自賠責保険の慰謝料の計算方法|日額は4300円?いつもらえるの?
交通事故被害に巻き込まれた際に、もしも相手が「自賠責保険だけ加入したドライバー」であれば、自賠責保険の慰謝料の計算方…[続きを読む]
交通事故に遭うと、相手の任意保険以外にもさまざまな「保険金」を払ってもらえる可能性があります。
しかし、実際に事故に遭ってしまった方々には次のような疑問や懸念をお持ちの方も多いようです。
加えて、請求漏れが起こらないように、各種の保険金について正確な知識を持っておく必要もあります。
今回は、交通事故で受け取れる可能性のある保険金の種類、金額がいくらぐらいか、それぞれいつ払ってらえるのか支払い時期などを解説していきます。
交通事故の被害者が払ってもらえる保険金は、主として以下の3種類です。
自賠責保険は、法律によってすべてのドライバーに加入が義務づけられている保険です。事故の相手が自賠責に未加入でない限り、必ず自賠責保険の補償を受けることができます。
ただし、自賠責保険の補償対象は人身事故のみで、物損事故は対象となりません。支払われる保険金も少額です。
加害者の任意保険から支払われる保険金は、交通事故被害者が受け取れるメインの補償です。
人身損害については「対人賠償責任保険」、物的損害については「対物賠償責任保険」から支払われます。
加害者が任意保険に加入していれば、これらの補償を受けることができます。
被害者自身が加入している自動車保険からも保険金を受け取れる可能性があります。人身事故なら「人身傷害補償保険」「搭乗者傷害保険」がメインの保険です。
物損事故や自損事故でも「車両保険」に加入していれば自分の加入している保険会社に物損についての保険金を請求できます。
交通事故被害者にとって、各種の保険金がそれぞれいくらになるのか、相場がどのくらいかが気になるのは当然です。
保険金の相場についても保険金の種類ごとに説明します。
自賠責保険から支払われる保険金の金額は、低めです。自賠責保険自身が「被害者への最低限度の補償を目的とする保険」だからです。
自賠責保険には、国土交通省の定める自賠責保険・共済の支払い基準が適用され、自賠責保険会社の裁量によって変更することはできず、支払われる額は一律です。
自賠責保険について慰謝料などの詳しい相場については、以下の関連記事をお読みください。
加害者の任意保険会社からは、その保険会社が定める基準に従って保険金が計算されます。
この基準は、自賠責保険の基準よりも多少高めとなるケースが多くなっています。
たとえば入通院慰謝料については、通院より入院の方が高めの金額が設定されています。
限度額は加害者が契約時に設定しているので、ケースバイケースです。しかし、多くの場合「2億円」や「無制限」と設定されているので、自賠責保険のように補償額が限度額を超えてしまい支払いを受けられない、ということはあまりありません。
ただし、任意保険会社相手でも、「弁護士基準」を適用できれば賠償額が跳ね上がります。
弁護士基準とは、裁判所でも採用されている基準で、弁護士が示談交渉をする際や裁判を起こした場合に適用されます。弁護士基準をあてはめると、任意保険基準の2倍以上になるケースも珍しくありません。
被害者が正当な補償を受けたいなら、弁護士に示談交渉を依頼することをお勧めします。
被害者の任意保険から支払われる保険金の相場は、保険の種類によって大きく異なります。
搭乗者傷害保険では、例えば入院や通院をした場合、「入院1日いくら、通院1日いくら」などの定額の計算方法の保険契約が多いので、重傷で治療日数が長くなれば賠償金は高額になります。
人身傷害補償保険の場合には実際に発生した損害が基準となるので、後遺障害が残ったケースでは搭乗者傷害保険より高額になりやすいといえます。
また、被害者が加入する保険にも「限度額」があり、契約時に定めた限度額以内でしか支払いを受けられません。
詳しくは、ご自分の加入している保険の約款をご覧になるか、直接保険会社にご確認ください。
では、入通院慰謝料を例に、以下の事例で加害者の保険会社が支払う自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の相場がどれくらい違うのか比較してみることにしましょう。
怪我:骨折
入院期間:1ヶ月
通院期間:6ヶ月(週2回計48回通院)
自賠責基準 | 670,800円(※) |
---|---|
任意保険基準 | 895,000円 |
弁護士基準 | 1,490,000円 |
※ 2020年4月1日以降に発生した事故の場合の金額。2020年3月31日以前に発生した事故の場合は、655,200円。
ご覧の通り、任意保険基準と弁護士基準とでは1.3倍以上の差があります。
適正な基準で補償を受けることがいかに重要かおわかりいただけるでしょう。
なお、ご自分の慰謝額が簡単にわかる以下の「交通事故慰謝料の自動計算機」も、是非お試しください。
では、各種の保険金を請求するには、どのような手続きをとれば良いのでしょうか?
