交通事故の裁判例・判例を検索するメリットと調べ方

交通事故裁判判決事例
  • 交通事故の判例・裁判例を調べる方法を知りたい!

自動車事故などの示談交渉で、保険会社から、「あなたのケースでは、判例によるとこの賠償額ですよ」などと「判例」を引き合いに出されることがよくあります。

ですが、その言葉を信用して良いとは限りません。それが正しいかどうかは自分で確認するべきです。

この記事では、判例・裁判例とは何か、判例・裁判例の調べ方や判例を知ることのメリットについて解説します。

判例と裁判例の違い

「判例」という言葉は、広くは「裁判の先例」という意味でも用いられます。

これに対して、裁判の先例のうち、最高裁判所のものだけを「判例」と呼び、下級審のものを「裁判例」と呼んで厳密に区別することがあります。

しかも、この場合は、最高裁の判決文の全てではなく、「法的な問題点(論点)に関する判断」部分だけを「判例」と称します

下級審の裁判官は、最高裁の判例に従った判決を行います。これを「判例の事実上の拘束力」と呼びます(※)。

※「判例とその読み方(三訂版)」元大阪高裁長官、元早稲田大学客員教授中野次雄編著(有斐閣)11頁以降を参照

「判例」と「裁判例」と区別するのは、この事実上の拘束力の有無が違うためです。

交通事故の判例・裁判例の調べ方

では、早速、交通事故の判例・裁判例の調べ方をご紹介します。

インターネットの記事やブログで調べる

現在では、ネット上にたくさんの交通事故の判例に関する記事やブログが掲載されています。一般の方は、まずこちらで検索してみることをお勧めします。

ただし、玉石混淆ですので、直ちに盲信するのはやめましょう。信頼性のある記事は、判例を紹介する際に、裁判所名と判決年月日を記載してくれています。これを手がかりに、文献やデーターベースで確認することがお勧めです。

判例検索システムでデーターベースを調べる

今日では、ネット上で利用できる判例データーベースも充実しています。

裁判所の判例検索システム

裁判所が運営している検索システムです。誰でも無料で利用でき、信頼性と速報性は抜群です。ただし、全ての判例を網羅しているわけではなく、裁判所の視点から重要性を認めた裁判例が厳選されています。

関連外部サイト

民間企業の判例検索システム

民間企業が運営する有料検索システムもあり、裁判例情報よりも多くの裁判例が収集されています。

各社ごとに特色があり、特に交通事故関係の裁判例を充実させたオプションが用意されているものもあります。ただし、利用料金は最低でも月額1万円程度となります。

後述のように、図書館での利用がお勧めです。
(裁判例の検索システムが利用できる図書館リスト→こちら

紙の文献で調べる

交通事故の裁判例を扱う書籍は膨大ですが、一般の方も手に入れやすいものからご紹介します。

通称「赤い本」

正式名「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準」日弁連交通事故相談センター東京支部

損害賠償の弁護士基準(裁判所基準)と共に、多くの裁判例の要旨や事故態様ごとの過失割合が掲載されています。東京地裁交通部の意見が反映されており、実務のスタンダードで、弁護士向けです。

弁護士が判例を調べるときも、損害賠償の内容については、まず赤い本で似た裁判例がないかどうかを確認することが多いと思われます。その後、データーベースやより詳細な判例集で判決文や解説を確認します。毎年発行されています。

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通称「青本」

正式名「交通事故損害額算定基準」日弁連交通事故相談センター本部

赤い本と同様に、損害賠償の基準と裁判例を掲載していますが、こちらは弁護士に限定せず、より広い層による全国的な利用を目的とし、基準額に幅を持たせていることに特色があります。隔年発行です。

通称「緑本」

正式名「別冊判例タイムズ38号 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂5版)」東京地裁民事交通訴訟研究会 判例タイムズ社

東京地裁の裁判官の手により、事故類型ごとに過失割合を示したもので、実務における影響力は赤い本以上です。

弁護士向けのハンドブックの性格が強い赤い本は、基準の読み方についての解説がほとんど掲載されていないのに対し、緑本は基準に用いられている用語やベースとなっている法令、考え方などの解説が充実しています。

