また、公証役場での手続きは、代理人でもできるというメリットもあります。
示談書をチェックして示談金が安すぎるなど納得できなければ、署名・捺印をすべきではありません。
署名・捺印した示談書を保険会社に送付してしまったら、その内容で同意したことになり、後から撤回をすることはとても難しくなってしまうからです。
人身事故・物損事故後に、示談書を提示された後でも、弁護士に相談することは可能です。示談書を送ってきた保険会社に問い合わせをしても納得できないなら、弁護士に相談してみましょう。