賃金センサスとは?賃金センサスの読み方と交通事故での利用方法を解説!

厚生労働省

交通事故では、賠償額の算定にあたり、「賃金センサス」の数字を利用する機会が数多くあります。

なんとなく新聞やニュースで目や耳にしたことはあるけれど、詳しくはわからない方が多いと思います。

ここでは、賃金センサスとは何か?賃金センサスはどう読むのか?交通事故の問題でどう使うのか?これらについて、わかりやすく解説をします。

賃金センサスとは?

センサス(census)とは、一斉調査などを意味する外来語です。

賃金センサスとは、厚生労働省が昭和23(1948)年以来、毎年実施している「賃金構造基本統計調査」の通称です。

労働者の賃金の実態を明らかにするための調査で、その結果は、厚生労働省のサイト等に公表されています(※)。

※参考サイト:厚生労働省「賃金構造基本統計調査

調査結果は、労働者の雇用・就業形態、企業規模、職種、性別、年齢別、学歴別、勤続年数別、経験年数別など、様々な観点から分析され、各方面の政策立案の決定等の資料として利用されます。

交通事故の問題に賃金センサスを使う理由

交通事故で傷害を負って仕事を休めば休業損害を請求できます。

後遺障害が残ってしまえば、後遺障害逸失利益を請求できます。

不運にも死亡事故であれば、遺族は死亡逸失利益を請求できます。

これらの損害は、事故がなければ得られたはずの収入を補償してもらうものですから、事故前に現実に得られていた収入を基礎にして金額を算定します。

ところが、被害者の中には、子ども、学生、主婦などのように、事故前に現実には働いていない者もいます。また、現実に事故前に働いて収入を得ていても、まだ若年のために賃金が低く、事故がなければ将来はもっと稼ぐことができた可能性が高い者もいます。

そのような場合、現実の収入がなければ損害を補償しないとか、現実の収入額が上限だと扱うならば、交通事故の被害者保護は図れません。

そこで、このような場合、賃金の統計である賃金センサスを利用して損害額を決めるのです

賃金センサスの読み方!実際に読んでみよう!

賃金センサスは統計表として発表されていますので、表形式で膨大な数字が羅列されています。また、厚労省は親切ではありませんから、その表の読み方を丁寧に教えてくれません。

そこで、賃金センサスの読み方をご説明します。と言っても、交通事故の損害賠償問題で利用するのは、統計内容の極々一部に過ぎませんし、読み方も別段むずかしいものではありません。わかってしまえば、あっけなく簡単です。

まず、実際の統計表を見てください。

ここでは、下記URLのサイトにある「平成29(2017)年・賃金基本構造統計調査」を使って説明します。

このサイト内にある「表番号1」、「年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」のうちの、「(産業計・産業別)調査年月2017年 公開(更新日)2018-02-28」という表の「EXCEL」ダウンロードをクリックして表をダウンロードしましょう。

うまくダウンロードできましたか?

では表を開いてみてください。ダウンロードした表には、

「平成29年賃金構造基本統計調査:第1表・年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」という表題があるでしょう。

その下に「表頭分類:01」、「民公区分:民営事務所」、「産業:産業計」と記載のある「企業規模計(10人以上)」という表があります。使うのはここだけです(※)。

※交通事故の賠償問題で、賃金センサスを使う場合、最もよく使うのは、第1表のこの部分(産業計)なのです。実際、弁護士基準を解説する本(赤い本、青本)にも、この表をもとにした集計表しか掲載されていません。もちろん産業別の統計を使う場合もありますが、読み方は同じですから、以下の内容を理解していただければ十分応用できます。

ちょっとこの表を上から下までスクロールして、ざっと眺めて見てください。

まず「産業計」、「企業規模計」、「男女計」、「学歴計」と、見慣れない「計」という言葉があちこちに出てくることに気づきます。

「計」とは統計用語で「ぜんぶまとめる」を意味します。「別」の反対と思えば良いです。

例えば、「男女計」は「男女別」の反対ですから、男女まとめた賃金の統計です。

「産業計」は「産業別」の反対で、全産業を意味します。「企業規模計」は「企業規模別」に分けていない統計。「学歴計」は「学歴別」の反対で学歴で区別しない統計です。

さて、この表の最初にもどって、左側に「男女計学歴計」とある行を、右方向に目で追ってください。下のような記載になっていますね。

賃金センサス表1

平成29年賃金構造基本統計調査:第1表から抜粋(説明に不要な箇所は省略)

これは全産業の全企業規模(但し10人以上)の企業で働く労働者で、男も女も区別せず、年齢も区別していない(平均が42.5歳)、全労働者の平均を意味しています。「年齢計」という表記はありませんが、42.5歳の下に各年齢階層毎の区分がされていることから、一番上の数字が年齢計であることがわかります。

