交通事故怪我の長期治療を理由に会社をクビ・解雇されたらどうする?

会社の解雇

交通事故の被害に遭うと、怪我の治療のために長い間入院が必要となるケースがあります。そうなると仕事も長期間休業せざるを得なくなります。当然、休業損害という形で加害者側に請求することは可能です。

万が一交通事故治療のための長期休業が理由で会社を解雇されてしまったら、その補償はしてくれるのでしょうか。ここでは、自分が加害者の場合、プライベートでの事故の場合、会社業務中の事故の場合でそれぞれ検証したいと思います。

事故は社用車か、自家用車か?

いつ交通事故が発生したのかが重要!

まず一番のポイントはその交通事故が「いつ」発生したのかという点です。さらに細かく言うと「会社の業務中」に発生したのか(営業車、社用車)、それとも後遺症認定になった従業員のプライベート中に発生したのかによって、多少違ってきます。

仮に仕事で運転中に不運にも交通事故に見舞われてしまった場合は、労働契約法と労働基準法によると以下のように規定されています。

労働契約法:第16条
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

まず、後遺障害になった労働者を会社が解雇するという事は、労働者の日常生活に大きな影響を与える事になりますから、それなりの理由がなければ認められません。

ときどきドラマなどで「お前は後遺症だからクビだ。明日から来なくていい」なんてシーンがありますが、法的に言えばそんな一方的な権力を振りかざす権限は会社にはありません。

この法律に記載されている通り、解雇申請は「客観的に合理的な理由」と「社会通念上相当」と認められなければ会社が一方的に解雇をしても、従業員が解雇無効の訴えを起こせば、後遺障害による解雇は法的に無効になってしまうのです。

自分自身が加害者で事故を起こした場合

もしも交通事故の加害者となった場合は、軽い物損事故程度であれば問題視されないでしょうが、人身事故を起こしてしまった場合は、最悪の場合刑事責任を追及されます。そうなると、会社からそれを理由に解雇を言い渡される可能性があります。

この場合、自分自身が加害者であり、自分の不注意で事故を起こしているわけですから、誰かに責任を取ってもらうわけにはいきません。そのため、争点となるのは、交通事故を理由に会社は従業員を解雇できるのかという問題です。

この点において重要となってくるのが、会社の就業規則です。

【就業規則や社内規定の記載事項】

まず、会社が従業員を解雇する場合は、普通解雇、整理解雇、懲戒解雇のいずれかの解雇であり、交通事故を理由に従業員を解雇する場合は「懲戒解雇」となります。

そして懲戒解雇によって従業員を解雇する場合には「懲戒事由」といって、どういう場合に懲戒解雇となるのかを予め就業規則や社内規定にさだめておき、従業員に周知しておかなければなりません。

この場合、加害者の会社の就業規則に交通事故を起こした場合の懲戒事由が定められていれば、これを理由に解雇することができます

このような懲戒事由は、運送会社やバス会社など運転が職務の中心となる職種の就業規則に定められているケースがあります。

ただし、懲戒事由なら何でも認められるというわけではないため、軽い物損事故程度で解雇を宣告された場合は、弁護士に相談して解雇無効を訴えることはできるでしょう。

また、飲酒運転など悪質な法令違反のもと交通事故を起こしていれば、たとえ懲戒事由に定めがなくても、普通解雇による解雇を認めた判例もあります。(大津地裁平成1年1月10日)

飲酒運転に起因する交通事故でも「懲戒解雇」

また、飲酒運転を多くの企業は厳しく注意しているため、飲酒運転が原因で物損や人身事故を起こしている場合も、「懲戒解雇」となるケースが多いでしょう。

プライベートの交通事故で被害者になった場合

職務とは関係ないところで交通事故の被害に遭った場合はどうなるのでしょうか。この場合、争点は以下の2点です。

  1. 会社は交通事故の怪我を理由にした解雇が認められるのか。
  2. 解雇されてたことによる損害を加害者に損害賠償請求できるのか。

まず解雇についてですが、これは法的には個々の状況によってかなり難しい判断となりますが、基本的には認められないケースが多いでしょう

ただし、実務上は会社側も無駄な争いは回避したいと考えるため、通常このような場合については、怪我で療養中の従業員を配置転換させたりなどして、社内にいずらい雰囲気を作り出し、自ら自主退社する方向に話を持って行くケースがあります。

本人としても、会社に対して迷惑をかけているという感覚があるため、仕方なく退職をしてしまったり、また、怪我の後遺障害が原因で従来までの仕事ができなくなってしまい退職するという場合があります。

そうなると、あとの問題はその補償です。

解雇が交通事故に起因する損害と認められれば、加害者に対して損害賠償請求が可能ですが、これを証明するためには解雇した会社側に「交通事故による怪我や長期治療を理由として解雇した」旨を記載した解雇通知を発行してもらう必要があります。

