自賠責保険への請求で120万円を超えた場合はどうなるの?

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交通事故による怪我の治療費が120万円を超えそうになったけれど、自賠責保険の限度額は120万円と聞いたことがある。
120万円を超過したときは、もう治療費は払ってもらえないのか?

ほとんどの方にとって、交通事故の被害に遭うのは初めてのこと。上記のように、わからないことばかりでしょう。

この記事では、治療費など事故による損害が、自賠責保険が補償する限度額を超えたときにどうなるのか?その賢い対処法についても説明します。

自賠責が補償する治療費の限度額・範囲って120万円ってほんと?

ほんとうです。自賠責保険から支払われる金額には限度額が決まっているのです。

なお、限度額は、自賠責保険の正式な用語では「保険金額」というのですが(自動車損害賠償保障法13条)、この記事ではわかりやすく「限度額」で統一します。

さて、限度額は、以下の3つの損害についてそれぞれについて決められています。

  1. 傷害による損害
  2. 後遺障害による損害
  3. 死亡による損害

「傷害による損害」:入通院慰謝料など

「傷害による損害」とはすなわち交通事故の怪我を原因として生じた損害についての限度額は120万円です。

「傷害による損害」の補償対象となるのは、怪我をしてから治癒・症状固定・死亡のいずれかの結果となるまでの期間に発生した損害です。

具体的な補償内容は、この期間中の治療費、入通院諸雑費、看護料、休業損害、入通院慰謝料などです。

「後遺障害による損害」:後遺障害慰謝料など

「後遺障害による損害」の限度額は、後遺障害等級に応じて、最大4000万円(要介護1級)から最小75万円(14級)まで定められています。具体的な補償内容は、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益です。

後遺障害が残る場合、当然、事故から症状固定に至るまでの期間も、治療費などの損害が発生していますので、その部分は「傷害による損害」として120万円の限度額の範囲で補償されます。

「死亡による損害」:死亡慰謝料など

死亡事故の場合、治療をしたが残念ながら死亡したケースと、即死のケースを分けて考える必要があります。

即死のケースでは、「死亡による損害」として、3000万円が限度額となります。具体的な補償対象は、葬儀費、死亡逸失利益、死亡慰謝料(本人分と遺族分)です。

治療のかいなく死亡したケースは、即死のケースと同じ「死亡による損害」(限度額3000万円)に加えて、死亡するまでの期間中の「傷害による損害」も限度額120万円の範囲で補償されます。

以上の内容を表にまとめてみましょう。

自賠責保険の限度額

内容限度額(被害者1名につき)根拠条文(※)
傷害
  • 傷害による損害について120万円
施行令2条1項3号イ
後遺障害
  • 傷害による損害について120万円
  • 後遺障害による損害について等級に応じ、4千万円~75万円
施行令2条1項2号、3号イ
別表第1・第2
受傷後死亡
  • 傷害による損害について120万円
  • 死亡による損害について、3千万円
施行令2条1項1号
即死
  • 死亡による損害について、3千万円

※施行令:自動車損害賠償保障法施行令

このように、「傷害による損害」の限度額120万円というのは、怪我をした後、治癒・症状固定・死亡のいずれかの結果となるまでの期間に発生した損害に対する補償限度額ですから、後遺障害が残ったとき、死亡してしまったときの各損害は別枠であることに注意してください。

むち打ちの後遺障害による損害の限度額

交通事故でむち打ち症になり通院する方も多く、治癒しなければ後遺障害等級の認定を受けることになります。むち打ち症は、後遺障害等級12級または14級に該当します。

むち打ち症は、後遺障害に認定された場合は等級12級または14級に該当します。

また、後遺障害による損害の限度額は、12級が224万円、14級が75万円です。

したがって、むち打ち症における自賠責保険の限度額は、次のとおりとなります。

等級傷害による損害後遺障害による損害限度額合計
12級120万円224万円344万円
14級120万円75万円195万円

むち打ち症の場合、常に上記の金額を受け取ることができるというわけではありません。あくまで、この金額の範囲内で、実際に生じた損害に対して自賠責保険から補償を受けることができるにとどまります。

他方、損害額が、この金額を超えてしまった場合については、後述します。

むち打ち症の損害賠償については、次の記事もご覧下さい。

むち打ち症の被害者の方が、「後遺障害12級13号」に認定率されるためのポイントや慰謝料を解説します。むち打ち症は、交…[続きを読む]
交通事故でむち打ちとなり、後遺障害14級9号の後遺障害認定を獲得するためのポイントと慰謝料について解説いたします。む…[続きを読む]

過失割合などで限度額が変わることはある?