このうち、「きまって支給する現金給与額33万3800円」とは、賃金規程などで決まっている支給条件、算定条件に基づいて支払われた給与で、税金と社会保険料などを控除する前の総支給額です。

そのうち、「所定内給与額30万4300円」とは、「きまって支給する現金給与額」から、時間外労働、深夜労働、休日労働などを差し引いた残りの額です。
「年間賞与その他特別給与額90万5900円」とはボーナス等ですね。

つまり、今あげた内容をまとめると、2017(平成)年の全労働者の平均年収は、次のとおりです。

(きまって支給する現金給与額33万3800円×12ヶ月)+(ボーナス等90万5900円)
=491万1500円

基本的な読み方は以上です。あとは、男女別、年齢別、学歴別など、区分された数字も載っていますから、目的に応じて使い分けるだけです。

交通事故での賃金センサス使用例

交通事故の損害賠償での賃金センサス例をいくつかご紹介します(すべて弁護士基準によります)。

休業損害の例

無職の主婦

パート等をしていない無職の主婦には現実の収入はありませんが、家事労働も経済的価値があるとされており、休業損害を算定するための基礎収入に賃金センサスを使います。

具体的には、産業計・企業規模計・学歴計・全年齢(年齢計)の女性平均賃金を用います。

先ほどの平成29年の統計では、次の数字になります。

賃金センサス主婦

(26万3600円×12)+61万5000円=377万8200円

これは男性の「主夫」でも基本的に同じです。

就職が遅れた学生

事故のために卒業が遅れるなどして就職が遅延した学生は、事故前に内定がとれていれば、その給与額が基礎収入となりますが、そうでない場合は、賃金センサスを用います。

具体的には、賃金センサスの産業計、企業規模計、男女別、年齢別、学歴別の平均賃金を使うことが多いでしょう。

例:大卒、24歳、男性

先ほどの平成29年の統計では、次の数字になります。

賃金センサス表3

(25万2700円×12)+32万7800円=336万0200円

逸失利益の例

逸失利益の基礎収入の算定については、後遺障害逸失利益も死亡逸失利益も基本的に同じです。

30歳未満の若年労働者

概ね30歳未満の若年労働者は、まだ若くて低収入であることが通常なので、現実の収入を基礎とすると賠償額が低くなりすぎます。

一時的かつ短期間な休業損害と違って、逸失利益は今後、長期にわたって失われた利益を補償するものですから、低い時点の収入を基準とするのは不当とも言えます。

そこで、賃金センサスを利用します。

具体的には、年齢別ではなく、全年齢(年齢計)の平均賃金を用います。他の要素である男女別、学歴別、産業別、企業規模別で区別した数字を使うかどうかは、事案によります。

学生、生徒、幼児

現実の収入がないので、賃金センサスを使います。

具体的には、男女別に、産業計・企業規模計・学歴計・全年齢(年齢計)の平均賃金額を使います。

ただし、女子年少者については、男女別ではなく、男女計の産業計・企業規模計・学歴計・全年齢(年齢計)の平均賃金額を使うことが一般的です。

これは女子の平均賃金を使うと低い金額となりすぎること、将来的は男女間の賃金格差は解消される方向にあると見込まれることを理由とします。

どの年度の賃金センサスを使えば良いの?

賃金センサスは毎年更新されています。どの年度の統計を採用するかは、事案によって違います。

休業損害の場合

交通事故日の属する年度の統計を使用します。

理屈から言えば、具体的な休業日の属する年度の統計によるべきで、休業日が年度をまたぐときは、各年度の統計を用いることが、より合理的で、別段、それが認められないわけではありません。

ただ、実務では計算の簡明さから、通常、事故日の属する年度の統計が利用されているだけです(※)。

したがって、例えば事故日が平成29年末日、休業が平成30年1月からならば、休業日は年度をまたいでいないので、事故日の属する平成29年の統計ではなく、休業した平成30年の統計を用いることになります。

※「別冊判例タイムズ38 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5判」東京地裁民事交通訴訟研究会編14頁、「交通賠償のチェックポイント」(弁護士高中正彦他編著・弘文堂)96頁

逸失利益の場合

後遺障害逸失利益では、症状が固定した時点の属する年度の統計を使用します。

死亡逸失利益では、亡くなった時点の属する年度の統計を使用します。

まとめ

賃金センサスは、細かい数字が並んでいて、頭が痛くなりそうですが、説明されれば「なーんだ!それだけのことか!」とわかっていただけると思います。

ただし、平均賃金が判明したからといって、それを使ってどのように計算するのか、弁護士基準での賠償額を保険会社に承諾させることができるのか等は、別次元の問題です。

賃金センサスの読み方、使い方を頭にいれたうえで、具体的な交通事故賠償の問題は、弁護士に相談されることがベストでしょう。

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