ただ、先ほども言ったように、会社側は不当解雇をめぐって争いが起る事を懸念していますので、このような解雇通知は出さない傾向にあります。

とくに自主退社をしたような場合はもちろんもらえません。

そのため、問題となるのは退職したことと交通事故の「相当因果関係」の証明です。つまり、交通事故があったから解雇された、ということを加害者に証明しなければならないのです。

これについては、自ら自主退社をしてしまうとあとの対応が非常に大変なため、万が一このような状況に陥った場合は、出来る限り早めに交通事故に強い弁護士に相談しましょう。

会社業務中の交通事故で被害者になった場合

仕事で社用車を運転中に交通事故の被害に遭った場合はどうなるのでしょうか。

まず会社との解雇の問題についてですが、労働基準法では業務上の傷病で療養中の従業員は原則、「解雇できない」と規定しています。

ですから、原則論から言うと、労働者の保護という観点から業務上交通事故の被害に遭い、その怪我の療養中であればそれを理由に従業員を解雇する事はできません。

ただし、実はこんな規定もあります。

「会社側が療養補償を行い、療養開始後3年を経過しても治らなければ、平均賃金の1200日分の打ち切り補償を支払う事で解雇する事ができる」

これを打切補償と言います。

業務上の事故ですから、従業員は保護されるべきですが、あまりにも長期間にわたって就業できない従業員を雇用し続けるのは会社側にとっても非常に大きな負担となります。

そこで、今後就労復帰の目処がたたないような場合については、打切補償を支払う事で従業員の生活を保護しつつ解雇を認めるという規定になっています。

以上が、交通事故と解雇の関連性です。ポイントとなるのは、以下の2点です。

1:交通事故による解雇がそもそも認められるのか。
これが認められなければ、そもそも会社側との不当解雇をめぐっての解雇無効の争いに発展します。
2:交通事故と解雇の因果関係を証明できるのか。
これが認められなければ、加害者側に解雇による損害を請求する事ができません。

このように、解雇をめぐる損害賠償問題は、被害者、加害者、会社の3者が絡んでくるため非常に複雑です。

そのため、万が一交通事故によって長期療養が必要となった場合は、このような事態を回避するためにも、出来る限り早めに交通事故に強い弁護士に相談しましょう。

むちうちも後遺症も示談と示談金で解決

解雇無効の争いの実務上の傾向

なお実務上は、解雇無効について労働者が弁護士を雇って申立てをすると、よほどの大企業を除き、後遺障害の件で争った会社にまた戻りたいとは労働者も思わないため、実際は会社側が労働者側に和解金を支払って裁判外の示談や労働審判で解決するケースも多くあります。

そして、もう一つ、労働基準法にはこのような記載があります。

労働基準法:第19条
使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によって休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によって打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合においては、この限りでない。

つまり、業務上交通事故に遭って怪我をしたような場合は、後遺症になった労働者の生活を守るために、業務上の負傷・疾病による療養のため休業する期間とその後の30日間は、会社は解雇してはならないと規定しています。

ですから、もしも会社の業務で車を運転していて交通事故の被害に遭ったような場合は、これに該当する可能性があります。

ですから、プライベートで運転中に従業員が怪我をした場合に比べて、後遺障害で解雇する際のハードルは高くなる可能性があるでしょう。

就業規則がポイント?普通解雇、懲戒解雇、整理解雇!

○解雇のポイントは就業規則

これは交通事故というよりも、労働問題的な話になりますが、解雇には大きく分けて、普通解雇、懲戒解雇、整理解雇の3種類があり、とくに普通解雇や懲戒解雇は会社の就業規則に解雇事由として記載して周知していなければ、むやみやたらと従業員を解雇することができません。

そのため、会社側としては、このような事態に備えて就業規則の内容をしっかり確認しておく事をおすすめします。例えば、解雇事由として以下のような内容をしっかりと記載しておく事で、後遺障害の解雇の正当性を主張することができます。

交通事故の後遺症を原因に解雇する場合に有効となりうる解雇事由の具体例

1:精神又は身体の障害により勤務に堪えられない場
2:勤務意欲又は執務能力の喪失により勤務成績が著しく不良である場合

交通事故の最終責任は加害者

最終的に責任を負うのは加害者

そうは言っても、そもそも交通事故ですから一番悪いのは加害者であって会社ではありません。

ですから、会社側が後遺症を負った被害者従業員に可能な限り配慮を尽くし、配置転換をするなどしてできる限り継続雇用できるよう手を尽くしたが、それでも社会通念上解雇認定せざるを得ない状況であれば、それは解雇として申請し認められる可能性が高いでしょう。

あまりにも一方的な対応をしなければ、会社側の立場が危うくなる事はないでしょう。営業車であっても社用車であってもです。

なお、後遺障害になった被害者側としては矛先を会社に向けるのではなく、加害者側に向けるべきでしょう。

つまり、逸失利益として認定・算定し加害者側に請求することで救済を図ることが良いでしょう。

ただ、逸失利益の算出には交通事故に強い弁護士の高度な技術と経験が必要となりますので、このような場合は必ず交通事故に強い弁護士に相談しましょう。

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