自賠責保険の場合、加害者が任意保険に加入しているかどうかで請求方法が変わってきます。
加害者が対人賠償責任保険に入っている場合、通常、加害者の任意保険が「一括対応」します。
一括対応とは、任意保険会社が窓口となり、自賠責保険の保険金もまとめて支払うことです。したがって、被害者が自分で自賠責保険に請求する必要はありません。
被害者が自賠責保険に直接保険金を請求するケースについてです。
相手が任意保険に入っていない場合、任意保険会社の一括対応を打ち切って自分で「被害者請求」する場合等は、直接請求する必要があります。
その際には、以下のような書類をそろえて自賠責保険へと送付します。
書類を送付後、自賠責保険で調査が行われ、最終的に決定された保険金が被害者の指定した口座宛に振り込まれます。
加害者の任意保険会社に保険金を請求するには、「示談交渉」によって保険金額を確定しなければなりません。
相手の担当者と「賠償金の金額や計算方法」について話し合いを進め、お互いが合意したら「示談書」を作成し、その内容に従って保険金を支払ってもらいます。
合意できない場合には、被害者側から別途「ADR」や「訴訟」によって、適切な損害賠償金の支払いを求める必要があります。
これらの手続きで賠償金が決まったら、保険会社は決まった内容に従って被害者に保険金を支払います。
被害者の任意保険に保険金を請求する手続きについてです。
まず、被害者が自分で自分の加入している保険会社へと保険金の請求書を提出します。
被害者が請求をした後、保険会社側で書類の精査などが行われ、各保険会社の支払い基準に従って被害者の指定した銀行口座へと保険金が入金されます。
なお、その際、事故証明書や診断書、診療報酬明細書等の書類が必要になるケースがあります。必要書類は請求する保険金の種類によっても異なるので、請求時に保険会社に確認しましょう。
交通事故被害者にとって、保険金が降りるまでの期間は重大な関心事です。いつもらえるのか保険金の種類ごとにみていきましょう。
自賠責保険金は、請求方法により支払時期が全く異なるので、分けて説明します。
相手の任意保険会社が「一括対応」する場合には、相手の保険会社と示談できたときにすべての他の損害金とまとめて支払われるので、支払いの時期は非常に遅くなります。
交通事故の紛争が最終的に解決するまで支払ってもらえません。
被害者が自分で自賠責保険へ被害者請求する場合、被害者が送った請求書類をもとに金額を確定するための調査や審査が行われるので時間がかかります。
請求が完了した日から1ヶ月程度で支払われることになっていますが、事案によっては数ヶ月かかるケースもあります。
人身事故の被害者は、自賠責保険に対して「仮渡金」というお金を請求できます。仮渡金とは、交通事故について示談が成立する前の早期の段階で、被害者救済のために仮に自賠責から払われるお金です。
仮渡金は、事故後すぐにでも自賠責保険に請求できます。通常は、請求後1週間程度で払ってもらえます。
次に加害者側の保険からの保険金はいつ支払われるのか解説します。
加害者側の保険から支払いが行われるのは「示談が成立したとき」や「訴訟等で決着がついたとき」です。
示談の場合、示談書(合意書)に支払い期限を明記するのが通常です。
つまり、遅くとも「その期日までに支払われる」ことになります。
加害者の対物賠償保険についても同様です。
この支払期限は、保険会社側の事務手続の時間を考慮して、余裕を見込んで1ヶ月程度先の時期に設定されることが普通です。
しかし、これはあくまでも最終期限なので、実際の支払いは、「示談の成立後1週間から2週間程度」で振り込まれる例が多いようです。
訴訟でも、裁判所での和解で示談が成立したときは上と同じです。
訴訟の判決で決着がついた場合、判決それ自体には、賠償金額の支払期限は記載されていません。
しかし、判決では、損害賠償金に対し事故日から実際の支払日までの間の利息金(遅延損害金)も加算して支払えと記載されますから、保険会社としてはなるべく早く支払いをしないと、日々、支払額が増えてしまいます。
そこで、通常、判決確定日(判決言い渡しの翌日から14日)から、1~2週間程度で支払われる例が多いようです。
訴訟の場合、多くは被害者に代理人弁護士がついていますので、判決確定後、被害者側弁護士と保険会社側弁護士または保険会社との間で、振り込み先口座、など詳細について確認のやりとりを行い、その際に振り込み予定時期も確認することができます。
被害者側の保険が支払われる時期は、保険の種類によって大きく異なります。
代表的な保険である「人身傷害補償保険」と「搭乗者傷害保険」でも、支払時期が違います。
搭乗者傷害保険の場合には「治療が一段落した頃」、比較的早期の段階で払ってもらえます。
「入院1日〇〇円」などの定額計算となる保険契約が多いので、簡単に計算できるからです。
一方、人身傷害補償保険は、実際に発生した損害を基準に算定するため、被害者が治療を終えないと(後遺障害が残った場合は、後遺障害等級が出るまで)損害額が確定できず、どうしても支払いのタイミングが遅れます。
相手の保険会社からの保険金を受けとった後で、ようやく自分の人身傷害補償保険を受けとれるケースもあります。
保険の種類によって、請求方法や相場が大きく異なることがおわかりいただけたと思います。
特に、弁護士基準で慰謝料を請求することが、適正な補償を受けるうえで、欠かせないこともご理解いただけたと思います。
弁護士の助けを借りて、適正な補償を受けることが大切です。