過失割合については、一般の方でも、緑本を利用される方が理解が容易です。弁護士でも、過失割合については、赤い本よりも、まずこちらに目を通す方が多いように思います。

通称「緑のしおり」

正式名「大阪地裁における交通損害賠償の算定基準(第3版)」大阪地裁民事交通訴訟研究会編 判例タイムズ社

大阪地裁の裁判官によるもので、大阪地裁での基準が公表されています。

「自保ジャーナル」株式会社自動車保険ジャーナル

月2回発行の雑誌で、最新の交通事故訴訟判決などが掲載されています。2010年以降の号では、判決文の全文掲載も行われています。丹念に裁判例を拾ってくれているので、実務では非常に参考になります。

「交通事故民事裁判例集」不法行為法研究会編著 株式会社ぎょうせい

実務・理論上意義のある裁判例を厳選して紹介する交通事故専門の判例集です。隔月刊です。

交通事故判例百選(第4版、第5版)有斐閣

学生向けの本ですが、交通事故に関する基本的かつ重要な裁判例の要旨と解説を掲載しています。

判例タイムズ

交通事故に限らず、各種の裁判例を紹介、解説しています。月2回発行です。

判例時報

判例タイムズと同様に、各種の裁判例などを紹介、解説しています。月3回発行です。

図書館の利用

上記の各種書籍に目を通すには、図書館の利用がお勧めです。現在では、多くの図書館でオンライン蔵書目録が提供されていますので、書籍の検索は簡単です。

商用有料データーベースを利用できるサービスを提供している図書館もあります。

国立国会図書館で利用できる判例検索システム

所在地: 〒100-8924 東京都千代田区永田町1丁目10−1
電話: 03-3581-2331

  • TKCローライブラリー
  • D1-LAW.com

しかも、TKCローライブラリーには、上記「交通事故民事裁判例集」のWEB版とLEX/DBインターネット交通事故判例検索(明治8年以降に公表された全判例を網羅して全文フルテキスト化。交通事故は、平成30年3月30日時点で約22万件収録)も含まれています。

東京都立中央図書館で利用できる判例検索システム

所在地: 〒106-0047 東京都港区南麻布5丁目7−13
電話: 03-3442-8451

  • 判例秘書
  • D1-LAW.com

大阪府立中央図書館で利用できる判例検索システム

所在地: 〒577-0011 大阪府東大阪市 荒本北1丁目2−1
電話: 06-6745-0170

  • D1-LAW.com
  • ウエストロージャパン

各自治体の中央図書館のサイトには、利用できる判例検索システムが掲載されていますから、是非、利用して下さい。

交通事故の被害者が判例を知るメリット

交通事故の被害者が判例を知るメリットは、「裁判例」と「判例」で異なってきます。

「判例」を知るメリットとは?

「判例」の場合、その法的問題点の結論は出ています。保険会社が違う主張をしても、間違いであると明確に指摘できます。

保険会社が意見を変えなければ、「訴訟をしますか?裁判所では通用しませんよ」と言い切ることが可能です。

「裁判例」を知るメリットとは?

「裁判例」の場合、参考例にすぎませんが、「裁判例」を知ることには、次のメリットがあります。

保険会社などに反論できる

保険会社が、「この場合は、○○が判例です」と一方的に加害者に有利な「裁判例」を持ち出したときに、「裁判例に過ぎない、違う先例もある」と反論することができます。

過失割合や損害賠償額の相場、裁判の傾向を知ることができる

過失割合、後遺障害等級など、裁判所の評価の傾向、相場を知りたいときの資料となります。

特に損害賠償の金額は、裁判例を知ることで、増額が期待できます。示談交渉で保険会社が提案するのは、会社独自の低い基準額です。

しかし、過去の裁判例の金額は弁護士基準(裁判所基準)として実務に用いられ、保険会社の基準よりも高額だからです。

まとめ

交通事故被害の損害賠償をめぐる問題は最終的には裁判所で決着がつきます。したがって、どのような先例があるかを知っていれば、保険会社との交渉にひるむことはありませんし、今後の方針も的確に立てることができます。是非、判例を調べて下さい。

もしも、ご自分で調べることに限界があるとお感じなら、専門家である弁護士の法律相談を受けてみましょう。膨大な判例の中から、あなたに有利な判例を探し出してくれます。

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  1. 保険会社が提示した示談金・慰謝料に不満だ
  2. 事故の加害者・保険会社との示談交渉が進まない
  3. 適正な後遺障害等級認定を受けたい

弁護士に相談することで、これらの問題の解決が望めます。
保険会社任せの示談で後悔しないためにも、1人で悩まず、今すぐ弁護士に相談しましょう。

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弁護士相談Cafe編集部
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