実は、上に説明した限度額は絶対のものではなく、以下の2つによって減額されてしまう場合があります。

  • 被害者の過失割合
  • 事故と損害との因果関係

過失割合で限度額が変わる

交通事故の被害者に何らかの落ち度がある場合は、その割合(過失割合)に応じて「損害賠償金の何割かが減額」されます。

これが過失相殺という制度です(民法722条2項)すが、自賠責保険には、過失相殺は適用されません。

しかし、その代わりに「重過失減額」という制度があります。

これは、被害者の過失割合が「7割を超えない限り減額はなく」、7割を超えても減額幅は2割から最大5割までにとどめるという被害者保護を図った制度です。

自賠責保険の重過失減額の割合

重過失減額の割合は次のとおりです(※)。

被害者の過失割合減額割合
後遺障害・死亡傷害
7割未満減額なし
7割以上8割未満2割減額2割減額
(但し、減額すると20万円以下となるときは、20万円とし、損害額が20万円未満のときは減額しない)
8割以上9割未満3割減額
9割以上10割未満5割減額

※「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」平成13年金融庁・国土交通省告示第1号

重過失減額の対象

重過失減額の減額対象は、次の4つの場合で異なるので、注意して下さい。

  1. 損害額が限度額以上のとき:限度額を減額
  2. 損害額が限度額未満のとき:損害額を減額
  3. 傷害による損害額が20万円以上で減額すると20万円以下となるとき:20万円補償
  4. 傷害による損害額が20万円未満のとき:減額しない

重過失減額の計算方法・例

例1.

傷害についての損害額が200万円で、過失割合が70%の場合

→ 限度額120万円を2割減額し、96万円を補償

例2.

傷害についての損害額が80万円で、過失割合が70%の場合

→ 損害額80万円を2割減額し、64万円を補償

例3.

傷害についての損害額が22万円で、過失割合が70%の場合

→ 損害額22万円を2割減額すると20万円以下となるので20万円補償

例4.

傷害についての損害額が18万円で、過失割合が70%の場合

→ 損害額が20万円未満なので、減額せず18万円補償

事故と後遺障害・死亡との因果関係不明で限度額がかわる

被害者が事故前に既往症を有していたりすると、事故と後遺障害または死亡との「因果関係の有無」について判断が困難なときがあります。

その場合は、損害額が限度額に満たない場合は、その金額を5割減額し、限度額を超える場合には、限度額を5割減額します。

但し、この減額は「傷害による損害」については適用されません。

治療費などで120万円を超えたら、超過分はどうなるの?

では、治療費などの「傷害による損害」の金額が、自賠責保険の限度額を超えてしまった場合、もう補償してもらえないのでしょうか?

これは加害者側が任意保険に加入している場合と、そうでない場合で異なります。

加害者側が任意保険に加入している場合

任意保険は、自賠責保険の限度額を超える損害部分を補償する保険です。

したがって、加害者側が任意保険に加入しているときは、傷害による損害が120万円を超えた場合も、「任意保険から超過部分の支払い」を受けることができます

今日では、任意保険の加入率は7割を超えていると言われていますから、多くの場合、自賠責保険の限度額を気にする必要はありません。

限度額を超過しても特別な手続き不要で補償される

では、加害者側が任意保険に加入していて、傷害による損害が120万円の限度額を超えた場合、任意保険から支払を受けるには特別な手続が必要でしょうか?

