自賠責保険の支払基準が改定|最新の基準を解説

自賠責保険の支払基準が改定されました。

交通事故の被害に遭ってしまった方にとっては、自賠責保険からどのような補償を受けることができるのかを知っておくことは重要です。

そこで、この記事では、2020年4月1日より適用が開始された新たな自賠責保険の支払基準について解説します。

自賠責保険とは?

自賠責保険は、交通事故の被害者を保護するために、最低限の補償を法律で制度化したものです。

交通事故はドライバーであれば誰しも起こし得るものですが、加害者に損害を賠償するための資力がなければ、被害者は十分な賠償を受けることができません。そのため、車を運転する者は自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)に加入することが義務付けられています(自動車損害賠償責任法5条)。

これにより交通事故の被害者は、加害者が加入している自賠責保険から常に損害の補償を受けることができるようになっています。

自賠責保険の内容については、以下の記事も参考にしてください。

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2020年4月1日より自賠責保険の支払基準が変更に

自賠責保険の保険金は、金融庁・国土交通省の告示である支払基準に基づいて支払われるものとされています(自動車損害賠償責任法16条の3)。

2020年4月1日より、従来の支払基準が改定され、新たな支払基準が施行されました。

支払基準が改定となった理由は、以下の2つです。

平均余命や経済状況などの変化を反映するため

実は、自賠責保険の支払基準は、経済状況などの変化を反映させるために、次のような項目について定期的に見直しが行われています。

  • 平均余命年数
  • 物価水準および賃金水準の変動
  • 近年の保険金等の支払いの実態
    など

前回自賠責保険の支払基準が見直されたのは、2010年4月1日のことです。

そのため、今回の支払基準の改定では、直近10年分の変化が反映されています。

しかし、ここ最近の10年間では、日本の平均余命年数や経済状況はそれほど大きく変わっていませんので、微調整の範囲といえるでしょう。

 民法改正による法定利率の変更に対応するため

2020年4月1日施行の民法改正では、法定利率が従来の年5%から年3%に変更されました。

これに伴い、自賠責保険の保証対象である後遺障害に対する逸失利益の中間利息控除に使用するライプニッツ係数も、合わせて変更する必要が生じました。

後遺障害逸失利益 = 基礎収入 × 労働能力喪失率 × 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

傷害による損害の保険金が増額

ここからは、実際にどのように自賠責保険の支払基準が変更されたのかを解説します。

まずは、交通事故で傷害を負った場合に受給できる自賠責保険の保険金額が増額になりました。

これは、直近10年間の平均余命や経済状況の変化を反映したためです。

傷害による損害の保険金の主な項目の改定前・改定後の金額は、以下のとおりとなっています。

改定前改定後
治療費治療に要した必要かつ妥当な実費
入院中の看護料4100円/日4200円/日(※1)
自宅看護料・通院看護料2050円/日2100円/日(※1)
入院雑費1100円/日
通院交通費通院に要した必要かつ妥当な実費
休業損害5700円/日6100円/日(※2)
入通院慰謝料4200円/日4300円/日

※1 立証資料などによりこれを超えることが明らかな場合、近親者は上限19,000円、それ以外は地域の家政婦料金で支払われます。
※2 立証資料などによりこれを超えることが明らかな場合、上限19,000円で支払われます。

なお、傷害による損害の保険金の限度額については変更はなく、引き続き被害者1名につき120万円となっています。

後遺障害による損害の保険金が増額

次に、後遺障害によって生じた損害の保険金についても、直近10年間の平均余命や経済状況の変化を反映して増額されています。

後遺障害による損害の保険金額は、後遺障害の程度によって認定される「後遺障害等級」によって決まっています。

今回の改定では、もっとも軽い部類になる第13級と第14級以外の後遺障害等級について、保険金額が増額されました。

後遺障害による損害の保険金の改定前・改定後の金額は、それぞれ以下のとおりです。

別表第Ⅰ(要介護)

改正前改正後
第1級1600万円(1800万円)1650万円(1850万円)
第2級1163万円(1333万円)1203万円(1373万円)

※カッコ内は、被害者に被扶養者がいる場合の金額です。

別表第Ⅱ

改正前改正後
第1級1100万円(1300万円)1150万円(1350万円)
第2級958万円(1128万円)998万円(1168万円)
第3級829万円(973万円)861万円(1005万円)
第4級712万円737万円
第5級599万円618万円
第6級498万円512万円
第7級409万円419万円
第8級324万円331万円
第9級245万円249万円
第10級187万円190万円
第11級135万円136万円
第12級93万円94万円
第13級57万円
第14級32万円

※カッコ内は、被害者に被扶養者がいる場合の金額です。

死亡による損害の保険金が増額

死亡による損害の保険金額については、葬儀費用と本人の慰謝料が増額されています。

改定前・改定後の金額は、それぞれ以下のとおりです。

改正前改正後
葬儀費用60万円100万円
死亡本人の慰謝料350万円400万円

なお、逸失利益や遺族の慰謝料を含めた死亡による損害の保険金の限度額については、これまで同様、被害者1名につき3000万円となっています。

ライプニッツ係数表の変更

既に解説したとおり、民法改正による法定利率の引き下げに伴い、中間利息控除の金額が少なくなります。

これに伴って、中間利息控除の金額を計算する際に用いられる「ライプニッツ係数」が変更されました。

ライプニッツ係数についての詳しい説明と、改定内容の詳細については、以下の記事を参照してください。

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自賠責保険が損害すべてをカバーできるとは限らない

自賠責保険は、交通事故の被害者に対して最低限の補償を確保するという非常に重要な意味を持っています。

その一方で、自賠責保険は補償について上限額があるため、被害者に発生した損害を常にカバーできるとは限りません。

被害者が実際に被った損害について十分な補償を受けるためには、自賠責保険保険の補償上限を超えた部分について、任意保険から保険金が支払われなければなりません。

通常、任意保険会社は、自賠責保険の保険金を立て替えて任意保険の保険金と一括して支払う一括対応という制度を採用しており、被害者は、加害者側の任意保険会社との間で交渉を行うことが不可欠になります。

しかし、被害者側が弁護士を伴っているかいないかによって、任意保険会社の交渉姿勢や提示する示談金額に大きな差が出ることが多く、適切な補償を任意保険会社から引き出すには、弁護士の力が必要なことが多いのも現実です。

そのため、交通事故の被害者は、早めに弁護士に相談し、任意保険会社との交渉を依頼することをおすすめします。

交通事故の被害に悩んでいる方は、ぜひお気軽に弁護士へご相談ください。



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