ほとんどのケースでは、任意保険会社による「一括払い(一括対応とも呼ばれています)」サービスが実施されているので、特別な手続は必要ありません。

「一括払い」とは、自賠責保険が負担する120万円までの金額も含めて、任意保険会社の負担で被害者に支払ってくれるサービスです。

被害者としては、自賠責保険と任意保険に別々に請求する必要がなく手間が省けます。

任意保険会社は、被害者に支払った後で、自賠責保険に対して、その負担部分を請求するのです。

この一括払いサービスが行われているときは、ほとんどの場合、任意保険会社が直接に病院に治療費を支払ってくれる直接払いのサービスも同時に実施されます。

したがって、治療費が120万円を超えても、任意保険会社に異議がない限りは、病院から任意保険会社に請求書が送られて、直接に病院へ支払ってもらえますので、被害者は何も手続をする必要はないのです。

「一括払い」については、次の記事もご覧下さい。

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治療費の支払いが打ち切られた場合、いったん自己負担

任意保険会社が異議を唱えて、病院への治療費の「直接払いをストップ」してしまう場合があります。

その際には、今後も治療を希望するなら、いったん自己負担で病院へ治療費を支払います。

その後、自賠責保険と任意保険会社に治療費を含めた損害を請求することになります。

このうち、限度額120万円を超えない範囲の金額は、被害者自らが「被害者請求」手続によって、自賠責保険に請求する必要があります。

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加害者側が任意保険に加入していない場合

加害者側が任意保険に加入していない場合は、自賠責保険の限度額を超える損害額は、自賠責保険から支払われません。

この場合、自賠責保険・任意保険以外から賠償金をとることを検討しなくてはなりません。

考えられるのは、下記の3通りです。

  • 運転していた加害者もしくは加害車両の所有者などの「運行供用者に損害賠償請」をする
  • 加害者が業務中であれば、加害者の使用者(雇主)に対して「使用者責任に基づく損害賠償請求」をする
  • 加害者が未成年者の場合、両親などに「監督者責任に基づく損害賠償請求」をする

泣き寝入りをしないためには、これらのうち、もっとも資力があり、法的に責任追及が容易な相手を選択しなくてはなりません。弁護士に相談して戦略をたててもらうことが必要でしょう。

損害賠償請求の対象者根拠条文
加害者が任意保険に未加入の場合運転していた加害者・加害車両の所有者など自賠責法3条
加害者が業務中の場合加害者の使用者(雇主)民法715条
加害者が未成年の場合両親など民法704条

「運行供用者」、「使用者責任」、「監督者責任」については、それぞれ次の記事をご覧下さい。

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120万円を超えないように治療するべきか?保険証を使うべきか?

限度額があるなら、治療が120万円を超えないように、健康保険を使った保険診療を受けて、治療費を安く抑えた方が良いのでは?という疑問がわきます。

加害者側が任意保険に加入していない場合

まず、加害者側が任意保険に加入していないときは、最悪の場合、限度額を超えた損害の賠償を誰からも受けられない危険がありますから、治療費だけで限度額を使い切ってしまわないように、保険証を使うこともやむを得ません。

加害者側が任意保険に加入している場合

加害者側が任意保険に加入している場合は、限度額を超えた損害も任意保険会社が負担してくれますから、保険証を使う必要はありません。

任意保険会社は、自社の支払金額を減らすために、保険診療を受けるように促してきますが、応じるか否かは被害者の自由です。

加害者側の保険会社が治療費の支払いを打ち切った場合

任意保険会社は、治療費が120万円に近づくと、自社の支払金額を減らすために「治療の打ち切り」を打診する場合があります。

これに応じないと前述した治療費の病院への直接払いを取りやめてしまいます。

この場合に治療の継続を希望する場合は、後に任意保険会社に請求できるとはいえ、いったん被害者が自分の財布から治療費を支払うことになるので、自由診療では負担が大変です。

したがって、この場合は、保険診療に切り替えて治療を続けることをお勧めします。

被害者の過失割合が高い場合

また、被害者の過失割合が高くなることが予想される事案では、保険証を使って、治療費を安く抑えておくことが賢明です。

というのは、被害者の過失割合が高ければ、任意保険会社は、賠償金の総額から、その割合に相当する金額を減額しますので、限度額を超えた治療費の相当な割合が自己負担となってしまう危険があるからです。

これに対し、自賠責保険では、前述のとおり被害者に有利な重過失減額制度なので、例えば被害者の過失割合が7割未満ならば減額されませんから、治療費を限度額内に抑えておけば、減額による自己負担を回避することができます。

「健康保険」については、次の記事もご覧下さい。

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まとめ

自賠責保険の限度額について説明しましたが、これは制度の概要に過ぎません。

実際に被害者となられた方は、交通事故に強い弁護士に相談されることをお勧め致します。



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